-事業内容を教えてください。
当社の主な事業は、障害のある方に対する就労支援事業と教育事業です。
就労支援事業では、就職を目指す障害のある方々に対し、実践的なパソコン訓練などにより様々なスキルを培い、就職を支援します。教育事業では、発達障害のあるお子様を対象に、療育、学習指導、ソーシャルスキルトレーニング等、自立に向けたサービスを提供しています。
就労支援事業では札幌から沖縄まで35か所、教育事業では東京・神奈川など11か所と、全国に拠点展開をしています(2012年9月現在)。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
東日本大震災では、電話やネットの情報ラインが途絶えたため、仙台の拠点における安否情報が本社に入らず、非常に困りました。拠点でもどうしたら良いのかわからない状態で、例えば、避難場所に避難した後、「暖かい建物に戻りたい」という要望が利用者の皆様から上がっても、建物の安全性をどのように確認するのか、このあたりに苦慮しました。
社会的な弱者を対象とする事業の特性上、災害時にお客様の安全を確保することは最低限必要であり、今回の機会を活かしてBCP策定に取り組むことにしました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
今回は教育事業の中でも就学前のお子様に療育等発達の支援を行う「Leafジュニア」を対象としました。また、業務の特性から、5名程度のスタッフで最大15名のお子様をどうやって安全に避難させるかが大きなテーマになりますので、地震発生時にお子様を安全に保護者にお引渡しするまでの初動対応にあくまでも重点を置き、事業再開のための施策については今後の課題とすることにしました。社会インフラが復旧し、スタッフがそろえば、日数がかかっても事業再開そのものに大きな障害はないと考えています。
初動対応におけるお子様と保護者の安全確保については、安全な場所の明確化、パニックになったお子様への対応、スタッフの緊急時の役割分担などがまずは気になる点でした。次に、拙速に建物から出て交通事故などの二次被害に遭わないよう、一旦は建物に留まった方が良いのか、直ちに避難した方が良いのかといった判断基準などを検討し、避難後の保護者との連絡手段や、お子様を預かるセンターでの常備品も詳細に検討し、整理しました。
対象事業 | 教育事業のLeafジュニア事業(発達が気になるお子様への療育・学習支援サービス) |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ 棚やロッカーが転倒し、けが人が発生、一部の児童はパニックになる。 ・ 子供と付添保護者の多くが帰宅困難となり、一部の保護者は子供を迎えに来ることができず、連絡も取れない状態となる。 ・ 社員も多くが帰宅困難となる。 |
予防・低減策 | ・ 建物は1981年6月以降の新耐震基準に基づいて建築された建物を選択する。 ・ 棚やロッカーなどを固定する。 ・ 月1回の避難訓練を実施する。 |
代替策 | ・ 帰宅困難となった際に必要となる水、食料等の物資を備蓄する。 ・ 保護者が迎えに来ることができない場合、事前に定めた引受人に引き渡す。 ・ 建物が使用不可の場合、代替建物を利用する。 |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
災害発生時の状況がイメージしにくく、会社としてどこまで決めるべきかと悩んだことや、新たに気付いたことがたくさんありました。例えば、緊急時にはお子様に落ち着いてもらうためにお菓子やオモチャが必要になることや、避難時にお子様を見失わないよう、場合によってはロープなどで体をつなぎとめた方がいいケースがあることもわかりました。お子様を良く理解している現場メンバーが議論に入ったことで様々なことがわかり、いろいろな角度から意見を言える人を集めることの重要性を改めて認識しました。
-BCPを策定した感想をお願いします。
「事業継続計画」という、会社を見るための新たな観点を得られ、経営的に大変勉強になりました。また、本社として支援現場の実情をこれまで以上に良く知る機会にもなり、改めて、当社の社員がお客様のことを自分のことのように良く考えていることがわかって大変うれしく思いました。0から1を作ることは1から10を作ることよりきわめて大変と言われますが、BCP策定においても同じだと実感しました。