-事業内容を教えてください。
当社は1956年に創業し、1992年1月に屋根工事を含めた外装工事の専門会社として統合・分社しました。大手ハウスメーカーの指定工事店として、年間3000棟の施工実績があります。2000年4月には、新たにリフォーム事業を開始しています。当社は業界の中では珍しく、社員職人制を採用しております。そのための教育を充実することで、一人の従業員が現場監督と職人を兼ねるなど幅広い業務に対応することができる点が当社の強みです。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
当社の主な業務は屋根工事のため、当然高所での作業が多くなります。ヘルメット、安全帯の着用などの装備や作業手順の遵守、足場の点検の徹底等、危機意識は高い方だと思いますが、BCPについては知りませんでした。あるセミナーでBCPの存在を知り、東日本大震災のような震災に備えて事業を継続するための対応策を整備しておく必要性を感じ、当支援事業に参加させていただきました。BCPを策定して従業員の生命を守り、事業を継続することはもちろんですが、従業員のさらなる危機意識とお客様からの信頼感のアップにもつなげられればと考えております。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
当社のメイン事業である屋根工事を対象事業とし、有事においては受注済み物件の完工を優先して復旧させます。想定する災害は東京湾北部地震とし、本社半壊、倉庫内散乱による資材の破損、社員職人の負傷、事務員の負傷、仕入先・外注協力先との連絡不通という被災想定をもとにBCPの策定を進めることにしました。
まず、本社半壊に対しては、平時に月1回の全社会議を行っている近隣のスペースを対策本部の立ち上げ場所及び代替拠点と決めました。また、倉庫内散乱を防ぐために3S(整理、整頓、清掃)の徹底を強く進めていくことにしました。社員職人の負傷対策としては、ヘルメットや安全帯着用の徹底も行なっていきますが、よりしっかりとした足場を作ってもらえるように業者様にも依頼をしていきます。また多能工化についても一層の強化を図ります。事務員の負傷については、社内の棚の転倒防止策を取り入れるともに、業務をマニュアル化することで対応できるようにしました。仕入先や外注協力先については、携帯電話や携帯メール等を用いた緊急時の連絡手段の取決めを行い、最低限の業務を継続できるように検討を行いました。
対象事業 | 屋根工事事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ 本社半壊、倉庫内資材散乱による破損 ・ 社員職人の負傷、事務員の負傷 ・ 仕入先・外注協力先との連絡不通 |
予防・低減策 | ・ 3Sの徹底・ヘルメットの着用 ・ 安全帯着用の徹底 ・棚の転倒防止 ・ 安否確認ルールの取り決め |
代替策 | ・ 近隣会議スペースを本社の代替拠点として使用 ・ 多能工化・マニュアルの整備による作業代替 ・ 緊急連絡手段(担当者間の携帯電話・携帯メール)の使用による資材の追加発注 |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
当社は今まで、何かにつけ社長の私が決定することが多かったのですが、今回の取組により、策定メンバーの意識に変化が起き、自分たちで考えて進めてくれるようになりました。また今まで3S活動がなかなか浸透しませんでしたが、現場点検によって危険なポイントがはっきりしたことで、倉庫内の在庫の3段積みを止めるなど、3S活動に対する意識が高まりました。在庫の過剰な発注を止めるなどの効果も表れています。
また今回ステップごとの予習や関係者への周知等、ものごとを進める上での事前準備の重要さをメンバーが認識してくれました。万が一の不測の事態に対する準備にも同じことが言えると思いますので、業務を継続できるように、取り組んでいきたいと思います。
-BCPを策定した感想をお願いします。
繰り返しになりますが、当社のBCPの大きなポイントの一つである「3Sの徹底」について、策定メンバーの意識が向上しました。ただ、策定メンバーとそれ以外の従業員との間に意識のズレが起きていることも感じています。今後は他の従業員へいかに周知していくかが課題であると認識しています。また仕入先および外注協力先へも当社の取組を理解してもらえるよう働きかけていき、お客様の信頼感のアップにつなげていきたいと思います。