-事業内容を教えてください。
当社は創業以来、一貫してプラスチック用着色剤の専門メーカーとして活動してきました。塩化ビニル用やHDポリエチレン、ポリプロピレン、LLDポリエチレンといった汎用樹脂用着色剤をはじめ、近年は着色コンパウンド加工や塗料、インキの分野でもお客様から高い評価をいただいております。特に「白」の着色分野ではスケール、技術ともに業界No.1と自負しており、当社ならではの強みとなっております。軟質塩化ビニル用着色剤については国内で生産している企業は数社しかなく、専業メーカーとしては当社だけであり、国内シェアの約7割を提供しております。生産拠点としては、千葉、静岡、神戸の3か所に工場があります。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
直接的には東日本大震災がきっかけです。当時、原材料の仕入と物流で大きな影響がありました。以前より経営上の戦略として主原料を2社購買していますが、福島県いわき市小名浜の仕入先が納入不能になったため、三重県四日市の仕入先に全面的に切り替えたものの、なかなか必要な量を調達できませんでした。
また、数社のお客様よりBCPに関するアンケート調査を受けており、全社での取組が必要だと考えていましたが、どこから手を付ければ良いかわからず検討が進まなかったため、東京都BCP策定支援事業に参加いたしました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
対象事業としては、売上の6割を占め納期要求も厳しい塩ビ事業を選びました。有事においては、迅速に生産計画を見直し、購買・生産を優先的に復旧します。
これらの業務には人員、生産設備及び検査機器、生産システム等が必須になりますが、地震発生による従業員の負傷、本社の半壊、千葉工場における配管の破裂・液漏れ、検査機器半数の故障、サーバの破損によるシステム停止、電力の5日間停止等の被害を想定し、実施可能な対策案を討議しました。
まずは社員の安全確保を最優先に考え、キャビネットや設備類の固定及びガラスの飛散防止策などを考えました。本社と白井工場については、迅速に被害状況を確認し、必要な修理依頼を行うことで、早期の復旧を目指しますが、設定した目標復旧時間を満たすため、地方の営業所や工場での代替も考えました。
受注や生産計画の見直しに必要なシステムは全国の工場で利用しているため、サーバをデータセンターへ移転することを検討しました。万が一システムが利用できない場合は手書きによる対応を行います。生産工程では、配管の破損による液漏れ対策として供給ポンプをどのように停止させるか、また、首都圏以外の拠点で代替生産するためにはどんな情報を共有しておく必要があるのかを検討するとともに、簡易発電装置の導入も検討しました。
対象事業 | 塩ビ事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ 本社が半壊し利用不可 ・ 配管の破裂や検査機器の故障 ・ 従業員の負傷 |
予防・低減策 | ・ 施設の耐震補強や機器の固定 ・ 供給ポンプの自動停止装置の設置 ・ サーバのデータセンターへの移設 |
代替策 | ・ 要員の再配置 ・ 受注業務を神戸工場にて代替、生産計画見直しのための納期確認を大阪営業所にて代替 ・ 神戸工場または協力会社での生産 |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
日頃、今回のような危機的な状況を想定しておらず、現状を分析してみると、思いのほか相当な被害を受けることがわかり、根本的な対策が必要になると改めて気付きました。
社内の情報を誰がどこに持っているのか把握していたつもりでしたが、担当者に確認しないとわからないことが多くありました。プロジェクトメンバーは全5回出席が必須とのことで、スケジュール調整は大変でしたが、複数部署のメンバーで議論することにより、業務や経営資源の分析ができ、今後、災害以外の様々な事故が発生した場合でも、臨機応変に対応できる計画が策定できたと思います。
特に今回の被災想定で情報システムが利用できなくなった場合、被災していない静岡工場と神戸工場での生産にも大きな影響があると判明し、システムの及ぼす影響の大きさに驚きました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
たった3ヶ月という短い期間でここまで細かい計画を作成するとは思いませんでした。
全社横断のプロジェクトメンバーが短期間で集中的に議論したからこそ、今回の計画ができあがったのだと思います。今後お客様からBCPに関するアンケートがあっても、自信を持って「当社はここまでやっています」と答えられるようになりました。営業的にもお客様に非常にアピールできるツールができたので、積極的に展開していくつもりです。
これで完成と思わずに、他拠点への展開や演習の継続を行い、本当の実効力を身に付けていきたいと思います。