-事業内容を教えてください。
当社は、印刷・包装材料、コーティング材料、電子材料、化粧品・医療材料で使用されるアクリル樹脂を主体としたオーダーメイドの合成樹脂の設計・開発、製造、販売までを行っており、汎用製品から個別顧客向け製品まで幅広い生産と販売を手掛けております。
体制としては、千葉県の本社工場の製造部門で4班2交代の24時間操業で効率の高い生産体制を維持し、東京事業所で営業と研究開発業務を行っています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
当社は危険物取扱事業所であることから、消防法で規定されている基準に則った防災対策や訓練は行っておりました。ただ消防法の「予防規程」には、被害の拡大防止策は定められているものの、事業継続策については何も書かれておりません。
一方で、近年中小企業にもリスクを低減するような対応が強く求められるようになっていると感じておりました。そのため数年前よりBCP策定の準備は進めていましたが、社内での取りまとめに時間がかかっておりました。しかし3月の東日本大震災により早期の策定と定着が必要であることを痛感したため今回取り組むことに致しました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
今回は千葉県東方沖地震を想定し、自社ブランド品及び受託品事業のBCP策定を行いました。本事業はお客様個別のニーズに対応したオーダーメイドの製品を定期的に受注しており、もし当社の事業が中断してしまったら他社での代替は難しく、災害時においてもその供給責任は大きいと考えます。よって今回は当該事業の原料調達、製造、品質検査、物流、販売、資金(支払い・回収)までを対象としました。
経営資源については検査工程で使用する多くの試験機器がボトルネックと考えられるため、万が一破損した場合は東京の研究所にて検査工程を行うことにしました。また、製造設備の主たるものは6基の反応釜ですが、耐震強度測定の実施を計画、配管などの修理を外注するエンジニアリング会社の同時被災に備え、第2候補を確保することにしました。
対象事業 | アクリル合成樹脂の製造と販売 |
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対象リスク | 千葉県東方沖地震 |
被災シナリオ | ・配合タンクの配管やスチレンタンクが破損 ・事務所のサーバが破損、基幹業務システムが使用不能 ・15㎥釜のプロセスコンピュータと計装パネルが破損 ・運送業者は、来場不可 |
対策 | ・製造棟試験室・管理室転倒防止策、事務所転倒防止策 ・グループウエア導入による従業員緊急連絡網の構築 ・FAX不通時の東京営業所による受注 ・資金・資産の事前確保 ・在庫量の調整 ・検査機器が破損した場合は、製品サンプルを東京の研究所にて検査を実施 |
-何か新たな気付きはありましたか?
当社の工場は反応釜で化学反応を制御しながら、製品化を行います。また、取り扱う原料は危険物であるため、厳重な操業、防災の規定があります。しかし2004年の工場開始時からの操業規定、防災規程が、今回策定したBCPと整合性がとれなくなってしまったため、双方の観点から修正しました。2011年12月に実施した全社防災訓練、BCP説明会には修正したものを活用し、安全確保から避難、運転状況確認、被害確認の実地訓練を行いました。その中でも多くの課題が見つかったので、さらに修正を行っています。
また、BCP策定の経験によって日々の業務内でもリスクを考慮した提案が生まれ始めており、事業継続や減災の効果はもちろん、こうした社員一人一人のリスクに対する思考が生まれたことは、経営体質の改善になり大きな成果だと思います。
-BCPを策定した感想をお願いします。
社内で作成していたBCPでは、東日本大震災発生時、実際に行動することができなかったのですが、今回のBCP は演習も行えたことで、リーダーから担当に至るまで現実に動けるものになったと思います。
また当社は大成化工グループの一員であり、親会社との連動・連携や各子会社との連携の仕組みが必要であるため、今後はグループ全体としてBCPに取り組んでいきたいと思っており、その上でもマネジメント・システムとしてBCPからBCMとして定着させたいと考えています。