-事業内容を教えてください。
わが社は物流の総合アドバイザーとしてお客様のニーズに合わせた物流加工・事務代行から在庫発送、ダイレクトマーケティング支援、キャンペーン支援、入力代行、イベントサポートなどのアウトソーシングサービスをご提供しております。倉庫業からスタートし、顧客満足度の向上のため、お客様のご要望にお応えする中で、多岐にわたるサービスを展開してきました。近年、機密文書を取り扱う業務が増えたことにより、Pマーク、ISO(品質・環境)等の認証も取得しております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
数年前にお客様から「大きな災害が発生した際の対策はどうなっていますか?」と聞かれたことがきっかけで、大災害が発生した場合に、いかにしてお客様からお預かりした大切な商品を守り、アウトソーシングサービスを継続させるか、この対策を構築することが急務であると考え、BCP策定委員会を発足させ、中小企業庁のひな形を基に2010年8月にBCP第1版を策定しました。
東日本大震災では、幸い自社に大きな被害はなかったものの、BCP第1版は見直しが必要だと感じました。緊急対応については十分でしたが、具体的な復旧手順等に関しては再度検討したいと考え、今回のBCP策定支援事業に参加しました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
わが社の物流加工事業の中でも主要顧客の利用が多く、売上が大きい在庫発送業務をBCP第2版の対象としました。本業務はお客様から依頼のあった各種帳票類・機密文書等の重要書類を指定の発送先に期間内に発送準備を整え、物流業者に渡すまでの業務で、これが止まると着荷が期日に間に合わなくなり、お客様の信用問題となってしまいます。
本業務を継続するためには主に人員と電力が重要です。倉庫内は窓が少ないため、電力が途絶えると、復旧のための倉庫内の片付けすらままなりません。さらに棚の上段から荷物を下ろすためのリフト、またPCを使用するラベル印刷などもできなくなってしまいます。これと同時に倉庫内の片付け、発送準備作業を行う人員が通常より多く必要となります。このことから、停電時の照明などの対策の検討、有事の際の人員確保のために平時から人材派遣会社に優先的に協力していただける関係の構築、物流業者への災害時の対応確認を実施する予定です。
対象事業 | 物流加工事業(在庫発送業務) |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ライフラインは寸断、公共交通機関停止 ・社長を含めけが人が多数 |
対策 | ・業務の根幹となる施設には定期点検と保守実施 ・ラック内の荷物の置き方の検討 ・社内教育、演習の実施 ・緊急時の重要顧客への状況報告 ・通信が不通の際は関西事業部で対応できる体制を構築 ・衛星電話の活用 |
-何か新たな気付きはありましたか?
自社で策定したBCP第1版では、災害発生時の避難、BCPの運用体制、部門ごとの役割、守るべき重要業務と事業継続に関わる必要資源、部門ごとでやらなければならないことなどを盛り込んでおりました。しかし東日本大震災を経験してみると、お客様の荷物をご依頼どおりに確実に発送するためには何をして、状況を誰に報告しなければならないのかなど、具体的な検討が行われていないことが発覚しました。
今回策定した第2版では、それを実現するための対策として、社内体制の早期復旧、協力会社との連携、顧客との調整などについて、明文化できたので、非常に良かったと思います。またBCP策定後に“演習”を実施することで、必要な内容が含まれているか、部門間の認識、復旧作業手順が現実的なものかを検証できることを実感しました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
企業の社会的責任を果たすためには、平時からBCPを検討することは当然のことだと思います。今回は地震対策として第2版を策定することができましたが、この取組はパンデミックや津波・水害など他のリスクに対しても活用できるという手ごたえを感じました。
BCPを策定することは経営としても大変重要な課題であり、企業の社会的責任を果たすため、今後ともこのBCPを継続して見直し、改善していくことが重要であると考えます。そして自社のみではなく、協力会社、若洲地区の企業にも広めていきたいと強く感じました。