-事業内容を教えてください。
弊社は水道管及びガス管の工事を行っております。お客様の8割は公共機関で、特徴は1回の掘削で上下水道・ガス工事をまとめて配管する効率的な施工が可能なため、工期短縮やコスト削減などのメリットをお客様に提供できることです。また、災害時は都水道局からの要請による緊急復旧活動や、練馬区及び地元警察署からの要請による幹線道路の啓開作業といった防災協定も結んでいる、社会インフラの早期復旧を担う企業です。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
水道管・ガス管敷設工事という重要なライフラインに係るサービスを提供していることから、以前よりBCPに強い関心を持っておりました。阪神大震災や中越沖地震において、被災地でのライフライン復旧活動に作業員を派遣した経験などがあり、3年ほど前から検討を始めていましたが、BCP策定は大手企業のものという感覚もあり、逡巡していました。しかし東日本大震災を経験し、都水道局からの要請や練馬区及び地元警察署との防災協定に応えるためにも、災害に強い会社作りが絶対不可欠であるとの思いを強くし、東京都BCP策定支援事業に参加しました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
弊社は、震災発生直後より都水道局から要請される緊急復旧活動に入る必要があります。また練馬区及び地元警察署からの要請による幹線道路の啓開作業にも対応しなければなりません。まず安否確認や機械設備の被害状況等の確認を行った後は上記活動・作業を行い、弊社としての事業復旧はその後に行うことになります。今回、都水道局からの受注による水道管敷設工事を対象事業としてBCPを策定しましたが、上記の緊急時対応を中心に検討しました。
幹線道路の啓開作業は警察署からの要請があってはじめて成立しますが、都水道局からの応援復旧活動は、発震時の震源地と震度に応じて、施工中の工事現場または都水道局に参集し、要請指示なしに自主的かつ迅速に自主点検・現場点検・応急措置(復旧態勢)の作業を行わなければなりません。このため、特に念入りに震源地・震度別の条件・判断・行動基準を整理し、複数の連絡手段と担当要員(関連会社の代替要員を含む)を決めました。
上記の活動に必要な経営資源は人員・工具・ユンボなど一部の機械設備が該当します。従業員のほとんどは近隣に居住し、工具やユンボなどの機械設備は平常時から分散された状態であることから、緊急時にも十分対応できることを確認できました。なお工具やユンボなどの機械設備等のすべてが故障した場合は、平常時より活用しているリース会社や外注業者を組み合わせて緊急対応に当たります。
対象事業 | 水道局からの受注による水道管敷設工事 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ 水道局への参集要員の被災 ・ オフィス内に物が散乱 ・ 事務所内のPC破損、サーバの破損 |
予防・低減策 | ・ PC・事務用機器の固定 ・ 旧機材の活用 ・ ディスク(ソフト)保管場所の変更 |
代替策 | ・ 公共交通機関及び車両規制の際は徒歩参集 ・ 関連会社の代替要員による対応 ・ 機材損失の際の外注業者、リース会社の活用 |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
被災地へ作業員を派遣した経験から、ある程度予測はしていましたが、実際にプロジェクトが始まってみると様々なことが理解できていなかったというのが正直な感想です。
経営資源を細かく洗い出して各業務のプロセスと紐づける作業は正直大変でしたが、調査から請求までの流れを一覧に整理し可視化できたことは非常に良かったと思います。また作業員への教育にも活用できると思いました。発災後の緊急復旧活動や啓開作業の流れを確認できたことも収穫でした。災害時にも地域の復旧に十分貢献できるという手ごたえを感じました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
今回は、災害協定の中で最も条件の厳しい都水道局からの受注による水道管敷設工事を対象にBCPを策定した結果、他の災害協定に対しても十分に対応できるという手ごたえをつかめたことが一番の収穫でした。
幸いにも、ほとんどの経営資源には代替策があることを確認できましたが、当社の最も大切な経営資源が従業員であることを改めて確認することができたことは非常に良かったと思います。