-事業内容を教えてください。
当社は1938年の創業以来、電子、電気絶縁体から包装材料まで幅広く手がける材料メーカーです。材料を「塗る」(コーティングする)、「貼る」(ラミネートする)、「重ねる」(積層する)という当社のコア技術を活かし、主にパソコンの基板などに使われるプリント配線板用銅張積層板や携帯電話に使われるフレキシブルプリント配線板用材料の製造・販売を行っております。
東京本社のほか、大阪に営業所、上海に駐在員事務所、埼玉県坂戸に開発技術部門と工場、生産子会社として岩手、茨城、タイに工場を構え、経験に裏打ちされた技術開発力と充実した生産体制を取ることで、お客様のニーズにお応えしております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
2011年のタイ洪水では当社のタイ工場が被災し、タイでの製品供給が停止してしまいました。その時は、主な納品先工場もタイ国内にあり、そちらも被災して操業停止となったため、必要な材料供給ができない事態にはなりませんでした。
しかし、首都直下地震が起こった時のことを考えると、弊社の本社機能のみ停止することも考えられます。本社では、お客様の要望を工場へフィードバックする営業とお客様との受発注や入出荷の業務を行っております。そのため、本社機能が停止してしまうと海外や国内にある工場の稼働に大きな支障を来すこととなります。東日本大震災でも岩手と茨城工場の停電など社会インフラの停止により生産、出荷が一時停止する事態を経験しており、BCPの必要性を強く感じました。
今回、BCP策定に取り組むことにより、事業継続力の強化及び従業員の安全確保とお客様からの信頼度向上につなげていきたいと思いました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
まずはBCPの対象範囲を本社に絞り、顧客からの受注、工場への出荷指示、資材購買を重要業務としました。主な被災シナリオとして、東京湾北部地震が発生して、本社ビル半壊、営業との連絡不通、従業員の負傷、システム情報機器の破損を想定しました。
事業継続には従業員が必須です。まず、営業員との安否確認ルールを取り決め、本社内のOA機器・棚等の安全対策に加えて、応急手当者の育成をすることにしました。さらに、本社機能の受発注作業の業務の標準化をすすめ、人員が不足した場合に、代替要員で業務を行えるようにしました。
また、首都直下型地震が起きた場合、仕入先も同時に被災する可能性がありますので、事前に緊急時の連絡手段を取り決めることにしました。さらに、システム情報のサブ機器などによるデータのバックアップ実施や、本社ビル利用不可の場合の都内の貸事務所への拠点移動による業務継続を検討しました。
対象事業 | 本社機能(受発注・購買・出荷指示業務) |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ 営業員の連絡の不通、従業員(業務)の転倒等による負傷 ・ 本社ビル半壊 ・ システム情報機器の破損 |
予防・低減策 | ・ 応急処置対応者の育成 ・ 業務の標準化 ・ データバックアップルールの取り決め |
代替策 | ・ 都内貸会議室を活用して対策本部を立ち上げ、一部の社員は坂戸に拠点を移す ・ バックアップデータの活用 |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
当社は東日本大震災やタイの洪水、そして今回のBCP策定を経験し、災害時に個々の担当者の判断で動いてしまうことは、迅速で合理的な事業継続を阻害すると感じました。会社全体として、復旧目標を設定し、そこに至るために各部署の最低限の業務プロセスを明確にしていくことが重要だとわかったことが一番の収穫です。
今までも部門間の業務の標準化を進めておりましたが、BCPという目的がはっきりしたことにより、異なる部門の業務が代行できるように、さらに推進していくことにしました。
また、本社機能のコア部分を担っているのは情報インフラです。費用対効果を検討しつつ、効果的な対策を継続して行う必要性を認識しました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
ステップを通じて、有事の際の対応について、今まで頭の中だけで考えていたことが非常に明確になりました。また当支援事業に参加するまではBCPの策定はどこから着手して良いのかわかりませんでしたが、点と点をつなげることができました。
今回策定したBCPをスタートとして、PDCAのサイクルを回してより実効的なものにするとともに、工場を含めた他拠点へも展開していくことにより、従業員の安全確保とお客様からの信頼感のアップを図りたいと思います。