-事業内容を教えてください。
当社は、昭和41年に施行された流通業務市街地の整備に関する法律に対応して、流通業務団地内に共同的集団化された倉庫業を運営していくために設立した会社で、株主である倉庫業者に倉庫施設を提供することにより経済インフラとしての物流活性化を事業運営の目的としています。
東京圏に4事業所を展開し、安全性と利便性に優れた倉庫施設を提供するとともに、省エネ設備の導入を図り、顧客満足度の高い附帯サービスの充実を図っています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
これまで当社では、昭和56年の新耐震基準以前に竣工した施設について、耐震化工事の実施、あるいは建て替え等の対策を行ってきており、昨年の東日本大震災では幸い当社倉庫施設の損害は軽微で、地震発生日以降もテナント各社は倉庫を利用して事業を行うことが出来ました。
しかし、被災地周辺の被害のみならず物流が止まったことにより社会的に大きな影響がでた当時の経験から、首都直下地震にもテナント様の物流業務に支障が出ないよう倉庫設備を早期復旧して当社の社会的責任を果たしたいと思いました。
また、本社及び事業所間の非常用手段としての無線設備の整備や社員への非常用備品の配布等個別の対応はできる限り行ってきていましたが、事業継続の観点から系統立てた計画が制定されていないため、今回申し込みました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
全社展開を前提としたBCPを検討するために、今回は本社と4事業所の一つ葛西事業所の倉庫施設賃貸事業を対象としました。
震度6強の地震が発生し、テナント倉庫の荷崩れ等による負傷者が発生し、停電によるエレベーター・シャッター使用不可といった事態を想定しました。テナント企業の事業継続が、当社の事業継続につながると考えて、葛西事業所では、当社社員、設備管理者、警備員等の協力で設備点検・復旧・テナント管理業務を中心に検討しました。
まず、倉庫設備に関しては、設備点検チェックリストを作成し、平時から点検訓練を行うことにしました。停電に対しては、予備電源や小型発電機をテナントに貸出し、シャッターの開閉に利用してもらう等の緊急対応手順を取りまとめました。負傷者の対応等は、警備担当者やテナントの防災要員と協力していく事が重要と考えました。また、本社では事業所支援を重要業務として取り上げ検討し、被災状況に応じて資金、応援要員、備蓄などの緊急応援体制をとります。
当社としての有事の対応策が確認できたので、今後、テナント様との協議会、臨海地区の防災会議との連携へとBCPを発展させる計画です。
対象事業 | 倉庫施設賃貸事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ 事業所従業員数名負傷、テナント従業員数十名負傷 ・ エレベーター・シャッター使用不可、エレベーター閉じ込め数名 ・ テナント倉庫荷崩れ発生、垂直搬送機荷物落下 |
予防・低減策 | ・ 安否確認システムの導入 ・ 設備点検チェックリスト・設備復旧マニュアルによる平時からの訓練 ・ テナントを含めた防災体制の再整備 ・ 予備電源・備蓄の増強 |
代替策 | ・ 設備管理者・警備員の全員で協力し設備被災状況と閉じ込め者を確認 ・ 小型発電機を貸出し、テナントシャッターを開閉 ・ 災害時テナント協議会を立ち上げて、負傷者対応等各社相互に協力 ・ 本社による事業所被災状況・復旧状況の把握と要員等の応援 ・ 生産レシピデータの紙出力の利用 |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
品物の保管方法等が異なるテナント様に対して、「防災対策をどこまで立ち入ってお願できるか、有事の際の当社のサービスや責任範囲を限定して良いのか」など迷いましたが、テナントとの協議会を通じて、テナント様と協力して予防策・復旧策を推進することが必要と考えます。
また、既存の設備点検・防災マニュアルや地域防災規定の要求事項を再整理しましたが、有事に対応できるよう見直していきます。これらのことは、今まで事業所単位で対応していましたが、今後は、事業所と本社のリンクを強め、本社サイドでもテナントとの情報交換や擦合せをしていきたいと思います。
-BCPを策定した感想をお願いします。
本社と事業所が一体となったBCPが出来ました。今後は予防策の実施や安全パトロールの充実等でBCPの浸透を図っていきます。今回の検討で自社では解決できない問題もあり、課題もはっきりしました。これをもとに他の事業所を含めた全社的なBCPとするとともに、年間計画を定め、定期的に訓練、計画の見直しを行っていきたいと考えております。BCPは個々の企業のメンバーだけでは取り組みにくいので、東京都の支援事業は多くの企業が望んでいると思います。