-事業内容を教えてください。
当社は1932年(昭和7年)より東京・本郷の地で医療用ガラス器具、理化学機器等の販売業を営んでおり、今年(2012年)で創立80周年を迎えます。現在は臨床検査用の試薬及び衛生器材の加工・販売のほか、環境分析機器、微生物検査器材、ステンレス容器、保冷・保温輸送容器なども取り扱っております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
当社で取り扱っております一部の商品は現在の市場では代替商品が存在しないため、この商品の供給が途切れると、一部の実験や検査ができなくなります。また、この商品は一般的にはお取引先様に多くの在庫をお持ちいただいておりません。それゆえ、需要の細かな動きに対して安定した供給対応を続けなければならない責任を当社は担っています。また社員への給与を支払い続けるためにも、この事業を継続しなければならないと思い、このたびの応募に至りました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
今回のリスクは地震を想定し、BCPを策定する対象事業は、代替が利かないこの商品の加工・販売事業を選びました。本製品の加工作業はすべて手作業で行っており、また在庫を多く持てないため毎日計画的に大量な作業をしなければならず、各社員の作業能力に大きく依存する部分があります。
そして作業場は外気・埃等を遮断した環境が必須で、作業時は白衣・白帽・マスク着用が必要で、室温が低めでなければなりません。ついては災害時に事業を継続するためには、人員と作業スペースの確保が重要となります。具体的な対策としては、社員の増員、さらなる作業習熟度の向上と複数作業に対応する教育を行います。さらに、作業時の必需品や有事に代替とする作業場の検討と臨時設営用のクリーンルーム一式の備蓄、また、シーラーなど予備機の活用と手作業での伝票作業などを検討致しました。
なお、夏の場合は、電力と空調設備が復旧または確保できるまでは作業を行わないことと致しました。それは、暑い閉鎖された空間での作業を社員にはさせられない、という私の判断からです。
対象事業 | 試薬及び衛生器材の加工・販売事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・建物は乱雑化、シーラー機3台破損 ・冷凍冷蔵庫は停電で使用不可 ・メインサーバ(本郷)とPC4台故障 |
対策 | ・クロストレーニングによる代替要員の育成、増員 ・バックアップデータを2カ所で保管(経理データ) ・営業用車両の避難時取扱いルール ・代替スペースにて作業継続 ・商品及び原料の安全な場所への移動 ・予備用シーラー稼働 ・手作業による伝票作成 |
-何か新たな気付きはありましたか?
ステップが進むにつれて、徐々に具体的な対応を考えられるようになりました。メンバーに主体性が出てきて、事前に社内で打ち合わせを行うなど、「自分たちでBCPを策定している」という実感が湧いてきました。
災害時、営業担当が商品を積んだ社用車をどのように扱えばいいのかなど、判断に迷うような場合についても検討し、いかなるときも自分の身の安全を第一に行動して欲しいという思いを、BCPを通じて明確に示すことができたことは良かったと思います。また、この検討の過程で走行時の緊急時対応などについても知ることができました。一方で、安否確認ができない社員に対して、いつどのタイミングで警察に届けるのか、というような具体的な検討も行う中で、今後、さらに様々な対応の深掘りが必要であると感じました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
このたびのBCP策定にてリスクを明確に把握できましたので、お客様と災害時対策の具体的な確認を行うことができました。また、特定の社員に依存する業務がありましたため、予防策として社員の増員と多能工化としての教育を実施いたします。
このように自分たちでは気付かないことや対応のさらなる検討、策定した後の能動的価値などの多くの示唆をいただきました。策定作業の中では、資料やツールがやや多く混乱しましたが、最後はスムースに策定できたのではないかと思います。今回教えていただいた手順に則ってほかの事業でもBCPを策定し社員全員に周知徹底させていきたいと思います。