-事業内容を教えてください。
当社は1982年に設立され、データエントリーサービス事業、システム開発サービス事業、アウトソーシングサービス事業を行い、お客様先の事業所と当社の東京本社及び沖縄支社でサービスを提供しています。行政機関や民間の大手・中小企業のお客様には正確で高品質な入力、豊富な経験と知識を活用したアウトソーシングサービスを、また、業種を問わず様々なお客様に情報処理サービスを提供しています。情報セキュリティーマネジメントシステムとプライバシーマークの認定を取得し、誠心誠意をモットーにお客様の立場に立ったサービスを行い、常にお客様の最良のパートナーとなることを目指しています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
お客様先の事業所で仕事をしている従業員が多く、従業員の安全確保と有事の際の的確な行動指針が事業継続に必要と考えていました。また、BCPを策定したお客様から、有事の際に当社の東京本社と沖縄支社の相互バックアップ対策等について問合せがあり、早急に自社のBCPを策定する必要がありました。お客様の情報資産を守り、事業を止めないための対策と仕組みを作りたいと考えました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
データエントリー、アウトソーシング、システム開発の3事業があり、売上比率ではアウトソーシングが大きいのですが、発注元である大手流通業社などの高い納期要求に対して、有事の際の要員確保が困難になると予想されるデータエントリー事業を対象としました。この事業は、多くの従業員がお客様先の事業所で仕事をしているため、従業員の安全確保と安否確認、帰宅困難者対応を重視しました。
有事の際には、お客様のご意向と自社の被災状況を確認した上で入力の生産管理計画を策定し、要員を確保し、IT・システムの復旧後に優先案件から業務を再開する仕組みを策定しました。入力要員は大半が出社困難になる状況を想定し、対策として稼働可能要員の緊急時勤務体制、他拠点からの応援、提携先の活用による対応計画を策定しました。IT・システムは入力機とサーバの損傷を想定しましたが、拠点間の相互バックアップや代替入力機の利用等で対応します。また、ネットワークの使用ができない場合は外部記憶媒体やWiFiを活用することにしました。
被災状況により、「事業所内での対応」か「他の事業所への業務移管」かを判断し、全社で誠心誠意、優先案件に対応をしてまいります。
対象事業 | データエントリーサービス事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ 負傷等により社長が不在 ・ スーパーバイザー負傷、データエントリー要員9割出社困難 ・ 入力機6割使用不可、本社事務所一部使用不可 ・ 入力サーバ、ファイルサーバ使用不可、停電 |
予防・低減策 | ・ 部門長による携帯電話を使用した稼働要員の確認手順の構築 ・ IT機器の耐震防止 ・ 本社サーバの沖縄でのバックアップ |
代替策 | ・ 稼働可能要員の緊急時勤務体制による業務継続 ・ 他拠点要員の応援による代行 ・ 代替入力機の利用、沖縄事業所での業務代行 |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
本社・沖縄・お客様の事業所から拠点リーダーが集まりましたが、日程調整に苦労しました。また、場所ごとに業務の名称や手順が違っていたため整理をし、言葉を共通化するための討議も必要となりました。
お客様の事業所ではお客様のBCPに従うだけでなく、事業所の部門長・従業員が自社BCPに基づいて適切な判断ができるようになってほしいと思います。また今後、全社的・継続的に活動を行っていくためにも、入替わりの発生する事業所の要員に対してBCPの啓蒙・周知を図っていきます。
被災シナリオに沿って復旧策を検討することで、停電後のIT復旧手順を整備しておくことの重要性を改めて認識しました。また、今までベテランが経験した災害時の行動をまとめておくことで、若い人と経験値が共有されることがわかりましたので、今後は若い人への行動指針を作ることにより、責任を細分化し、部門長の負担を減らさなければいけないと考えております。
今回はデータエントリーサービス事業にフォーカスしましたが、将来、全事業・全事業所に広げたいと思います。
-BCPを策定した感想をお願いします。
BCPの検討が進むにつれ、皆の意識が変わり、事業継続への思いを共有できました。
また、通信体制や業務を見直ししたことで当社のBCPの将来像も見えてきました。今後は東京・沖縄間の安全なネットワークの構築、入力帳票のイメージ処理などの業務改善にも取り組んでいきます。
データエントリーサービス事業は他社との厳しいコスト競争にさらされていますが、外国での作業移管はコストを抑えられてもセキュリティ面の不安があります。沖縄で事業を継続できれば、お客様に安心していただけると考えております。BCPを完成させて自社の体制を整え、コストだけでなくBCPで差別化し自社をアピールして行きたいと思います。
他社の方へはBCPは作るべきとお勧めします。管理職の経験値を従業員に伝え、各自が最低限やらなければいけないことを決めておくことで、責任意識も向上します。人材やスキルの分析・整理は人材育成に、経営資源の分析・整理はお客様への営業説明資料としても有効と思います。