-事業内容を教えてください。
当社は、金融機関や大手飲料メーカーを主要顧客としたシステム基盤開発及びアプリケーション開発事業を行っています。
システムインテグレーターとしてシステム基盤構築を強みにしています。競合会社が多くある中、当社は小規模ではありますが、金融系において基幹系システム周辺の連携システム等ニッチな分野を担うことで特色を出しております。ATMとの連携やインターネットバンキング開発等多岐に亘るダイレクト系を対象とし、ノウハウを積み重ねてきました。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
東日本大震災の際には大きな被害はありませんでしたが、もしこれが首都圏直下だったらと考えた時、顧客にサービスの提供が続けられるのかと不安にかられました。当社の社員は、本社は主に管理・営業部門の機能を果たしており、技術者は少数の在宅勤務者以外は、すべて顧客先での駐在業務を行っています。そのため有事の際に、人をどう動かすかがサービスの継続に直結するため、安否確認一つとってもうまくできるのか不安な面がありました。
当社の事業が継続することは、顧客のビジネスを止めないことであり、BCPは同業他社に対する競争力になるとも考え、今回本事業に参加いたしました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
BCPの対象として、システム基盤構築事業とアプリケーション開発事業の二つを選択しました。当社の主力事業であり、業務の関連も深く切り離せないためです。
この二つの事業は、当社従業員が都内各所にある金融機関等のデータセンターに常駐して業務を行うため、人員が最重要経営資源です。地震により協力会社の人員も含めて3分の1の人数のみ出社可能、それ以外は負傷入院または交通インフラ途絶による出社困難と想定しました。
発災後、まず本社営業担当者が、顧客先にいる従業員と連絡を取ると同時に、顧客の各現場のキーパーソンと携帯電話で連絡をとり、被災状況や必要要員等の確認を行います。その後、協力会社も含めた人員手配を行い、現場に再配置することで顧客のニーズに応えることとしました。
これを可能とするために、社内と社員自宅に対する棚の固定等の防災対策の教育と安否確認の訓練を繰り返し行うこととしました。また、スキルスタンダード及び従業員の住所と自転車の有無を考慮したマトリックス化したスキルマップを作成し、顧客先業務を取り仕切るチームリーダーが被災した際のいくつかの編成パターンを検討しました。
スキルマップは本社サーバにあり、再配置時に必要となります。そのため、本社サーバの転倒防止策を講じ、スキルマップを更新する際には、バックアップデータを必ずとりなおすことにしました。今後はこのスキルマップを基にして、人材養成を計画的に実施します。
対象事業 | システム基盤構築事業、アプリケーション開発事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ 自宅に居る社員及び外注先人員が負傷入院 ・ 残りの社員の内、一部出社及び常駐先への出社不可能 ・ 本社サーバ2台故障、PCは40%故障、複合機も故障 |
予防・低減策 | ・ 社員への防災教育、社員自宅の防災対策、安否確認訓練の実施 ・ スキルマップに基づく代替人員養成 ・ サーバの転倒防止対策 |
代替策 | ・ 別担当営業又は上司による顧客対応 ・ 再インストール、バックアップデータによるデータ復旧 ・ 緊急時編成チームにて業務代替 |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
プロジェクトの中では、電気が来ない、電車が動かない等の仮定をリアルに実感することはなかなかできませんでした。従業員の技術力が高いというのは裏返すと代替がききにくいとも言えます。当社においても技術は属人化してしまい、共有化ができていません。クライアントからも個人指名で依頼が来ることが多々あります。スキルレベルがそれぞれ異なる社員の編成パターンを作っていくことは難しく、協力会社も含めて代替案を作る際に苦労しました。
社員が30%しか稼働できない場合、納期や品質を含めて優先順位を決める必要がでてきますが、そのためには日頃から顧客と密な情報交換を行う必要性を改めて感じました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
今回の地震を想定したBCP策定は、重要な経営資源が人である当社にとっては、インフルエンザにもある程度応用が効くように思いました。
また、今回の取組で検討した連絡手段やリスクコミュニケーション等の初動対応は、即時の対応で被害を抑えなければならない情報セキュリティ事故においても利用できると思いました。BCPを策定したことで、顧客からの信用が増し、社員からも信頼を得ることができると考えます。
これからBCPを策定するという企業は、実施が確実な範囲で、訓練等の日程を事前に日程を決めてしまい、実行第一に進められることをお勧めします。