-事業内容を教えてください。
静岡以東の関東、東北地方に16カ所の事業所を配置して、一般貨物自動車運送事業、倉庫業、港湾運送事業、通関業、産業廃棄物収集運搬業などの事業を展開しています。特に、タンクローリーによる石油製品の製油所や油槽所からサービスステーションや工場などへの油送の売上が大きいです。
港湾荷役部門は現在行っている事業の中でも古くから行っている事業で、内航船で輸送される鋼材を陸揚げし、倉庫で保管、配送をしています。また、輸出入貨物の通関業務の代行も行っています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
東日本大震災においては、弊社の仙台と小名浜、潮見(船橋)の3営業所が被災しました。特に仙台営業所は、1階は津波で水没し、社員は2階や屋上に避難しました。幸いなことに人災には至りませんでしたが、倉庫は全滅、タンクローリー5台が被災し、社員の通勤用自動車はすべて流されました。
各組織の責任者が各自の判断で災害対応しましたが、会社として組織的な対応が素早くできず、災害時の準備ができていないことを痛感しました。社長の号令で、被災社員を含む全社員に、その時何を感じたか、何をしようとしたか、何をすべきであったかを調査しました。個別の対応については、小冊子にして全員に配布し、全社的な体制と仕組みづくりを検討しているところです。当事業には東京都トラック協会からの紹介があり、良い機会だと思い、参加しました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
今回は、運送事業のうちの売上の大きな油送にフォーカスしてBCPを検討しました。油送においては、タンクローリーと運転手と配送情報が重要経営資源です。営業所は製油所や油槽所の近隣に配置してあり、また、運転手も多くが営業所近隣に居住していること、日常の業務は営業所単位でまわっていること、車載無線が装備されていること、多くの営業所でインタンクに燃料が確保されていることなどから、人が営業所へ参集すれば、当面の業務は継続できます。
また、交通渋滞や交通規制への対応については、車載無線がありますので、営業所と連絡をとり指示を受けて行動するのを基本とし、連絡がとれない場合は緊急時の行動ルールを明確にし、適正に自主判断できるようにすることとしました。さらに、被災していない拠点との連携により、顧客との連絡手段の確保や車両及び人員の支援体制の確立という方法を採用することで、事業継続を図ることとしました。
対象事業 | 運輸(油送) |
---|---|
対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | 震度6強の地震発生により ・営業所タンクローリー1割使用不可 ・営業所乗務員2割出社不可 ・インターネットサーバへのアクセス不可5日 |
対策 | ・緊急連絡網の整備 ・電源の確保 ・拠点、車両間の無線機による通信手段確保 ・インタンクによる燃料確保 ・被災していない拠点との連携 ・車載無線を利用した車両の状況確認と運行指示 |
-何か新たな気付きはありましたか?
事業継続への対策を検討するにあたっては、被災シナリオの想定次第であるところがありますので、バランスが難しいと思いました。
また、策定期間が夏であれば良かったのですが、弊社の繁忙期に重なりましたので、課題をこなす時間をやりくりするのに苦労したときがありました。営業所の所長が参加できなかったのも残念です。
車載無線は、同業他社では携帯電話に替えている場合が多く、廃止しようと思っていましたが、緊急時においては、通信連絡の強力な手段であることがわかりました。危機管理という別の視点からは、評価が変わることに気付かされました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
インターネット接続などにおいて外部サービスへの依存性が高いことなど、メンバー間で問題点の認識を共有できたのは良かったと思います。また、災害時の対応について、わかっている気はしていましたが、BCPを検討するときの議論を通して明確にできたことや、見直す機会になったことも良かったと思います。