-事業内容を教えてください。
弊社は、主に建物管理、管理人派遣や管理組合支援、苦情受付などを行う分譲マンション管理事業を中心に、ビルメンテナンス事業、官庁施設運営事業、その他不動産仲介事業、建物検査事業及び損害保険代理店事業を行っております。マンション業界は物件の供給が減少傾向にあるため、業界内の競争は年々激化している状況です。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
漠然と防災対策の必要性は感じておりましたが、会社の取組として特に何かを行ってはおりませんでした。東日本大震災直後、社内連絡システムや防災備蓄等の必要性を痛感し、何か策はないかと考えていた矢先に東京都のBCP策定支援事業のことを知り、社を挙げて策定することに決めました。実は以前、あるフォーマットを使用して策定を試みたことがあるのですが、その時はただ文字を入れただけのもので実効性のあるものはできませんでした。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
管理会社の経営資源の核はマンパワーです。弊社の社員はマンションの居住者様やビルのテナント様など、不特定多数の方々と接することが多いため、事業を脅かす要素としては設備・インフラに顕著に影響がでる地震よりもむしろ、いったん感染すると回復まで長い期間を要するために人的被害が大きい「新型インフルエンザ」の爆発的な感染被害の方が深刻だということになりました。そこで新型インフルエンザの流行によってマンパワーが減少していく中でもサービス提供が継続できるよう、快適で安心して任せられる管理会社を目指しBCPを策定することに致しました。
対象事業は分譲マンション管理事業に致しました。本事業は管理受託数が約160棟6,000世帯あり、社員は一人で十数件のマンションを担当しております。また業務の性質上、お客様との関係構築や調整など属人的な側面も決して少なくないため、弊社の事業の中でも新型インフルエンザが流行した場合の影響が最も大きいと判断し、本事業に絞って検討を進めていきました。
対象事業 | 分譲マンション管理業務 |
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対象リスク | 新型インフルエンザ |
被災シナリオ | ・最大40%の欠勤率(自社及び外部サービス会社も同様) ・2012年11月初め香港で発生 11月末日本国内で発生し、12月感染拡大 |
対策 | ・新型インフルエンザ対応教育(インフルエンザ情報、 会社及び家庭での予防対策備蓄など)の実施 ・各感染レベルでの会社行動指針に従い、業務の継続、縮小、延期、中止、 一部新規を定義したサービスレベルと業務実施体制(人員計画)に従って、 在宅勤務を含む緊急勤務体制を実施 ・担当者、担当物件ごとの情報共有化(要員の代替可能化) ・個人は新型インフルエンザに対する個人行動指針に従い行動する |
-苦労されたポイントはありましたか?
感染拡大に伴ってどの業務(サービス)をどのレベルまで縮小する、あるいは一旦停止するなどのサービスレベルの絞り込みが必要となるため、この作業にかなり苦労しました。どの業務も重要であることに変わりはないという思いから、今までは業務の優先順位など検討したことがありませんでした。また、日々の業務に追われて会社全体でこういった検討の場を持つことがなかなかできなかったことも作業が難しいと感じる要因の一つになっていたのかもしれません。そこでコンサルタントのサポートを受けながら、まずは通常行っている業務をすべて洗い出し、優先順位を一つ一つ検討する作業から始めました。その次に要員が減って状況が厳しくなっていく中で、どの業務をどのレベルまで行うかを決定していきました。
最終的にはお客様にできるだけご迷惑をおかけしないようにするためには最低限どの業務が必要なのかという観点で検討し、最後まで継続させる業務を管理組合支援業務と苦情受付業務とに決めました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
BCP策定前と策定後では雲泥の差で有事に対する手ごたえを感じています。パンデミックに関する基礎知識としてインフルエンザについて知ること、策定したBCPを全社で共有すること、その演習方法を身に付けることで揺るぎない事業継続ができるのではないか、という確信に近いものを得ることができました。この気持ちを社内で共有し、一丸となって取り組んでいければと思います。またこれに満足することなく、BCPの見直し・演習を繰り返すことにより、状況に即したBCPを確立できればと考えております。