-事業内容を教えてください。
測量業務、土地調査といった補償コンサルタント業務を中心に不動産に関する調査、開発など幅広い分野のサービスを総勢14名の専門知識を持った技術者により提供し、自治体、官公庁の他に民間不動産会社にお付き合いいただいております。直接、個人のお客様にサービスを提供するわけではありませんが、弊社が携わった公共施設やマンションなどを利用していただくことで地域の皆様のお役に立てていると考えています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
東日本大震災を経験してみて、何か災害が起きてもいざとなると、何をどうすればいいかわからないことに改めて気が付きました。従業員の安否確認の手順など災害時にやるべきことをマニュアルとして明確にしたいと思いました。また、弊社の場合、行政が主要なお客様であると同時に、地域に何か協力できないかなという思いもあり、以前より川崎市に防災協力事業所として登録するといった活動も行っておりました。
そこで、今回は従業員の安否確認などのマニュアルの整備と、より一歩踏み出した地域への協力、支援を進めるための足掛かりとして、BCPを策定することにしました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
主要業務の「測量」についてBCPを策定しました。測量機器は頑丈な箱に収納されており破損の心配は少ないため、「技術者」と測量データを処理する「PC」の確保が重要なポイントになりました。
まず、技術者の確保は若手の技術者を育成し、出社率の低下が予想される班長の業務を代行させる方針としました。会社から徒歩圏内に多くの従業員が住んでいるので、若手技術者を教育していくことで事業継続の力をつけると同時に、人材の育成にもつながると考えています。もう一つ、PCの確保については発電機を利用して動作確認を行うことで、電気という重要インフラの供給状態に制約を受けることなく、素早く業務を再開させる手順を整えることができました。
その他に地域支援に関する方針もBCP文書の中に記載しました。これから町会をはじめとする地域の組織と連携しながら支援内容をさらに充実させて、地域の皆様に貢献できる頼られる企業へと成長していきたいと考えています。
対象事業 | 測量事業 |
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対象リスク | 川崎市直下地震 |
被災シナリオ | ・公共交通機関の停止、幹線道路の車両通行規制による班長クラスを中心にした従業員の出社率低下 ・本社設置サーバの破損 ・測量に使用する車両2台の破損 |
対策 | ・キャビネットなど什器の固定により避難経路を確保する ・PC、サーバなどIT機器の固定により破損を防止する ・サーバデータのバックアップを外付けHDDで行う ・発電機の燃料は満タンに近い状態で保管する ・班員を育成することで、班長業務の代行を可能にする ・発電機を使用して被災後2日目を目途にIT機器の動作確認を開始する ・サーバデータのバックアップを利用して必要最低限のデータをPCに取り込む |
-苦労されたポイントはありましたか?
繁忙期の最中に策定したため通常業務と並行してBCPの打ち合わせがすぐにやってくるという慌ただしい状態だったのですが、参加メンバーが頑張ってくれました。理想を言えば、打ち合わせに参加していない従業員にステップごとにBCPで検討している内容を話したかったのですが、時間をとれなかったので、これは4月以降の課題と考えています。
また、安否確認を行う上で従業員の連絡網を整えることは必須になりますが、個人情報保護の観点からどのように連絡先となる携帯電話番号などの個人情報を社内で共有できるようにしたらいいのかということは判断に悩みました。弊社はプライバシーマークを取得しておりますので、プライバシーマークのルールも守りつつ、BCPとして有効な仕組みにするバランスを考慮し、各従業員と直属の上長を基本的な連絡経路といたしました。それ以外ではBCPは生活に密着している分イメージがわきやすく、わかりやすかったと感じています。
-BCPを策定した感想をお願いします。
災害発生時にやるべきことの基準がイメージできるようになったため、何もわからない状態よりは安心感があります。おそらく東日本大震災がなければBCPを策定しようと考えなかったと思うのですが、今ではBCPを作って従業員の命を守る方針を明確にすることが社長の責任の中に含まれていると感じています。また、短期間でのBCP策定は慌ただしいところもありましたが、動きやすい中小企業だからこそ対応できたのだと思います。