事例紹介: 株式会社東京ポリエチレン印刷社

株式会社東京ポリエチレン印刷社 代表取締役社長 千田 敦 氏

包装フィルム印刷の早期復旧で
食品業界への供給を守る

株式会社東京ポリエチレン印刷社 ロゴ

代表取締役社長 千田 敦 氏

想定リスク: 東京湾北部地震
業種: 製造業

-事業内容を教えてください。

当社は大正元年に金版印刷業として創業し、私は6代目になります。現在の主事業であるプラスチックフィルムへの印刷加工を開始したのは昭和25年です。軟包装フィルム印刷(グラビア印刷)における草分け的存在として、食品メーカーを中心に商品の包装フィルムを提供してきました。

お客様感動にCHALLENGE!をコアビジネスに、品質・納期・価格ともに非常に小回りの利いた対応をしています。また、創業100周年記念事業として、平成24年10月、最新の耐震強度を備えた新工場(第1期工事)を竣工し、お客様に安心していただける環境で、より多くの需要に応える体制を整え始めました。

-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。

大手取引先は以前よりBCPを策定しており、当社としても関心を持っていましたが、災害時には何もできないと諦めていました。

しかし、東日本大震災の際、原材料が入手できなくなる、メーカー側が勝手に仕様を変える等の問題が発生しました。有事の際にわが社の印刷事業が止まると、包装フィルムを必要とする食品の包装・出荷ができず、社会的にも大きな影響を及ぼすことになります。有事においてもパニックにならずに、供給を継続してお客様に安心していただける体制を構築したいと考えました。

今年度の事業方針でBCPの策定を宣言し、中小企業庁にあるガイドラインを参考にまとめようとしましたが、まとめ方や運用の仕方全般について具体的にイメージがわかずに行きづまり、本事業に参加しました。

-策定されたBCPの内容を教えてください。

当社の主力事業である軟包装フィルム事業についてBCPを検討しました。東京本社にいる管理部・営業部の人員40%が被災し、基幹システムが使用不可になり、埼玉にある生産工場も建物一部倒壊により生産機械が5台中2台使用不可になるという被災想定をしました。

災害後は速やかに主要顧客へ被災・稼働状況速報をメールで送信し、顧客の生産計画への影響を最小限に抑えるとともに、災害後に急増する食品需要に応えるために、工場での生産業務を早期に立ち上げることにしました。

顧客対応では、本社のFAX使用不可の場合は受付先を埼玉工場に切り替える等の受注方法の代替策を検討しました。また、東日本大震災時には対応しきれなかった災害時の仕様変更に備え、事前に顧客と調整して、製品デザイン・色の変更に対応できる体制を検討しました。工場では、設備・機械倒壊の予防・低減策としての固定対策や、約10,000本ある印刷用シリンダーの転倒防止策、電力回復以降に行う設備稼働点検リストの作成、メンテナンス対応等を検討しました。

また、有事においてはフィルム・インキ・接着剤等重要な材料の調達が非常に困難になると考えられます。通常は工場にある材料在庫は数日分のみですが、1か月分の備蓄用在庫を調達先で確保してもらう協力依頼をすることにしました。

対象事業軟包装フィルム事業
対象リスク東京湾北部地震
被災シナリオ・ 本社:負傷3名 帰宅困難者15名/工場:帰宅困難者 30名 負傷者2名
・ 工場一部倒壊による生産機械5台中2台使用不可
・ UP1(基幹システム)使用不可
予防・低減策・ 印刷用シリンダーの転倒防止対策
・ 工場建物・機械設備の耐震補強対策
・ 定期設備点検による老朽設備の交換
・ 埼玉工場にバックアップサーバを設置
代替策・ 受注用FAXの本社から工場への切替え
・ 調達先での備蓄用在庫確保

-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?

生産設備一部使用不可という被災シナリオで対策を考えましたが、被災設備を厳密に想定することは困難で、まだ討議が整理できていない面もあります。ただし、様々なシナリオで対策を考えることができましたし、東日本大震災時に災害対策本部も立てられず何をしたら良いのかわからなかったレベルであったことを考えると、BCPがこのようにまとまって非常に良かったと考えます。

今回の策定作業では、経営資源を洗い出したことによって、改めて当社が持つ脆弱性を特定でき、今まで抽象的にしか捉えられていなかった対策をより具体的に検討できました。現時点では対策ができていなかったという気付きをスタート地点として、今後の取組を継続していきたいと思います。

今まで考える機会が少なかった危機管理について、事業継続の観点から見直すことで、版の管理・建物の耐震対策・人材育成等、工夫しながら取り組むべきことがたくさんあることがわかりました。

-BCPを策定した感想をお願いします。

東日本大震災では本当に何も動かなくなりましたし、本社社員も埼玉の生産工場へ赴いて倒壊したシリンダーの整理を手伝うくらいしかできない状況でした。BCP策定の必要性を十分知りながら、担当部署だけではまとめきれないと焦っていたところに、この事業に参加し、全社的にBCPを検討したことで、有事における拠りどころができ、非常に助かりました。

当社が担っている社会的責任を果たすために、今後、社内から予防・低減策の提案を募集したり、年間計画で定めた施策を行うことでBCPの定着化を図っていきたいと考えます。半期ごとの予算や部門方針の中にBCP項目を設けて、皆で継続的発展を目指してまいります。どのようにBCPを策定すれば良いのかわからずに困惑していた私でしたが、コンサルタントの方々のおかげでなんとか策定に漕ぎ着けました。本当にありがとうございました。

株式会社東京ポリエチレン印刷社 BCP策定プロジェクトメンバーの方々

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プロジェクトメンバー

代表取締役社長千田 敦 氏
工場長生田 富康 氏
営業部長窪田 優 氏
管理部 総務課長伊藤 由美子 氏
管理部 営業推進課長斉藤 高雄 氏
管理部 総務課美甘 浩二 氏
工場 次長柳沼 清一 氏
工場 製造次長栗原 秀樹 氏
工場 業務課長益子 毅朗 氏
工場 技術グループ長斉藤 光一 氏
工場 製造課長永井 忠 氏
会社情報
称号: 株式会社東京ポリエチレン印刷社
本社所在地: 東京都板橋区若木2-32-8
設立: 1954年8月
資本金: 5,000万円
従業員数: 79人
代表者: 代表取締役社長 千田 敦
事業内容: プラスチックフィルムへのグラビア印刷・ラミネート他後加工全般
URL: http://www.to-poly.co.jp

(2012年12月末日現在)

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