-事業内容を教えてください。
弊社は、東新興業株式会社のプラスチック事業部として、昭和36年に開設、昭和39年姉妹会社として独立いたしました。合成樹脂成形加工業者として設立以来、弱電、重電機器部品、自動車部品、OA機器部品、通信機器部品等、広範囲なお客様よりご愛顧をいただき、一貫して製品の品質向上、常に技術の向上研さんに努めており、当社の薄肉成形技術、極細穴成形技術は、誇れる技術の一つです。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
東日本大震災以前は金型をベルトで固定する程度でしたが、以降は東北の状況をかんがみて従業員の自宅から会社までの距離を勘案し、4~5人が2~3日滞在できる程度の備蓄(水、食料、テント、寝袋、発電機)を用意しました。
また、コンピュータ、電話、最低限の照明が使える程度の発電施設があれば良いと考え、発電機・小型コンプレッサー(可動式)の購入まで対策を進めていましたが、BCPについては正直、あまり知りませんでした。そんな折、昨年度本事業に参加された企業のお話を聞く機会があり、東日本大震災時、策定期間中でありながら安否確認はもちろん従業員が自発的に行動できたといったお話を伺い、参加することに決めました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
今回は地震災害にあった場合のBCPを策定しました。弊社は合成樹脂成形加工の会社ですので、本事業を対象に、完成品・仕掛品の一部破損、出勤率の低下によって納期が遅れてしまうという被災シナリオを設定しました。本事業における迅速な供給再開には、社員と成形機を含む機械・装置、金型及び原材料が必要です。
まずこれらについて、被災状況を確認しますが、自社内で対応可能か、代替拠点(関係取引先)での対応が必要かを素早く判断するために、確認箇所の優先順位を明確にしました。その結果、代替拠点で対応するとなった場合には、金型や原材料の移動準備、そのために必要な情報の収集など早急に実施すべき事項を決定しました。
また自社で対応可能な場合には、製造部門をいち早く立ち上げ、タイムラインにもとづいた担当者(代替要員含む)の役割分担を決定しました。そしてそれを明確にするために、従業員と機械設備の関係を示した「力量認定一覧」に通勤距離を加えた資料を作成しましたので、今後は日頃の技術習得にも活用していきたいと思います。
対象事業 | 合成樹脂成形加工 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・出勤率の低下 ・機械設備の一部破損 ・本社工場の使用不可 |
対策 | ・機械設備の周辺整理と一部固定 ・支給部品在庫・購入品在庫・仕掛品の落下防止(保管方法の検討) ・機械設備の破損は復旧時間を見込み代替先活用 ・外注先被災時は都外の代替外注先を活用 |
-何か新たな気付きはありましたか?
言葉で表現できるような知識、「知っている」「わかっている」ということを文書に整理することは非常に大変でしたが、事業に必要な設備、要員等を整理したことにより、特定の人に依存し、今まで把握されていなかった知られざる部分を把握し、どのような改善を講じるのかということまでを考える機会となったことは収穫でした。ある意味そのいい加減だった部分をしっかりと文書化できたことは良かったですし、あるべき姿が見えてきたと感じています。
-BCPを策定した感想をお願いします。
先日、お客様からBCPの有無を確認されたのですが、当事業(東京都BCP策定支援事業)に参加し、現在策定中であることを伝えると、安心された様子でした。早期に策定することの優位性を活かし、営業戦略に活用できると感じました。
しかし、現時点ではまだ半分は絵に描いた餅と理解しております。今回、BCPを策定することができましたが、それを実際に使えるものにするために、東新プラスチックのBCPとしてどのように運用できるかが重要と感じております。策定メンバーは工場内の危険個所などに気付くことが多々あると思いますが、それを全社に根付かせるためにも演習や教育に取り組んでいきます。