－事業内容を教えてください。

一般自動車輸送事業として、主に新聞輸送を行っています。具体的には、新聞社の印刷所構内での梱包、積込等荷さばきから、新聞販売店への配送を常用契約として行っています。産業廃棄物回収、リサイクル事業も上記輸送の付随事業として実施（新聞梱包材、ビニール等）しているほか、引越サービス事業も行っています。

－今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。

防災対策については、特段、考えていなかったのが実態です。しかし東日本大震災で、社員の両親が被災し、1ヵ月連絡できなかったことから、社員、家族の安否確認の仕組みの必要性を痛感しました。また、燃料の供給不足によりガソリンスタンドでの給油が困難になりました。これらの経験から、緊急事態にいち早く対応できる体制・仕組み作りの重要性を認識し、今回東京都トラック協会からの声かけもあり、当事業に参加しました。

－策定されたBCPの内容を教えてください。

弊社の最大の荷主は新聞社です。新聞社は、不測の事態においても新聞の発行を通じて情報発信を続けるという強い意志を持たれており、輸送面で支えて欲しいと要望されています。最重要顧客のこのような期待と信頼に応えていくために、新聞輸送事業にフォーカスし、BCPを策定しました。

具体的な業務としては新聞印刷所から各販売店へ新聞を配送するのですが、ドライバーと車、通信手段さえ確保できれば、なんとか対応が可能です。通常、従業員や運行中の車両は、緊急事態の際には、営業所に連絡をとって、次の指示を仰ぐのが基本です。しかし災害時には、営業所が使えない、あるいは連絡がつかないということも予想されるため、今回、荷主である新聞社と話し合いを持ち、緊急時には、新聞印刷所へ集結することとし、これを会社の行動ルールとすることで、適正に自己判断して行動できるようにしました。
もう1点、配送には燃料が重要な経営資源ですが、その確保について新聞社も協力的でしたので、一緒に対策を検討していきます。

－何か新たな気付きはありましたか？

被災想定したものに対する対策の妥当性・整合性の評価が難しいと感じました。また、今回対象ではない事業を行っている営業所と対象となっている事業を担当している営業所のメンバー間の意識に温度差があり、意思統一や取組方が難しい点がありました。

緊急時の混乱した状況においては、連絡が難しいことから、適正な自己判断により行動できることが重要ですが、自分勝手にではなく、会社として統一的な行動ルールが必要であることに気付きました。

また、事前対策にはお金がかかるものもありますが、一方、会社としてのルール作りや緊急連絡網の整備など、お金をかける前に、やれることがあることもわかりました。

－BCPを策定した感想をお願いします。

今回は策定中に荷主である新聞社の意向を確認する機会を持ちました。東日本大震災の対応で苦労された新聞社も、まだ気持ちが熱いままでしたのでタイミングが良かったと思います。新聞社との話し合いの中で、弊社に何ができて、何ができないかを提示できたことで、給油タンクを設置するとか、新聞社社内に対策室を設置させていただくとか、一部の対策については一緒に考えることができましたし、新聞社にとっても新しい気付きがあったそうで、弊社の取組は、新聞社から高い評価をもらえました。

BCPがなくても災害対応はできると思いますが、時間がかかると思います。誰がいつ何をやるかを明確化できたことによって、対応が素早くできるようになったと思います。今後は、訓練によって対応が強化されると思いますので、活動を継続していかなければならないと思っています。