-事業内容を教えてください。
当社が事業展開しているプロフェッショナルサービス事業では、クラウドを活用したアプリケーション提供サービス(SaaS)を中心に、ビジネスソリューションの提案、コンサルティング、設計、開発・導入サービス、運用などのサービス、及びソフトウェアの販売を行っております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
今回の東日本大震災では、震源から距離のあった首都圏地区においてすら電話の輻輳(ふくそう)により安否確認やお客様との連絡が数時間困難になり、また交通機関の停止により帰宅困難者対応が発生するなど、自社内でも多くの課題があることを認識しました。
また当社の事業はクラウドを活用したサービス提供ですが、ここ数年、事業継続の観点からもクラウドサービスに対する関心が高まっています。そこでまずは自分達が積極的にBCPに取り組むことによって、その経験を活かし当社のお客様へもBCPの重要性を伝えることが使命の一つであると考えBCPを策定することに致しました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
今回対象としたプロフェッショナルサービス事業では、事業継続の最重要課題は社員や外部委託業者の技術者の確保と、ネットワーク環境の確保であると認識しており、その観点から地震に対するBCPを策定しました。
彼らの多くは、現場に常駐もしくは外出していることが多いので、社外で被災した際の行動指針と安否確認の徹底が大変重要になります。特に“自分がけがをしない” ことで事業継続のスピードが格段に変わるため、発災したら社員は安否報告、システム・顧客の状況等の確認を迅速に行い、リーダーに情報を集約し状況に応じて優先順位を決定していきます。
各プロジェクトはそれぞれ内容が異なるために、担当者以外の社員対応が容易ではないものもあります。ついては事前にリーダーや社員、プロジェクトに参加している外部委託業者との案件進捗情報の共有、災害時対応の取決め、バックアップ体制の確認、既存システムのマニュアル作成などを実施し、有事に迅速に対応できるように致しました。
対象事業 | プロフェッショナルサービス事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・社員外出者含め12名が負傷 ・オフィスは天井落下 ・キャビネット転倒 ・機器ではデスクトップPC50% 及びノートPC20%が破損 |
対策 | ・安否確認の徹底 ・在宅勤務の体制構築 ・既存パートナーとの協力体制の構築 ・自部門リソースの活用 ・外部業者への委託による継続 |
-苦労されたポイントはありましたか?
事業の性質上、また企業規模からほとんどのマネージャーがプレイングマネージャーのため、お客様の都合優先で、一堂に会するスケジュール確保が難しく、全員の意識合わせやBCPプロジェクトの進め方に課題がありました。結果的にはチームごとにサービス内容が異なることから、本プロジェクトに参加できたチームのBCPが策定できたという結果となりました。今後は社内ミーティングにてBCPの検討を行って参りたいと思います。また、今回の策定を通じて、当社の事業がいかに個人の専門性やスキルに依存しているかを再認識すると同時に、チーム内や外部委託業者との案件進捗状況の共有の必要性を改めて実感しました。
また、基本的なことだとは思いますが、非常時における社員の安否確認、連絡体制、手段など、実際に機能するか検証したことがなく、心もとない状況であることに危機感を覚えており、今後定期的な訓練を実施していくことと致しました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
率直な感想として、これからが始まりだと思っています。社員は日々の仕事に追われ、非常時にどうすることが必要かというところにまで、まだまだ意識が及んでいない状況であり、東日本大震災のことも時間の経過とともに、徐々に記憶から薄れていくかもしれません。
そのような中で、いかにして今回策定した行動計画を社員一人一人の普段の意識の中に定着させ、現実に災害などが発生した場合にも、適切な行動が取れるようにするかということが重要だと感じています。