-事業内容を教えてください。
当社はソフトウェア・パッケージ(2次元/3次元CAD、図面文書管理)の開発、販売、保守サービスを提供しています。ソフトウェア・パッケージのうち、機械用CADが85%、土木用CADが8%、図面文書管理が7%です。特に2次元機械用CADでは30年近い歴史と10万本に及ぶ累計出荷実績を有し、ユーザー満足度ナンバーワンCADとの評価をいただいています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
過去の防災対策は十分と言えるものではありませんでした。緊急連絡網は作ってはいましたが、不完全な部分がありメンテナンスもされていない状況でした。
そんな中、東日本大震災に遭遇し、従業員の安全確保や安否確認などの難しさを痛感しました。企業防災は具体的にどうあるべきか、社員の安全と企業の存続を両立させるにはどうすれば良いのか、その方法を手探り状態で模索していた時、本プログラムのことを知り応募させていただきました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
CADパッケージ・ソフトウェアの開発、販売、サポート事業のうち、開発は半年ごとにメジャーバージョンアップと中間バージョンアップをリリースするというように数か月単位で動く事業です。一方、販売、サポート事業は日々刻々動きがあり災害時にも日単位での対応が必要であるため、今回は後者に絞って事業継続を検討しました。
本事業を継続する上で、一番重要となるのが人員とデータです。人員については、各人が他所業務、他部門業務ができるよう多能化、情報共有を進めることにしました。またデータに関してはサーバの耐震、免震は実施済みですが、最悪の状態に備えて外部サーバの活用、代替サーバによる復旧体制の整備を行うことにしました。
販売業務については、本社の営業システムが動かない想定で、営業販売機能は地方拠点(特に大阪)が手作業で受注処理を行うことで代替し、製品出荷も(基本的には小田原が拠点ですが、問題があれば)大阪または他の拠点から対応します。サポート業務についてはサポートDBを使わず、大阪、東京が個別に対応し、ユーザー認証も簡易化して、緊急対応でサービスを実施し、業務を継続します。
対象事業 | CADソフトの販売とサポート |
---|---|
対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・外出2名、負傷者9名(サポート2名含む) ・東京本社事務所内天井崩落 ・社内サーバは70%がダウン、その他も停電のため使用不能 ・外部サーバ(全体の30%)は使用可能 |
対策 | ・外部サーバ/代替サーバの活用 ・業務の多能工化 ・地方拠点の活用 ・社内システムのマスターCD作成 ・東京以外の地方拠点(特に大阪)での受注活動継続 ・受注DB復旧まで緊急出荷 |
-苦労されたポイントはありましたか?
東日本大震災を経験し、従業員一人一人の防災と企業存続に対する意識が高まっていた折でもあったため、活発な意見交換や提案がなされ、スムーズな策定ができました。
プライバシー・マークなどで計画策定などには慣れていたので、書類作りの面では特に苦労は感じませんでした。BCP策定開始当初は、工場などの施設や設備を抱える製造業ではない業態の当社にはマッチしないのではと思われましたが、コンサルタントによるプロジェクトの進め方の巧みさもあり、うまく適用できました。社内に防災に強い人材がいたこともあり、防災と事業継続が組み合わさって実践的なBCPができたと自負しています。
-BCPを策定した感想をお願いします。
当初は、「開発」、「販売」、「サポート」すべてにわたるBCPを策定したかったのですが、セッション5回という時間的制約と、「販売・サポート」と「開発」の時間軸の違いから除外せざるを得なかったのは残念でした。
しかし結果には満足しています。防災用品も同時に整備し、より現実的でかつ社員とその家族までをも考えた連絡手段の構築など、実用的なBCPができたと思います。今後は自社で「開発」のBCPも策定を目指します。