-事業内容を教えてください。
弊社は、大正5年の創業から印刷事業を営んでおります。近年、金融関連の企業様や保険会社様向け等の出版以外の印刷事業が伸びております。特に金融関連は、高い専門性が必要となる法律関係の文書のチェックが必要となり、以前は大手の数社しか手掛けておりませんでした。当社は専門性を持った人材を採用するなどして5年ほど前より参入し、事業を拡大しております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
東日本大震災以降、国内外のお客様よりBCPの有無についての問合せが増えており、特に金融・保険会社様からは強くBCP策定のご要望を頂いております。また、首都直下地震が起きた場合、交通規制で社員が出社不可や帰宅困難となり本社機能が停止してしまうリスクがあり、そのためにも対策を考えておく必要があると思いました。すでに社内でBCP策定に着手しておりましたが、上手く進めることが出来ず、今回応募させていただきました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
金融機関関連の印刷物は、運用報告書や目論見書など納期遅延が許されないものが多いため、今回BCP策定の対象にしました。東京湾北部地震を前提に、外出中の営業員との連絡の不通、工場作業員の負傷、印刷機の破損、仕入れ先・外注先との連絡不通・入出荷停止を想定しました。これに対して、弊社では受注済みの製品出荷を目標に、刷版から印刷・製本・出荷までを重要業務として立ち上げることにしました。
これらの業務の復旧には、顧客と調整を行う営業員と工場の現場作業員は必須です。プロジェクト中に現場点検を行い、本社や工場内のラックの連結や固定、最上段に置いている資材の撤去等の予防策を検討しました。負傷者が発生したときのために、今後、応急処置の対応者を育成することにしました。
また、メイン工場の複数台の印刷機や製本機が破損した場合には、自社で修理が出来ないため修理業者への依頼と並行して、以前は工場として使用していた他の事業所で代替生産を行うことにしました。また機器が無事であっても、一部印刷を外注している協力会社との連絡不通や入出荷停止を想定し、変則勤務体制によって自社内で代替生産を行うことも検討しました。
対象事業 | 金融・商業印刷(運用報告書、販売用資料、約款) |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ 営業7人連絡不通、社員負傷(生産管理 2人、制作1人、工場4人) ・ 印刷機2台破損、製本機1種2台破損、刷版2台破損 ・ 仕入先・外注先が連絡不通、入出荷停止 |
予防・低減策 | ・ 救急箱の用意、応急処置対応者育成 ・ 他の事業部・協力工場との災害時協力の事前取決 |
代替策 | ・ 代行者による代替作業 ・ 修理業者への依頼と並行し、他の事業所に代替生産 ・ 変則勤務体制による外注発注分の自社での生産 |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
現場点検を行ったあとは、オフィスや工場の細かなところまで災害時の危険箇所になるかもしれないと、気になりましたが、BCPの考え方が身に付き始めていると実感できたことでもありました。ステップ中の検討内容も社内だけで議論しているとテーマが広がりすぎてしまいがちですが、コンサルタントの方に上手く集約していただき、着実に前に進むことが出来ました。
今回、BCPの基本の考え方が身に付き、短期間で文書にできたことが本当に良かったと思います。また策定メンバーのリスクに関する意識はかなり高まったと思いますが、今後はいかに現場にも認識してもらって、定着させていくかが課題であると感じました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
今回、BCPを策定して、災害時にも供給責任を果たす体制が整えられ、お客様からの声に応えられることができたことを、とても嬉しく感じております。
今回は、対象リスクを地震にしましたが、お客様からはパンデミックの対策も求められております。策定したBCPを参考にしながら、自分たちでパンデミックについて勉強し、対策をとっていきたいと思います。工場の現場スタッフに周知を図る際には、また違った意見も出てくると思いますが段階を踏んで展開していきたいと思います。