-事業内容を教えてください。
昭和25年の設立以来、測量業として約60年の実績があり、今では測量事業と地理情報サービス事業を行っております。測量事業は、長期にわたり携わった港北ニュータウンや、竜ヶ崎ニュータウンでの業務経験を生かし、地上測量全般(骨格測量、路線測量、現況測量、用地測量、区画整理等)を、東京、千葉、茨城、埼玉地域で行っており、また地理情報サービス事業は、GISエンジンを導入し、業務支援システムの企画・提案・開発や情報処理サービスを提供しています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
東日本大震災において、7、8階オフィスでは棚などが動いたとか、現場に出ていた社員との緊急連絡網がうまく機能しなかったなどの問題が生じ、社員の安全確保や安否確認の仕組みの確立の重要性を痛感しました。また、本社が渋谷にあり、大災害時に交通まひの影響が大きいため、さいたま支店を分散拠点として活用することもイメージするなど、何らかの手を打たねばと思いつつ、具体的な準備はできていませんでした。
ちょうどそのような時に東京測量調査設計事業協同組合から東京都BCP策定支援事業への参加の呼びかけがありました。実はBCPそのものはわかっていませんでしたが、自分たちがやろうとしていたことと同じと理解しましたので直ちに参加を決めました。参加にあたっては、災害発生時の行動計画を作成する中で、災害に遭った時の心構えをしっかり持つようにしたいとも考えました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
大災害発生時にも「社員の安全を第一に確保する」「お客様にご迷惑をおかけしない」との思いのもと策定を進めました。測量事業の継続には、人、機材、データ、車両が必要不可欠であり、まずはそれらをどうやって守るかについて検討し対策を決めました。
具体的な事業復旧については、重要顧客や組合への緊急連絡により、お互いの被災状況を共有し、今後の業務対応方針を協議します。その際、技術者などが不足する場合は協力会社や組合に応援を依頼、本社での作業が難しい場合はさいたま支店を活用するという代替策を取ることにします。さらに停電中にも測量用発電機を用いて携帯電話やIT機器などの充電と夜間照明を賄う予定です。
以上の取組により、災害時にもいち早く測量業務を復旧し、受注済業務を再開するとともに、組合と連携して官公庁からの緊急要請に応えるつもりです。
対象事業 | 測量事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・本社建物が一部損壊 ・測量機器・PCの20%が破損 ・一部データが消失 |
対策 | ・携帯メールを中心とした緊急連絡網の整備 ・外出時の緊急行動方針の決定 ・データバックアップシステムの構築 ・発電機による電力の確保(携帯電話・機器の充電式電池) ・さいたま支店での代替作業 ・組合事務局との緊急時連絡(被災状況、緊急支援) ・共同受注案件に関する他組合員との進捗・被災状況共有 |
-何か新たな気付きはありましたか?
最初はBCPそのものをわかっていなかったのですが、プロジェクトが進むうちにわかってきたというのが本音です。現場点検を行って、社内は危険が一杯だということを改めて認識しましたが、少し考えればそれほどお金をかけなくてもいろいろな対策を打てるということにも気付きました。技術者や営業は測量現場やお客様先にいることが多いのですが、あらかじめ被災を想定し対策を考えておくことにより社外の社員はもとより、社内にいる経営管理者も慌てないで冷静に考え、行動できると思いました。
本社のある渋谷駅周辺のビルは倒壊のリスクが小さいということがわかりましたので、被災時に本社にいる社員は基本的に本社に留まり、待機することにしました。本社は組合事務所に比較的近いので、被災時の組合への支援や組合事務所の代替拠点になることも重要と思っています。
-BCPを策定した感想をお願いします。
測量業の特性で作業現場が関東の各地に散らばっている状況に対して、被災時における対策を人、機材、データ、車両等の観点から具体的に定めることができたと思います。ただBCP文書の対策はあくまで1つのパターンであり、実際はその通りになるとは限らず、臨機応変な判断と行動が不可欠と思っています。そのためにも、携帯BCPに基本事項を盛り込むことと全社員対象の訓練が重要と思っています。