-事業内容を教えてください。
当社は、水廻りを中心にした住宅のリフォームと、電気温水器のメンテナンス・交換・修理の2つの事業を行っています。国内の住宅における電気温水器の設置率は5~6%で、ガス給湯器に比べるとニッチなものと言えますが、そのためメンテナンスの対応を行える業者も少ないのが現状で、全国でも数えるほどしかありません。設置率5~6%程度といっても首都圏での設置住宅は10万戸以上になり、当社がメンテナンスを行うお客様だけでも2万軒を超えますから、故障が発生した時の当社の役割はとても大きいと考えています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
東日本大震災時にお客様対応において社内が大混乱した経験が直接のきっかけです。配管が破損して水漏れを起こしたり、マンション等の電気温水器が転倒したりして、すぐに補修をしてほしいという電話が殺到しましたが、社外に出ていた作業員や営業担当者と連絡がつかず、安否確認ができない状況で、対応が追いつきませんでした。
マンション等における電気温水器の配管の破損や転倒は、階下に水が漏れて集合住宅全体の大きな問題となります。バルブを閉めればとりあえず水漏れは止まりますが、水道を一切使えない状態になってしまうので、料理・入浴・洗濯・用便等の日常生活に大きな支障を来すことになります。
平時から、温水器本体の転倒防止策の施工を勧めたり、緊急時の対応マニュアルを配布したりしていますが、このような取組に加えて、顧客の生活を守るために当社のBCPを策定しておかなければならないと痛感したのが、きっかけとなっています。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
前記の経験から、発災時には、電気温水器事業、特に温水器本体の配管の破損や転倒による水漏れの修理依頼が平時の数十倍も殺到すると予想されるため、その対応が重要な業務になると判断してBCPの策定に着手しました。
通常は工事部の5名で、東京都内を中心に神奈川県、埼玉県のお客様の修理作業を行っていますが、緊急時には負傷者の発生や修理依頼の殺到で人手が足りなくなりますので、工事部に加え営業部からも工事ができる社員を動員して作業に従事してもらうようにします。また、平時からメンテナンス業務を依頼している協力会社との連携を強化しておき、緊急時に作業員を増員してもらえるようにしたいと思います。
また、修理に必要な機材や部材の運搬には自動車が必要ですが、ガソリンの入手が困難になったり、交通規制で車が使えなくなったりすることが想定されますので、リヤカーか自転車でけん引できるサイクルトレーラーを用意することにしました。
修理依頼件数によっては修理用部材が足りなくなることも想定されますから、平時から在庫数量を管理し、在庫が一定数量を切ったら発注するルールを設け、部材の欠品を少しでも後に遅らせられるようにしました。
対象事業 | 電気温水器事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ 社員の帰社・帰宅困難 ・ 修理用部材が一部破損、新たな仕入が交通事情によって困難となる ・ ガソリン不足・交通規制等により車両による出動が困難になる |
予防・低減策 | ・ 部材の在庫を積み増しし、在庫が50%を割ったら発注する社内ルールの設定 ・ 顧客向け緊急対応マニュアルを作成し配布 |
代替策 | ・ 協力会社に依頼して緊急時の工事要員を確保 ・ 自動車の代わりに軽車両(リヤカー、または自転車で牽引するサイクルトレーラー)を用いて修理用部材を仕入先から引き取りに行く。また顧客先への出動にも用いる |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
東日本大震災後に味わった苦労を二度としたくないという思いから、どのようにBCPにつなげていくかということを考えて策定を行いました。最初は、何がわかっていて何がわかっていないかということも漠然としていましたが、安否確認の手段や工事用車両の代替策を具体的に考えていくにしたがって、徐々にBCPの形が明確になっていきました。また、最後の演習を経験することで、見直しや訓練の重要性も認識することができました。
社員だけではなく家族や仕入先、協力会社といった会社を取り巻く人たちとの連携や協力関係構築の重要性にも改めて振り替えことができました。事業を存続させることは、イコール社員を守っていくことです。BCPを策定するだけではなく、全社員に浸透させつつ、絶えず検証していかなければならないと感じました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
BCPをさらに深化せていくためには社内的な討論が不可欠ですから、今後の課題として全社的に取り組み、社内に定着させていきたいと思います。
社員の生活を守り会社を守るためにBCPを持つことは、今や経営者として当たり前であり、義務であるといっても言い過ぎではないと感じました。今後は、協力会社や仕入先等、社外に対しても、BCPに取り組んでもらえるようにしていきたいと思います。