-事業内容を教えてください。
当社は、産業廃棄物事業とメンテナンス事業の二本柱で展開しており、産業廃棄物事業では、汚泥や廃油を中心に収集運搬及びリサイクル処理を行い、再生重油等のリサイクル商品を生産しております。
当社の強みはふたつあり、一つ目は収集運搬、タンクメンテナンス、汚泥処理や金属、廃プラ処理まで総合的にサービスできるため、ガソリンスタンド等のニーズにすべて対応することが可能だということです。もう一つは、業界で唯一東京都内に廃油リサイクル処理施設を持っていることで、都内のお客様に対しても、より迅速に高いサービスをご提供できます。また、狭い道路等にも精通していることや、用途や条件に応じた車両を完備している事により、お客様のニーズに幅広く対応する事ができます。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
東日本大震災の際には社内がパニック状態になり、事前の準備が必要だと痛感しました。危機管理のルールをあらかじめ決めておき、きちんと共有することの大切さを全社員が感じました。3月11日の午前中、偶然にも社員が福島第二原発でメンテナンス作業を行っており、幸い地震発生時は帰社途中でしたが、連絡がつかず、緊急時における安否確認の取り決めの必要性も感じました。このような事態に対する対応もあらかじめ考えておきたいと思いました。
オイルリサイクル事業は、危険物が主役の事業です。他の事業にも増してしっかりとした仕組みを持たないと、災害時に社員の安全や会社の存続と共に、お客様への責任を担保できないと考え、BCP策定を決めました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
所属している全国オイルリサイクル共同組合との共同受注事業の重要性を鑑み、今回はオイルリサイクル事業と産業廃棄物事業の中に含まれる廃油回収業務をBCP策定の対象としました。この事業においては、災害発生後もお客様からの依頼に応じて収集運搬作業を行い、中間処理・製品製造の工程を経てお客様へ納入できるよう検討を進めました。共同受注における供給の体制継続のためには、組合事務局が被災した際の組合の代理本部業務も含め、受注処理、緊急納入調整、納入業務をまず立ち上げます。
これらの業務の継続に必須なものは、車両・設備・機械だけでなく、連絡に必要な電話やファックス、電力や道路にまで及びます。今回は、被災により車両・設備・機械の損傷、通信網輻輳による電話とファックスの通話困難、停電や交通規制による道路の通行不能という想定を行い、対策を検討しました。車両・設備・機械等については自社や協力会社で迅速な改修・修理を行い、電話やファックスはEメール等で代替し、停電・道路交通規制に対しては自家発電機の使用と緊急車両標章を入手することで対応することにしました。
対象事業 | オイルリサイクル事業、廃棄物処理事業 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ 車両、設備、機械の損傷 ・ 固定電話・ファックスの7日輻輳・通話困難 ・ 電気の停止、道路交通規制 |
予防・低減策 | ・ 機器類の固定(工場) ・ 地下配管の耐震強化(積み場) ・ 駐車スペースの整理整頓、資材固定 |
代替策 | ・ 自社や協力会社による迅速な改修工事、車両修理 ・ EメールやSNS等を使用したお客様からの緊急連絡等への対応 ・ 自家発電機の使用による電力不足への対応、緊急車両標章の入手 |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
メンバーの時間調整や文書化の作業では、事務局に大きな負担がかかりましたが、BCPは実用性があるものであり、災害時に当社の事業が社会に及ぼす影響が大きいことを考えると、BCP策定に取り組むことに大変意義があったと思います。被災を想定することは難しく、現実的な想定ができたのかはわからない部分もあります。しかし、災害が起こってからでは、様々な問題に対応することは難しいと思います。社員全員の身の安全確保を平時からもっと意識する必要性を感じました。
産業廃棄物事業とメンテナンス事業という複数事業を展開しているため、どちらかの復旧が難しい場合でも、当社が生き残れる可能性はあり、各事業の人員が相互にカバーできることなど、自社の強みにも気付くことができました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
BCPを策定しようかと悩まれている方には、絶対やったほうが良いと言いたいです。社員全員の業務上の安全性を高めることができますし、何よりお客様や社会に対して安心感を提供することができます。
一方で、今後策定したBCPを社内に展開していくに当たり、うまく訓練を続けられるかが不安です。机の下にもぐった後はどの方向に逃げるのか、社内に常駐する社員と外出の多い社員をどう考慮していくべきかといった細かいことも決めておく必要性を感じます。決めたことは、部署ごとに体に染み込むまで訓練をしていきたいです。
災害後は、一刻も早く事業を復旧しなければならない社会的責任を感じています。社員全員がそのような意識を持つことによって、会社全体の意識も高まると思いました。災害後に必ず必要とされる会社としてBCPを全面的にアピールしていきたいと思います。