-事業内容を教えてください。
当社は、コンピュータソフトウェアの開発事業(持ち帰り請負作業)を展開しており、主要業務領域は金融端末アプリケーション、金融端末通信ミドルウェアです。また、その他ウィンドウズアプリケーション開発、ウェブシステム開発、通信ミドル開発、データベース構築など、様々なサービスを提供しており、主要顧客とは20年来のお付き合いです。そういったお客様のご信頼にお応えしたいと強く思っています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
東日本大震災時は、当社の事業に対する被害はそれほどありませんでしたが、社会的混乱を目の当たりにしたことと、社員の安全確保、帰宅に関する問題が発生したことにより意識が高まりました。また、震災後、同時期に取締役2名の身内に不幸があり、経営者が数日間にわたって不在という事態となったため、対応に苦慮したこともあり、想定外の事態に対する備えが必要であると強く認識しました。
一昨年、経営上の課題対応で中小企業振興公社の指導を受けた際に、東京都BCP策定支援事業の存在を知ったのがそもそもの始まりであり、ISMS資格再審査を控え事業継続計画をさらに充実させたいと考えました。今回のBCP策定にあたっては、まず中小企業としての自社の存在意義を再確認したいと考えています。またBCPの必要性を社会にアピールすることによって、営業力が強化されると思っています。そして小さい企業でも身の丈にあった対策を講ずることにより、事業が継続できる事を示し、若い人達が起業に対して、自信をもてるようにしたいと考えています。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
今回の対象事業はソフトウェア受託開発事業なのですが、事業継続策の最大のポイントは、ノウハウを有する社員の安全確保と、技術関連情報資産及び納品・開発途中の成果物の保全、開発テスト環境の保全にあります。その中でも社員は最も重要で、かつ簡単には代わりがききません。ついてはまず社員・家族の安全確保のために、社員が通勤可能となる交通機関復旧後に、本格的な復旧活動を開始しようと考えました(納期が迫っている場合は別の対応を行う必要はあります)。
そして機器に関しては、開発テスト用サーバは代替サーバへの切替を容易にするための対策を、重要なデータに関しては、バックアップの分散保管を検討しました。最後にさらに深刻な状況として、万が一本社機能を喪失した場合は、社長宅のPCに開発テスト環境を構築する、さらに万が一のケースにはお客様の事業所、機器を借用し、業務を継続できるように協議を行わせていただくことも考えました。
対象事業 | ソフトウェア受託開発事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・近隣の火災による本社機能喪失 ・社長出張中で3日後に帰社 ・開発/試験用PC破損、ファイルサーバ破損 ・情報資産一部消失 |
対策 | ・サーバ機器機種の統一と代替機器の準備 ・開発テスト環境のバックアップ、納品物、開発成果物の分散保管 ・代替サーバによるサーバ環境復旧 ・開発テスト環境のバックアップからの復旧 ・社員宅PCによる開発テスト業務継続 |
-苦労されたポイントはありましたか?
今回のBCPでは当初オフィス自体は利用可能とのシナリオにて事業継続策を検討しました。しかし検討を進めるうちに、“オフィスの喪失は想定外” とは言えないと考え、役員の自宅あるいは主要なお客様のオフィスをお借りして業務を再開する対策を追加しました。
今回のいろいろな検討の中で、被災シナリオからもたらされる被災想定と、身の丈に合った対策(投資)のバランスの難しさ及びその重要性を痛感しました。その上で第1版、第2版と順次充実させていく必要性も理解できたと考えています。また、ISMSの中にある事業継続策と今回策定したBCPとの整合性を取るために若干の苦労をしましたが、結果として“What” から“How to” に展開しきれたと思っています。
-BCPを策定した感想をお願いします。
おかげさまでBCPの第1版を何とか策定できました。BCP検討の過程で、何と言っても社員が最大の“経営資源” であり、災害時の身の安全を計ることがすべてであるとの認識を新たにしました。また今回のプロジェクトはご支援をいただきながら少数で策定したものであり、今後事業継続について社内コンセンサスを得ながら会社としてのBCPに育てていきたいと思っております。社員全員が本BCPを理解することから始めて、実施できる方向にもっていくつもりです。