-事業内容を教えてください。
東京都にある建材関連企業の協同組合として設立から91年経つ歴史ある組合で、組合員として約270社が加入しています。組合員の業種は、建材卸・販売、生コン・コンクリート製品製造販売等で、歴史ある企業が多く組合員の結び付きは強いと言えます。
組合の事業は組合員をサポートする、建材商品の共同購入・販売事業、共済代理所事業・損保業務の提携(委託)、労働保険事務組合事業があり、そのほか広報業務や建材商品・施工研修などを行っております。阪神淡路大震災後の平成8年3月に「震災時における消防活動業務の協力に関する協定」を東京消防庁との間で締結し、災害時に生コン車による消防用水運搬などの支援を提供することで合意しています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
今まで組合としてBCPについて話し合ったり、取り組んだことは無かったのですが、東日本大震災を目の当たりにし、東京も首都直下地震や水害等の災害が起きる可能性があるのではないかとの危機感を強めました。また、東京消防庁と災害時協定を締結していることもあり、災害時対応の確立の重要性も感じていました。そんな中、東京都がBCP策定支援事業の取組に力を入れていることを知り、これは組合員と組合の危機管理を強化する絶好の機会と判断し、組合員3社と共に参加することにしました。BCPに取り組むことで、当組合の認知度の向上及び社会貢献につなげたいとの狙いもありました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
組合は組合員に貢献するために存在しますので、組合員サポート業務機能の早期復旧が主たる目的となりますが、同時にBCPを策定する機会を最大限に活かし、組合と組合員との結び付きを強化しようと考えました。通常、組合員や組合役員との連絡は固定電話やファクスを用いておりますが、大地震発生時には使用不能となる可能性が高いので、まず組合役員・職員については携帯電話メールを用いた緊急連絡網を構築することにしました。これだけでも大きな進歩といえるでしょう。
組合員サポート業務である、建材の共同購入や共済・損害保険の事務代行を早期に復旧させるため、メーカーや共済組合、損害保険会社の被災状況と事業再開予定日を的確に把握し、迅速に組合員へ連絡する必要があります。そこで企業・組合ごとに「緊急時 問合せシート」を事前に作成し、有事に活用することにしました。そのほか予備PCのバックアップ化、組合ホームページによる業務再開告知、組合会館の耐震診断などの対策を決めました。
対象事業 | 組合員サポート業務、広報業務 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・事務局1名負傷、理事長は自社におり不在 ・組合事務所室内乱雑化、PC落下・破損 |
対策 | ・組合職員・役員の携帯電話メールを用いた緊急連絡網の構築 ・組合員とのPCメールを用いた連絡網の構築 ・転倒・落下防止策、ガラス飛散防止策の実施 ・水・食糧・救急用品等の備蓄 ・メーカー、共済組合、損害保険会社の被災状況と再開予定の確認(緊急時問合せシート) ・組合員の被災状況情報の収集と対応策の検討 |
備考 | ・東京消防庁との災害時協力協定の実行は、管轄消防署からの直接の依頼に基づき、各企業が実施 |
参加企業 | ㈱関口建材店、旭建材工業㈱、㈱ヤブ原 |
-何か新たな気付きはありましたか?
東京に大地震が発生した状況や組合事務局機能が停止することなど今まで考えたこともなかったので、一体何が起きるのか、何をすれば良いのかをゼロから考えるのに苦労しました。しかし5 ステップの進め方といろいろな事例の紹介により、組合及び組合員の実態に即した内容を策定できたと思います。組合員との日常のコミュニケーション手段は固定電話・ファクスで今後もなくならないと思われますが、今回初めて組合員のPC・携帯電話メールの使用状況を調査したところ、利用している組合員もかなりいますのでメールの活用も検討する時期に来たとも感じています。組合会館の耐震診断をすることにしましたが、これも今回のBCP検討を踏まえて決定したことです。
-BCPを策定した感想をお願いします。
始める前はBCPの意味や防災との違いも良くわかっていなかったのですが、体系的に進めていただいたおかげで、組合の実態を再確認しながら、何が問題でどうするべきかを自ら考えることができ、本当にやって良かったと思っています。今回得たBCPに対する認識や具体的な成果を今後の組合の運営や組合員サポートに役立てていきたいと思っています。