－事業内容を教えてください。

損害保険をメインに八王子市を中心とした地域密着型サービスの保険代理店をしております。地域に根差した代理店として、インターネット契約ではできない直接面談を大切にし、八王子市全世帯の約5％のお客様にご契約いただいております。お客様の声を親身になって聞き、その人にとってベストなプランをご提案することし、事故が発生した時には、迅速・丁寧な支払支援業務を行うことで、お客様の信頼を獲得しております。

－今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。

東日本大震災後、被災地の保険代理店では直接的な被害だけではなく、保険金の支払支援業務再開のスピードや補償内容のレベル差が口コミとなって広がり、その後の業績を左右する結果となっています。

当社は、直接的な被害はなかったのですが、計画停電の対象地域となりました。停電時には、電話や保険会社とのオンラインシステムも使用できず、業務が度々中断、停止してしまいました。

「お客様のリスクを低減・転化すること」が安全・安心を掲げている当社の仕事ですが、東日本大震災を経験したことで自社が抱えるリスク、発災後取るべき行動、地域における役割等、これまで深く考えてこなかったことが明確になりました。

想定される首都直下地震が起きれば、大勢のお客様が被害に遭われる可能性があります。災害時にも、迅速に業務を再開し信頼を保ち続けるために、BCP策定に取り組むことにいたしました。

－策定されたBCPの内容を教えてください。

BCP対象事業は保険代理業としました。災害発生直後は、地域一体が被災しており、その緊急対応、あるいは復旧活動に追われて、すぐに保険の新規契約を結ぼうと考える人は少ないことが想定されます。

一方、すでに契約を結んでいるお客様からの問合せ対応を含めた支払支援業務は増大することが予想され、今回、その対応を迅速に行うための緊急時対応体制づくりを中心に検討しました。

まず、問合せに対応する人員を確保するためにも、従業員の安否確認が重要です。その手段として、緊急連絡ルールを決め、衛星携帯電話の購入と安否確認システムの利用を検討しました。

次に、八王子本店の損傷が甚大で業務ができない場合は、被災していない他拠点で業務を継続する方針を立て、業務移管の判断基準、移動手段、パソコン等業務に必要な備品の手配方法などを決めました。

－苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか？

今回のBCP策定では、平時は日々の作業量が均衡している支払支援業務が一挙に増大するという想定をしたため、具体的な対策をイメージするのに苦労しました。

また、策定中に当社自身が基本的な予防策を何もとっていなかったことに気が付きました。棚の転倒によって社員が負傷するリスクや、2階の避難ハシゴを降ろすと1階の正面玄関前に降りてくることになり、1階の避難経路が塞がれてしまうという現状でした。要員確保の観点では、家族が被災することによる従業員の出社も困難となるなど、家族を守ることも重要なファクターになってくることが実感できました。

このような気付きが得られたBCP策定によって、当社は貴重な経験を積むことができたと思います。リスクについてアドバイスをする立場の代理店としては、この経験を踏まえ、BCPの重要性をお客様に伝える取組を始めたいと考えています。そうした活動の積み重ねがお客様の被害低減に役立ち、当社を含めた地域全体が災害に強くなっていくのだと思います。

－BCPを策定した感想をお願いします。

BCPを策定してみて、備えておくべき事がたくさんあると知りました。会社の備蓄や衛星携帯電話の購入にはコストもかかりますが、検討を重ねた結果、必要性があると確信を持てるようになりました。この費用は、災害が発生した際に当社が生き残り、発展していくための投資として考えられるようになりました。

これからは、宝の持ち腐れにならないよう定期的に演習して、安心いちばんの財産としてBCPの実効力を向上させていきたいと思っています。