-事業内容を教えてください。
当社は創業以来半世紀にわたって、測量、調査、地図編集、データ作成、データ運用など、時代とお客様のニーズに合う技術とサービスを展開しながら、様々な地図や地理空間情報に関する業務を行ってきました。昨今では、GIS(Geographic Information System:地理情報システム)の設計・構築・運用や、お客様からお預かりした地図データのメンテナンスといった情報処理事業の占める割合が増えております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
一昨年の新型インフルエンザ流行をきっかけに、BCPについての関心が高まったのですが、どうしても本業が優先されますので、具体的な検討がなかなか進まない状況でした。そんな折、東日本大震災に直面し、事前に想定していなかったこともあって、帰宅困難者の対応や外出者との安否確認など、緊急時の対応がうまく機能しませんでした。この経験を受けて、本格的に改善する必要があると思っていたところ、当支援事業の存在を知り、これを機にBCP策定を通して自社を見つめ直し、強み・弱みをありのままに認識しようと参加を決めました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
今回策定対象とした情報処理事業のうち、地図データのメンテナンス業務の納期は、平均2カ月、短いと1~2週間程度になりますので情報の鮮度が命となります。首都直下型地震を想定した場合、お客様のご厚意により、ある程度の猶予はいただけるとしても、3週間以上の業務停止は許されませんので、目標復旧時間を2週間としました。
当事業の特徴は、各種データとPCが動作する環境さえあればある程度継続可能であることです。この点に着目し、電源の復旧とともに、即座に着手できるよう、あらかじめ在宅作業が可能な従業員を特定しておき、そのために必要な作業環境を構築することにしました。現在、事業拠点は府中本社と飯田橋支所の2カ所にあり、双方でバックアップを取っていますので、完全にデータを失う事態は回避できると考えています。在宅作業者へのデータ提供手段は、メールを想定していますが、通信インフラが回復しない場合は外部媒体にて自転車、もしくは徒歩輸送することにしました。
対象事業 | 情報処理事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・本社は半数、飯田橋支所は全員が出社不能 ・府中本社はオフィス内散乱、飯田橋支所はビルに入室不可能 ・PC7台破損、サーバディスク1台故障、VPN 切断 |
対策 | ・飯田橋支所のビル管理体制確認及び入館手段の検討 ・在宅作業担当者の特定と当該環境の構築 ・GIS用バックアップ機の設定 ・交通機関停止の際は徒歩もしくは自転車にて出社 ・顧客データのバックアップからの復元 ・在宅環境における作業継続 |
-何か新たな気付きはありましたか?
ハードとしての社屋の構造にリスクがあることを再認識しました。今回対象となった情報処理事業については、在宅作業という手段で継続する計画を立てることができましたが、地図調製業で必要となる大型プロッタなどの装置を、脆弱な環境でどう保護していくのか、費用対効果はどうか、また、予防・低減策として機器設備を完全に固定した場合、可動性や柔軟性とのジレンマをどう解決していくのかなど難しい問題が多々あります。ここは一気にすべてを解決するのではなく、少しずつベターな策をとっていければと思っています。これまでは日常業務を優先するあまり、「被災したらどうなるか?」という視点で物事を捉える機会がなかったのですが、今回はじっくり考えるきっかけになりました。
集合研修では他社の状況を知ることができ、非常に良い刺激になりました。成功例だけではなく失敗例からも学ぶべき点があると思いますので、多くの事例を紹介していただけるとありがたいですね。
-BCPを策定した感想をお願いします。
今回は、策定メンバーたちと議論し、意識を共有できたことが大きなステップにつながりました。まずは考えずに取り組んだ方が良いと思います。改善点を認識するだけでも効果があります。昨今、日増しに災害に対するひっ迫感が高まってきていますので、検討がひと段落してから対応策を講じるのではなく、同時進行で対策を進めていくこと、加速度をつけていくことが大切だと感じました。