事例紹介: オーベクス株式会社

オーベクス株式会社 代表取締役社長 栗原 則義 氏

人材と伝票情報を駆使して
迅速な輸出を軸に出荷再開を目指す

オーベクス株式会社 ロゴ

代表取締役社長 栗原 則義 氏

想定リスク: 東京湾北部地震
業種: 製造業

-事業内容を教えてください。

当社は、近代日本資本主義の父といわれる渋沢栄一氏が設立した日本で最初の帽子製造会社です。明治25年(1892年)に東京帽子株式会社として創業し、昭和60年(1985年)に現在のオーベクス株式会社に社名を変更して、120年の社歴を有しています。現在はサインペン先やマーキングペン先メーカーとして世界市場で高いシェアを有しています。事業内容はペン先の製造・販売を主とする「テクノ事業」と、その技術を医療分野に応用して麻酔関連製品などの機器を開発・生産する「メディカル事業」の2つです。

ペン先製品は約8割が輸出向けで、欧米の筆記具メーカーなどを通じて、筆記具用途だけでなく、アイ・ライナー、リップ・ライナー等の化粧品にも使用されています。

-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。

東日本大震災の際は、本社ビルは大きな揺れにより家具類が倒れ、物が散乱するなどの被害に見舞われましたが、幸い社員にけが人などは発生しませんでした。また、千葉工場でも際立った被害はなく、停電も発生しなかったため、短時間で操業再開ができました。その際、テクノ事業の主要顧客である海外ユーザーからすぐに被害や出荷見込みについての問合せがあり、また駆け込み需要も発生しました。

海外のユーザーは日本国内の大災害の影響を受けませんから、日本国内で大災害が発生しても予定納期を狂わすことなく、製品を出荷して供給責任を果たす必要があり、このような災害に強い体制の構築を目指して、今回のBCP策定プロジェクトに参加しました。

-策定されたBCPの内容を教えてください。

今回はテクノ事業、特に輸出向けを中心にBCPを検討しました。

この事業の製品は多品種で、生産開始から出荷まで約1ヶ月以上のリードタイムがあり、製造工程には大量の仕掛製品が存在しますので、その出荷作業から迅速に復旧することにしました。

本社、工場における人員の軽傷、停電による本社サーバと千葉工場の操業停止を想定しました。電力が回復するまでの間に、本社営業部から、主力の千葉工場、及び隣接する生産子会社の朝日商事工場に支援要員を派遣し、紙の出荷伝票を使って、人手のみでも再開可能な出荷作業を復旧します。また、自家発電設備を拡充することで、生産ラインの再開は無理でも、仕掛品の検品、梱包に必要な機器は稼働できることが判明したので、仕掛品を早期に出荷再開する体制を整備することにしました。

さらに、テクノ事業は欧米などへの輸出比率が高く、通常は船便で出荷していますが、東京湾北部地震で横浜、千葉等の積出港が使用不能になった場合には、航空便に切り替えて成田から出荷する対策を取ることで、顧客への供給責任を着実に果たせるめどが立ちました。

対象事業テクノ事業
対象リスク東京湾北部地震
被災シナリオ・ 本社、工場で数名軽傷、営業担当5名消息不明
・ 停電により本社サーバ停止
・ 停電により千葉工場の操業停止
予防・低減策・ 本社内、千葉工場内の耐震対策徹底
・ 千葉工場の居住地域を考慮した人員配置
・ 本社サーバ・ルーム内の耐震策実施
代替策・ 本社からの応援派遣による千葉工場の作業再開
・ 自家発電機の拡充による、千葉工場での検品以降の工程早期復旧
・ 主力の海外向け製品出荷の船便から航空便への切り替え

-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?

当初は、本社をはじめ千葉工場など自社の施設、設備を災害から保全し、早期復旧の対策を講じればBCPとして十分だと考えていました。しかし顧客への供給責任を考えると、出荷後の物流まで視野を広げて考える必要があるという点に今回改めて気付かされました。そこで船便から航空便への切り替えを検討しました。大手航空輸送会社はしっかりしたBCPをすでに整備しており、輸送ルートを切り替えてでも責任を持って輸送してくれることがわかりました。物流業界では、このようにBCPへの取組が既に進んでいることを知り、当社の今後の取組の上でも大いに刺激を受けました。

-BCPを策定した感想をお願いします。

今回の検討作業で大いに刺激を受けたことは、短時間の検討でも失敗を恐れず、どんどん結論を下して物事を決めていくスピード感の重要性でした。また、議論だけに終わらず、議論のたびにその成果を記録として形にしていく進め方も、今後の日常業務の中に取り入れていきたいと思いました。

今回作成したBCP文書等の資料を原案として、今後継続的に改善や検証を進めながら精度を高めていく必要はありますが、検討チームの参加メンバーはBCPを構築していく手順に精通することができたので、これを足がかりに社内への浸透を進めていきたいと考えています。災害にも強い経営体制を作るという課題を達成する確かな手応えを得ることができました。

オーベクス株式会社 BCP策定プロジェクトメンバーの方々

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プロジェクトメンバー

代表取締役社長栗原 則義 氏
取締役 管理部長野北 明臣 氏
取締役 関係会社総括木内 忠興 氏
管理部 総務グループ長宮本 昌哉 氏
管理部 情報システムリーダー大崎 英樹 氏
管理部 経理グループ長塚越 孝弘 氏
テクノ事業部 営業グループ長石川 智一 氏
テクノ事業部 千葉工場長片山 貴義 氏
朝日商事株式会社 常務取締役鈴木 良一 氏
会社情報
称号: オーベクス株式会社
本社所在地: 東京都墨田区両国4-31-11
設立: 1892年12月
資本金: 19億3,983万円
従業員数: 99人
代表者: 代表取締役社長 栗原 則義
事業内容: サインペンのペン先の製造販売/医療機器の製造販売
URL: http://www.aubex.co.jp

(2012年3月末日現在)

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