-事業内容を教えてください。
弊社は大手トラックメーカー様の1次サプライヤーとして、金属機械加工による自動車部品を製造しています。主な製品としてスイッチ製品と金属切削加工製品があります。同業他社はどちらか一方の製品に特化している小規模なところが多いのですが、弊社は両方を手がけています。特にスイッチ製品の製造では、特注の材料(ダイアフラム等)を使用し、検査機器も自社製であり、弊社独自のノウハウが凝縮されています。熟練工による高品質なものづくりは顧客から高い評価を受けています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
東日本大震災時には震災対応の不備を痛感しました。また仕入れ先からの材料調達が一時停止し、お客様への供給責任の面からかなり不安を覚えました。スイッチ製品の製造には弊社独自のノウハウが必要であるため、他社への生産委託は簡単にできません。また緊急時に物資を運ぶトラック向けの製品でもありますので、供給を止めるわけにもいきません。
東日本大震災時に感じた不安から、有事の際にも従業員の安全確保に努め、お客様への製品供給が滞りなくできる体制を整えたい、かりに業務を中断することになっても早期に復旧させたいという想いをもつようになりました。
また、お客様からもサプライヤーに対する早期のBCP策定要請があり、セミナー等にも参加しましたが、自社だけで策定することは難しく、本事業のことを知って参加を希望しました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
対象事業は他社での代替生産が難しいスイッチ製品の製造に決めました。想定災害を地震とし、被災のために材料の調達ができず、製造工程に関わる従業員や内職者が作業困難になり、検査機が故障するなどの状況を想定しました。
プレス加工・気密検査・調整検査・半田付けの1サイクル3日の組立工程を優先して復旧させますが、電力インフラの復旧を待つ間に材料仕入の代替業者を検討し、負傷した人員の代替体制を整えます。スムーズに体制を組めるように、平時より圧力調整作業や半田付け作業についての教育を強化し、従業員の社内資格取得を促進して多能工化を進めます。また、検査機は自社製で市販の汎用機で代替できないため、破損した場合に備えて修理用交換部品を備蓄するとともに、担当者の修理技術の習熟に力を入れていく予定です。また、製品の出荷においては受注データが必要になるため、PC落下などによるデータの損傷に備えてバックアップ手段を追加することにしました。
対象事業 | スイッチ製品製造事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ プレス工程:負傷者 1名、半田付工程:内職者作業困難 ・ 気密検査機:故障、ズレ 1台 ・ PC:落下破損 4台(すべて) |
予防・低減策 | ・ 棚の転倒防止策(配置変更、横連結) ・ 検査機の転倒・衝突防止策(配置変更、固定) ・ 受注残データのバックアップ手段の追加 |
代替策 | ・ 多能工によるプレス加工・気密検査業務の代行 ・ 社内認定従業員による、内職者の半田付け業務の代行 ・ ノートPCによる代替(生産計画立案) |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
弊社の策定メンバーは各現場の責任者のため、時間の確保に苦労しましたが、現場の意見を積極的に提案してもらうことによって完成度の高いBCPを策定できたと考えております。BCP策定を進めていく中で、やはり自分一人で考えても足りない点が多々あることに気付きました。また、現場点検で気付いた点に基づいてBCP策定期間中に部品棚のレイアウトを変更するなどの対策を迅速に講じることができ、社員の実行力・改善力・想像力が強化されたと考えています。以前より、予防策が足りないと漠然と感じておりましたが、今回、弊社では何ができていて、何ができていないかが明確になり、それに対する改善力を身に付けることができたと思います。
-BCPを策定した感想をお願いします。
今回策定したBCPを指針に、今後は被災時にも団結していける自信がつきました。不測の事態でもとっさに供給を継続することができるBCPを策定できたと思います。今後、PDCAを回して、より良いものにしていく必要があると感じています。事前にできることを全員で進めていき、万が一の不測の事態の時にも作っておいて良かったと思えるようにしたいと思います。