-事業内容を教えてください。
当社は平成18年、清掃工場のより効率的な運営と余剰電力の販売を目的に、東京二十三区清掃一部事務組合(清掃一組)と東京ガスの共同出資で設立されました。清掃一組は都内に20の清掃工場を所轄していますが、当社は清掃一組の持つ豊富な経験と高い技術力を継承して、5清掃工場の運転管理業務等を受託しており、円滑なごみ処理の遂行により、区民の環境衛生における大きな社会的責任を担っています。また、ごみ焼却によって出る熱エネルギーを利用して発電し、地域の公共施設などに安い価格で販売するために特定規模電気事業者(PPS)として電気販売事業も行っています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
清掃工場を所轄する清掃一組は平成24年4月にBCPを策定していますので、その運転管理業務を受託している当社としても、独自に取り組む必要性があると判断しました。数年前に新型インフルエンザに対するBCPを策定しましたが、全社員にまだ浸透していません。今回は、清掃一組のBCPと整合性をとりながら、自社独自の対応を加えて、全社員に周知徹底するよう進めたいと考えます。地震発災後は上下水道の停止、瓦礫の処理等、東京のごみ処理環境は平時に比べ厳しい状況に置かれることが予想されますが、清掃一組と協同で円滑なごみ処理を行い、区民の環境衛生を守りたいと考えます。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
受託している5つの清掃工場の中でも規模の大きい大田清掃工場の現場と本社事務所を対象にBCPを策定しました。各工場は堅牢で十分な耐震性を備えていますが、被災シナリオは、停電・上下水道停止、配管の破損等による工場の一時停止、サーバの使用不可という厳しい想定をしました。人員については、現場・事務所にて負傷者が発生し、帰宅・出社困難状態になると想定しました。
清掃工場には高熱、薬品、ガス等の危険要素があるため、まず工場内で働く作業者の作業環境の点検と、安全対策を検討しました。
業務の再開に当たっては、発災後、運転要員による迅速な被災状況把握、設備点検を行います。
要員については、稼働可能な人員の勤務時間延長・宿泊等、また他工場からの応援で対応します。破損した工場設備については、清掃一組の指示の下、稼働可能な設備を選定し運転計画を決めます。工場プラントを構成する約18の主要設備の正常稼働、ITの稼働、運転要員の確保、社会インフラ(電気、ガス、上下水道)の復旧等を確認して、工場の運転再開が可能となります。
本社では、5工場の被災状況と運転計画に沿って要員調整、物資の支援を行い、清掃一組の指示に従い早期復旧を図ります。
対象事業 | 清掃工場の運転管理事業 |
---|---|
対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ 運転要員、業務要員、管理者の負傷・帰宅または出社困難 ・ 焼却炉2炉の使用不可、発電タービンの停止、配管破損 ・ 停電、上下水道停止、サーバ使用不可 |
予防・低減策 | ・ 安否確認システムによる要員確保・災害時優先電話の活用 ・ 中央制御室における転倒防止策実施・備蓄品保管・緊急点検用品整備 ・ 災害時行動指針による二次災害防止 |
代替策 | ・ 緊急時要員計画(稼働可能要員による勤務時間延長)による対応 ・ 緊急点検による稼動可能な炉の選定・設備稼働準備 ・ 本社及び工場のIT機器のバックアップシステムの使用 |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
清掃一組のBCPの被災想定は、工場設備の被災は軽微で、発災後も工場設備は稼動可能となっていますが、当社BCPは、これとは異なり、設備の一部破損、停電、上下水道停止等、厳しい被災想定をしました。このため、清掃一組のBCPとの整合性を保ちながら、停電時の対応や火災、高熱や薬品・ガスなどの二次災害の防止策等、広範囲の対応策を検討しました。
策定においてはブレーンストーミングを通して、素朴で意外な発見があることも期待していましたが、各工場の設備が異なるためか、当初想定していたほど活発な意見交換には至らなかった項目もありました。今後は、人事ローテーションを含めた事業所間の交流を強化したいと思います。
また、今回、副所長全員が参加しましたが、副所長の思いを知ることができたので、これからも違うテーマでもそのような機会を設けることで会社の改善につなげていきたいと思います。
-BCPを策定した感想をお願いします。
発災後の事業継続のための対策について検討することができましたが、清掃一組が行う業務を当社社員が担わなければならない局面も考えられるので、今後、「緊急時には誰がどこまで担当するのか」のすり合わせをして役割を明確にしていきたいと考えます。
また、夜間に発災した場合は当社の社員しかいないので、夜間のシナリオの検討も必要になります。
今回は大田工場を取り上げましたが、他の工場でも参照できる共通部分の多いBCPが策定できたと思います。参加メンバーのやる気と自信が見えたことが大きく、本社や各工場での周知訓練を通して当社のBCPを定着させたいと思います。