-事業内容を教えてください。
当社は「地図調製」、つまり地図づくりを事業の柱として、官公庁や民間企業に対し、アナログからデジタルに至るまで、様々な空間情報を提供している地図専門会社です。具体的には、公図や関連する各種主題図の調査からデータ作成、GISに関するシステム開発やソフト販売を行っています。地図表現や、白地図に情報(主題)を彩色するノウハウなどの技術を代々受け継ぎ、育んできた自負があります。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
従来からハザードマップの作成を受託するなど、仕事柄、防災や事業継続に対する関心を早くから抱く環境にありましたので、防災要領を用意し、音声通信不通の場合にはモバイルでの社内情報発信を行うこととするなど、BCP的な意識による取組は既にある程度行っている、と思っておりました。
他方で東日本大震災後、他の組合員と共に、被災した同業者の話などを聞き、お客様にはやはり迷惑をかけるわけにいかず、成果物を形にして納めなければならない、そのためにも皆で団結したい、という思いを強くするに至りました。BCP策定が年間事業計画に組み込まれたこともあり、組合の趣旨に賛同するかたちでBCPを策定することとなりました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
BCP策定の対象事業として、データ保全の必要性などを重視し、主力の一つであるGIS(地理情報システム)構築事業を対象としました。
事業継続対応の大きな流れとしては、早期に状況確認を実施し、お客様との協議に基づき作業再開に備えるというものです。このような対応を実現可能とするために必要となる資源として、高度で専門的なノウハウを有する社員、ITシステム及び各種データが挙げられます。またお客様からの預かり情報なども考慮に入れて対策を検討していきました。
どんな場合でもまずは社員の人命の安全が重要であるので、室内耐震補強策の実施や外出時被災者の緊急対応方針を決めました。またその一方で、行政からの緊急支援要請があった場合には、災害直後の測量現場に赴くわけではありませんが、組合との連絡体制の下、災害発生直後の査定による測量成果の地図化(地図調製、大判紙印刷)を担うことを決めました。
対象事業 | GIS構築事業、緊急時支援業務 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・内勤の50%(空間情報)がけがなどの理由により出勤不能 ・プロッター及びサーバも全損 ・作業用デスクトップPCの大半が破損 |
対策 | ・スキルの共有化 ・パートナー会社との支援体制の確立 ・遠隔拠点でのデータバックアップの保管 ・非常時用代替機(ノートPC)の用意 ・遠隔拠点よりバックアップデータを取り寄せ、復旧 ・代替機(ノートPC)の環境整備後、作業再開 |
-何か新たな気付きはありましたか?
思えば、これまで自社の事業全体を危機管理的な観点からきちんと見直したことがありませんでした。今回のBCP策定では、事業を継続していく上での課題を系統だって洗い出し、対応を検討していく作業を通じて、苦労というより新たな良い発見が多く、創造的な取組となりました。コンサルタントがうまく支援して下さって、効果的に導入させて下さった、とも感じております。
-BCPを策定した感想をお願いします。
BCP策定を通じて社内で共通認識をもつことにより、一定の安心感が生まれたように感じます。最近多発している地震などにも、BCPという後ろ盾があることで、心の準備をして対峙することができると思います。また、当社では防災業務に関わりのある地図づくりをいろいろやらせていただいておりますが、そのような事業を担う上での仕事に対する意識が変わってきました。