-事業内容を教えてください。
当社は、業務変革、システム展開支援、ERP(Enterprise Resource Planning)導入・定着化支援、システム運用改善等のサービスメニューを持ち、企業変革の推進・定着を支援するコンサルティング会社です。
ビジネスアナリストとして、顧客とシステムベンダーとの間に立ち、プロジェクトにおけるコミュニケーションの円滑化を図るとともに、現場を巻き込みながら実効性のある仕組や制度を整備し、現場で共に汗を流すことで、戦略の実行と成果の創出にコミットするコンサルティングスタイルをベースに、主にメンバーが現場に常駐して業務を行っています。
ビジネスアナリストとは、IT等によるソリューションを成功に導くための業務分析・要求分析を行うプロフェッショナルです。顧客の課題を洗い出してITをはじめとするソリューションに橋渡しするのが主な役割で、昨今では、大手のSI企業や大手商社・製造業の顧客より業務変革プロジェクトにおける重要な業務を任されております。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
東日本大震災では、社内にいた役員が安否確認、業務指示等の対応を行いました。しかし、改めて地震の怖さを知ったと同時に、その対応が正しかったのかという疑問が残りました。今まで、有事における対応は主要スタッフの力量に頼っておりましたが、今後の企業規模の拡大に備えて、それを体系化し文書化する作業をしたいと考えていました。そんな折、東京都BCP策定支援事業のことを知り、社員のマネジメント力強化にも役立つと考え、応募いたしました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
業務支援事業では、当社から業務変革を伴うシステムや業務プロセス改善を提案した顧客の現場に社員が常駐してシステムや業務プロセスそのものの運用支援業務を行っています。今回は、この事業のうち、国外取引があるため震災時にも業務プロセスの運用を長期間は止められない特定顧客の業務群を対象にBCPを検討しました。平時においては、顧客施設内のシステムを使って、管理系の10業務をチームを編成して行っていますが、各業務の通常の処理量や納期を考慮した結果、回収、新規ソフトウェア、契約、発注という4業務を優先業務として、有事における復旧手順を検討しました。
顧客先に常駐しているプロジェクトマネージャーは、まず社員の安否確認を行い、その結果を踏まえて顧客と今後の勤務体制について協議し、近隣ホテルの確保といった帰宅困難者への対応を実施します。また、本社では、稼働できる人員や発災後の顧客先の業務量に応じて応援体制を検討します。
現在、部門内での多能工化を進めておりますが、応援に駆けつけた他部門の社員がすぐに業務に入れるよう、各業務のマニュアル整備を進めたいと考えています。
対象事業 | 業務支援事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ プロジェクトチーム内社員が60%出勤困難または不能 ・ 本社他部門開発メンバーの出社不能 ・ プロジェクトマネージャーの出社不能 |
予防・低減策 | ・ 支援を行っている業務のマニュアル整備 ・ プロジェクトチーム内の多能工化 |
代替策 | ・ 別業務またはプロジェクトチーム外の要員による業務の代替 |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
製造業なら損壊に備えて代替機を用意するなどの事前準備がとれますが、当社のようなサービス業では、社員が現場に行けるか行けないかによって復旧時間や復旧の方法が決まる部分が大きく、事前にできることが少ないと痛感しました。
今回、どのような順序で動いていくのかという形がある程度できたと思いますので、今後は別の事業や別の顧客の業務を対象に横展開していくことを視野に入れています。また、今後の策定効果を高めるために、全社的な教育を通して、社員の意識を底上げすることが必要だと考えます。
また、策定の過程では、「このようにします」ということを明文化することの難しさを感じました。自分たちだけで進めていたら、文書の内容が曖昧になってしまったかもしれません。BCPを策定することは企業活動について中長期的に考えることにつながりますので、業務の中核にいる人材がBCPについても積極的に進めていくべきという想いを抱きました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
今回の策定は、深く検討する機会が少なかった当社のリスクマネジメントを日頃の事業活動と違う視点から中長期的に考える機会になりました。コンサルティング会社の経営資源は人であり、地道な取組を通して組織の方向性を決めていきたいと考えます。
当社の事業は社会インフラのように人命に直結する緊急性の高いものではありませんが、特に業務支援系のサービスでは、顧客にとってなくてはならない重要な業務プロセスの一部を担っているケースがあります。だからこそ、業務継続のために当社が何を重視し、何を優先するのかを顧客視点で明確にして、顧客に寄り添う姿勢をしっかりと打ち出せれば、他社との差別化を図ることができる、と改めて認識しました。
BCPを策定することで会社をいつもと異なる物差しで見た結果、当社の事業が顧客においてどのような意味を持つのか、当社としての考え方を改めて整理できたような気がします。