-事業内容を教えてください。
当社は、「物流を通して中堅・中小企業の皆様を強力にバックアップ」をモットーに、貨物保管、流通加工、倉庫賃貸等の物流トータルサポートを行っています。物流部門が社内にない中堅・中小企業の物流コストの削減についてのコンサルティングや、物流業務全般のアウトソーシング、在庫管理を実現し、それらを汎用性の高いシステムで管理することで、中小企業の方々にも使いやすいよう利便性を図りご好評をいただいております。
2001年には、ISO9001を取得し、お客様にさらに満足いただける物流サービスの提供を目標にして、日々努力を続けております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
東日本大震災の時は、幸い当社にはほとんど被害がありませんでした。私は、倉庫業青年経営者協議会の会長として発災1カ月後に仙台の同業他社を視察にまいりました。その時に、被災企業から「防災対策は取っていたものの、事業継続計画がなかったために再開までに長期間かかった」との体験談を伺いました。
その後、協会でのセミナーで東京都BCP策定支援事業のことを知り、自分たちの力だけでBCPを策定すると、網羅性のない偏ったものになってしまうという危惧もあり、本事業に参加することにしました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
今回策定したBCPでは、貨物保管、流通加工、入出庫荷役を行う倉庫業を対象にしました。地震により庫内が乱雑化し、一部商品が破損、社員が負傷、業務に不可欠な倉庫管理システムが使用不可となることを想定しました。
まず、発災後は、衛星携帯電話・SNS等を使用して社員の安否確認を行い、その上で業務を継続するため他部署からの緊急応援とパート、アルバイト要員の緊急出勤を依頼します。業務再開に向けて非常用発電機を稼働して照明を確保し、庫内の整理と商品の不良品選定作業をします。商品の破損被害を少しでも軽減するために、ラック、ロールボックス等のキャスター・ストッパーの使用を徹底することを決めました。
また、業務は倉庫管理システムに強く依存しており、システムが稼働しなければ、商品の置き場も配送先もわかりません。そのため、倉庫管理システムのサーバはハウジング・サービスの利用を検討し、堅牢な施設での外部運用に変更することにし、業務を継続します。
対象事業 | 倉庫業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ 従業員4名負傷 ・ 事務所・倉庫内乱雑化、商品の一部破損 ・ サーバ破損により倉庫管理システム使用不可 |
予防・低減策 | ・ 社員自宅での防災対策実施 ・ OA機器類、什器備品類の転倒・落下防止対策 ・ 移動式ラック、ロールボックス等のキャスター・ストッパーの使用 ・ ハウジング・サービス利用によるサーバ運用 |
代替策 | ・ 照明用の非常用発電機・衛星電話の利用 ・ 他部署からの応援、パート・アルバイトの緊急出勤による要員確保 |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
当社の取扱品目は、多品種にわたり、大きさ、形状も様々です。商品の転倒・落下防止策などを行うと、平時の作業効率も低下することが懸念されます。しかし、実際に大地震が起きたときに、被災後の庫内整理を計画通りに進めることを考えると、作業効率とのバランスを考慮しつつ対応していかなくてはならないと感じております。
また、当社は今後、災害時の緊急支援物資の流通拠点として当社倉庫を提供する協定を東京都と締結する予定です。災害時には、行政から食料品の入出要請が入ることが考えられ、緊急性の高い支援物資に関する出入庫には、積極的に対応していきたいと考えています。災害時に不足する人員などを振り分けるためにも、BCPを策定しておくことは、必要不可欠だったと思いました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
検討を通じて、様々な課題を認識でき、それらをプロジェクト・メンバー全員で共有できたことは、とても良かったと思います。今後、別の被災シナリオでBCPを検討することに役立てることができると思いました。
新倉庫の建設予定もあり、今回の成果をぜひ活かしていきたいと思います。社員の間には、BCPに対してまだまだ温度差があると思いますが、これから演習・訓練等を通して、“BCP”が社内の共通語になるようにしていきたいと思います。