-事業内容を教えてください。
弊社は、精密工業用ゴムのメーカーであり、ゴム成形品、異素材組合せ部品等の製造を行っております。長年の経験・ノウハウを基礎に、熟練の技術による使用用途に合わせた材料の選定、材料の配合、金型の製作、試作品の製作、量産まで一貫した社内生産体制が強みであり、お客様のニーズに合わせた特性を持つ製品をご提供しております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
弊社はこれまでにISO9001、JIS Q9100、ISO14001の認証を取得し、PDCAサイクルに乗せてマネジメントを行っておりましたが、BCP については認識していたものの、具体的に取り組むには至ってはおりませんでした。
そのような折、東日本大震災が発生し、幸い弊社では特に被害は出ませんでしたが、お客様より、業務の継続について心配する問合せを数多く受け取りました。また災害発生時の安否確認や顧客対応といった初動対応の重要性を改めて感じたことから、できるだけ早くBCPを策定することが必要と考えました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
地震に対するBCPを策定しました。
今回は試作品と量産品のうち量産品の製造を対象業務としました。弊社の事業特性もありますが、生産設備(※検査機器含む)だけでも80種類以上あります。またその中には、非常に高価で希少な設備など代替の効かない経営資源が多いため、できる限り被害を顕在化させないという予防・低減策に重点をおいております。
事業継続策は、平時から付き合いのある外注業者を活用します。さらに協力会社にも支援を要請する場合を考慮し、先方の被災情報の収集及び弊社の被災情報の提供など、迅速な情報共有が行えるよう既存のステークホルダー情報を再度整理し、全社で共有するようにしました。
これは弊社の業界だけに限ったことではありませんが、東日本大震災の後、原材料の供給がストップするという事態が起きました。幸いなことに弊社は今まで積み上げてきた取引先との関係や数名の担当者の経験から得たノウハウによって、供給をストップさせることなく対応することができましたが、今回整理した情報を活用することで対応できる人間が増え、より確実な事業継続につながると考えております。
また技術的な問題や取引上の問題で、弊社にしかできない工程が残るのも事実ですが、そこは同等の機械設備を有する協力会社に従業員を送り込み、機械設備をお借りすることで対応していきたいと思います。
対象事業 | 量産品の社内製造 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・サーバの破損 ・機械設備停止/検査機器破損 ・完成品・仕掛品の一部破損 ・社員の被災による出勤率低下 |
対策 | ・バックアップデータ保管先追加 ・機械設備の一部固定 ・油圧ポンプ配管の破損防止策実施 ・金型の保管方法の変更 ・防災用品の整備 ・メンテナンス業者への緊急連絡網構築 ・協力会社での業務継続 ・教育・訓練の定期的実施 |
-何か新たな気付きはありましたか?
実質2カ月でBCPを策定したことになりますが、非常に早かったと思います。社長としてはトップダウンで号令、後は総務部長をはじめプロジェクトに参加した全員が積極的に発言し、具体的な行動目標に落とし込んでくれました。とは言え、皆で話し合った結果をBCPとして文書にどうまとめ上げるか、という落とし込みはコンサルティングがなければ難しかったと思います。
コンサルタントにはノウハウがあるので遠回りしなくて済みました。今回のBCP策定支援事業に手を挙げて良かったです。
-BCPを策定した感想をお願いします。
何かあった時でも準備ができているので安心感があります。もちろん「実際に冷静に対応できるか」という課題はありますが、一般的なハウツーではなく自社オリジナルの備えができたので、何もない状態より落ち着いて対応できるだろうと思います。後は、みんなが自然にやってくれると信頼しています。ISOでもきちんと運用されていると審査員に言ってもらっているので、私が気を緩めず内部でチェックを続けたいと思います。