-事業内容を教えてください。
私たちは、90年前に竹の皮を精肉店へ、経木を鮮魚店へ納める事業で創業しました。その後取扱商品とお客様が拡大し、総合包装資材卸業へと変化してまいりました。食品包装容器・資材・機器や店舗設備機器の提供のほか、販売プロデュースや物流改善提案を行っており、関東、関西、東北、北海道に営業拠点と物流センターを持ち、事業展開をしております。スーパーマーケットやコンビニエンスストア向けを中心とした直販部門と問屋向けを中心とした卸売部門があります。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
東日本大震災において石巻営業所が被災し、災害に対する危機感が増したことが一番大きな理由です。石巻営業所では、地元住民であるパートの皆さんが「すぐに避難するように」と大声を出してくれたおかげで、幸いにも従業員は全員無事でした。倉庫は、柱と壁は残りましたが室内に浮遊物がなだれ込み、商品は全滅しました。
また、関東においても一部の社員、パートとの連絡がとれず、帰宅困難者が多く出たという苦い経験をしました。このようなことから災害時にも、社員の安全を守り、食料供給に不可欠な食品容器を供給するため、BCPに取り組むことにしました。ISO、コンプライアンス、BCP等を実施することが企業価値につながるとも思っています。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
災害時において、刻々と変化する状況下で迅速に意思決定を行うために、最新情報に基づいて対策を実施し、情報の共有を行い、その結果によって次の対策を検討し判断する、いわば「有事のPDCAを回す」ことをコンセプトとしました。
そのために供給網を構成する営業・物流、顧客、取引先、運送会社間で、各種情報を収集・共有する仕組みを、災害対策本部が担います。量販店様については本部以外にも店舗ごとの被災状況や供給ニーズを迅速かつ正確に把握するため、確認すべき情報を明確にした「営業緊急対応シート」を準備することにしました。要員不足に対しては柔軟な再配置ができるよう、最寄りの拠点への応援、自宅からの顧客対応などの活動方針を決めました。
また、被災地への食料供給には食品容器が欠かせませんから、その緊急性を警察署に申請し、委託先の配送会社が緊急車両通行証を速やかに入手できるよう、事前に合意することとしました。
対象事業 | 包装資材販売事業(関東事業部、直販・量販店) |
---|---|
対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・本社社員85% 出社不可 ・PC・プリンター落下破損50% ・商品破損30% |
対策 | ・棚、ガラス、PC、プリンター等に対する耐震対策の実施 ・データセンターの活用 ・安否確認・緊急連絡システムの構築 ・物流会社との緊急時対応協定の締結 ・有事における情報の集中・共有体制の確立 ・重要得意先との災害時における連携体制の確立 ・物流拠点に近い社員による作業応援体制の確立 ・緊急車両通行証の迅速な取得 |
備考 | ・関東が被災した場合は、関西、東北の拠点での代替受注・出荷がすでに可能 |
-何か新たな気付きはありましたか?
短期間の割には討議、決定する中身が濃かったので、とにかくスケジュールを良くこなせたというのが正直な感想です。プロジェクトの中で各部署の代表が自由に自分の意見を発言し、皆で討議し、合意形成してきたことで実践的なBCPを策定することができたと思います。今回、“長と称する人は非常時にも冷静に判断できること” が重要ということを一番強く感じました。そのためにも“正確な情報をつかむこと” が重要だと思います。当社の今までのプロジェクトは部門単位であり、今回のような部門横断のプロジェクトは初めての経験でしたので、部門を超えて“この人はこういう発想や考えを持っている” ということがお互いにわかり、社内の連携力が強化されたのではないかと思います。
-BCPを策定した感想をお願いします。
短時間でしたが、大地震が発生した時に、何のために、誰が何をすべきか、そして平時において何をしておくべきか、ということを明確にすることができました。今後は、今回参画のメンバー14人全員が今の気持ちを忘れずにリーダーとして周りへの語り部になり、また演習を積み重ねることにより社員全員に浸透させていくことが重要と思っています。関東事業部でまず固めてから全社に展開し、お客様から必要とされる会社として成長につなげていきたいと考えています。