-事業内容を教えてください。
当社は昭和23年の創業以来、意欲的な研究開発を続けており、現在は潤滑油生産を中心に受託加工や使用済みオイルの再生(リユース)事業に取り組んでいます。潤滑油は大きく車両用と工業用がありますが、当社は、それぞれに多種類の製品を供給しております。当社の製品は省燃費性や省資源性に優れ、常に時代の要請に応えるものとして高く評価されております。特に変圧器で用いられる絶縁油は、当社独自の精製工程により高い品質と性能を誇り、東日本地域で高いシェアを占めています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
BCPという言葉を初めて聞いてから6年になりますが、特に最近は外資系や国内大手のお客様から、有事における製品の供給対策について要望や問合せを多くいただいています。そのためBCPに取り組まざるを得ないという認識を強く持つようになり、研修等にも積極的に参加しましたが、どこから手を付けたら良いのかわからず困っていました。そのような際に当支援事業を知り、コンサルタントによる直接指導が受けられるとのことで、早速参加を申し込みました。
当社にとって有事の際に一番大切なことは従業員の生活を守ることです。BCPを策定し、事業継続・復旧のタイムテーブルを示すことで従業員が安心感を持って働けるようにしたいと考えています。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
対象事業としては、収益貢献度が高く、顧客からの早期復旧ニーズが高い潤滑油・添加剤製造を選びました。有事においては、受注、生産管理・発注、製造、在庫管理、出荷業務を優先的に復旧します。
これらの業務には工場設備や検査機器、電力等が必須になりますが、震度6強の東京湾北部地震発生によって、配管の一部破損、液状化による屋外タンク一部の傾斜、検査機器の倒壊、電力の7日間停止等の被害を想定し、実施可能な対策案を徹底討議しました。
製造には電力インフラの復旧を待つ必要があり、それまでに、傾斜したタンクからオイルの緊急抜き取りをして二次災害を防止し、オイルの確保を図ります。破損した配管を応急処置して使用可能な設備による部分再開を目指します。また、検査機器が破損した場合は、手動代替試験、外部試験委託等の方法で代替します。これらの活動に必要な照明やサーバ稼働確認、携帯電話充電等のために、自家発電装置を購入することも決めました。
対象事業 | 潤滑油・添加剤製造 |
---|---|
対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ 工場配管一部破損、液状化により屋外タンクの一部が傾斜 ・ 検査機器の倒壊、破損 ・ 電力7日間停止、道路/都市ガス/上下水道14日間停止 |
予防・低減策 | ・ フレキシブルホース等によるオイル漏洩防止対策の増強 ・ 検査機器の固定 ・ サーバ、OA機器の転倒防止、二重化 |
代替策 | ・ 被災タンクからのオイル緊急抜き取り、配管応急処置による設備の部分復旧 ・ 手動代替試験法による試験または外部への試験委託 ・ 自家発電機による緊急対応(照明、サーバ/PC稼働確認、充電等) |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
お客様から緊急時の供給について問合せを受けるたびに、これまでは多くの労力をかけて個別に対応してきましたが、今回、自分たちで様々な被災状況を想定し、具体的対策を検討していったことにより、自社としての一貫したBCPを策定することができました。
対策にも、災害が起こる前に講じるものと、災害が起こってから取るべき対策があるという考え方を学びましたので、今後は広く社内に浸透させていきたいと思います。また、有事における役割分担が明確になったので、これを平時にも活かしたいと思いました。策定の過程で使用した様々なチェックシートもBCP以外に役立てることができると思います。
当社はISO認証を取得して10年以上経っているためか、BCPに取り組む下地があると感じました。またメンバーを広く集めて検討を行ったことで全社の結束力を再認識できましたので、今後、BCP取組のPDCAを強力に回転させていくことができると思います。
-BCPを策定した感想をお願いします。
BCPの取組方が具体的に見えてきた、多くのことに気付かされた、というのが第一の感想です。最近もBCP取組状況についてお客様から具体的な質問が寄せられましたが、直ちに回答することができました。今後は全社員の参画意識の向上が重要であると思いますので、まず12月にトップを交えた社員交流ミーティングを行い、その後も工場耐震診断を実施して不安全箇所の補強を行ったり、有事のバックアップ体制を構築するための多能工の育成等を行うなど、BCPの取組を着実に続けていくつもりです。全国石油工業協同組合内でBCPの必要性を主張しているので、まず我が社で参考となる事例を構築したいと思っています。