-事業内容を教えてください。
当社は給排水衛生工事、空調換気設備工事、消防設備工事、水処理施設設備工事の設計・施工を行っています。主なお客様は、防衛省、東京都、UR(都市再生機構)など官公庁関係が多く、ライフラインに関係する公共性の高い工事が比較的多い会社です。平成24年度6月からは、新規事業として太陽光発電事業部を開設し、自然環境に配慮した設備を創造していくため、太陽光発電の売電や次世代素材の研究・開発・応用も手がけております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
当社は、本社ビル内のテナント向けに防災マニュアルを作成しており、安否の確認・初期消火・帰宅計画・水や食料品の備蓄・防災救助工具の設置等、防災については以前より意識をもっていました。しかしながら、本業である公共工事においても社員や協力会社の工事要員の安全を守る必要があると考え、事業継続の観点からしっかりとした対策を講じる必要性を認識するようになりました。受注した仕事はもちろん、公共施設の復旧にもいち早く動ける体制づくりをしたいと思っております。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
災害発生時の当社の優先業務としては、受注済工事と行政からの要請への対応の2種類があり、いずれの場合も現場の状況把握を行った上で、それに応じた仮設設備工事を実施します。いずれも災害時のライフライン復旧に関わる公共性が高い案件になります。
この業務遂行に当っては、当社の現場監督者、工事を受注したジョイントベンチャー協力会社の工事要員、工事に使用する資機材、図面等が必要になりますが、今回の策定では、現場監督者の出社困難、工事要員の稼働率低下、資機材や図面の損傷等といった状況を想定しました。
現場の工事要員は、協力会社の従業員であるため当社の管理下にはありませんが、その働きをまとめる当社の責任は重いと考えました。また危険度の高い現場で作業していることもあり、全員の安全を守るためにはどうするかという観点から検討を行い、病院や避難所、緊急連絡先等を記した防災マニュアルを現場ごとに作成し、各自に配布することにしました。
現場監督者の出社困難と資機材の際は、平時より信頼関係を築いている地方の同業他社に応援を依頼することで対応します。機材については地方のリース会社の活用も検討しています。図面については平時は紙のものを業務に使用していますが、あらかじめデータ化し、本社に送信するルールを定めることで有事に備えます。
対象事業 | 管工事 |
---|---|
対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ 工事監督者の出社困難、協力会社工事要員の稼働率低下 ・ 資材・機材の損傷及び入手困難 ・ 図面(紙)の損傷 |
予防・低減策 | ・ 協力会社工事要員への防災マニュアル配布 |
代替策 | ・ 地方同業他社からの工事監督者の代替要員及び資機材の確保 ・ 地方リース会社からの機材リース ・ あらかじめデータ化及び本社保管してあった図面の使用 |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
本社と現場とでは環境も作業内容も大きく異なり、現場は人命を落とす危険もある職場です。また現場は常に複数あり、工事によって危険性も異なっています。そうしたことから、本社と現場を一つの防災対策でまとめることはできず、本社用と現場用それぞれで対策を講じていくには、さらなる検討が必要だと思っています。
また、当社の工事は公共性が高く社会的な責任も大きく、それに応えるためには、まだ解決していない課題が数多くあります。今回は図面等のデータ保管方法について十分に検討しきれませんでした。これらの課題を整理していきながら、さらなるBCPの充実を図っていきたいと考えています。
コンサルティングにおいては、BCPのまとめ方や構成の仕方について大変参考になる点がありました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
BCPについてはかなり形が整ってきたのではないかと思いますが、今後も継続的な改善が必要だと思っています。災害後に当社だけが生き残っても仕事にはなりません。協力会社はもちろんのこと、地方の同業他社とも相互協力の連携体制を構築することが不可欠ですので、今後は業界内のネットワーク作りを図っていこうと考えています。