-事業内容を教えてください。
当組合は、1986年2月設立の全国再生砿油連合会を前身とし、2001年6月に設立されました。全国7支部44社の組合員で構成され、資源エネルギー庁の認可を受ける業界唯一の団体であり、オイルリサイクルにおける廃油回収・精製・再々重油の納入という最終プロセスの活動を使命として担っています。主に再生重油等の共同調達と納入、再生重油等の原料の共同調達と斡旋を柱に、組合員の機器・事務用品の共同購買、経営・技術の向上を図る教育・情報提供、そして広報活動等の諸事業を進めています。
-今回BCP策定に取り組まれた理由を教えてください。
東日本大震災で被災しながらも早期に事業復旧を果たした同業者、オイルプラントナトリのBCPの取組を知り、同社に直接話も伺って、組合員へのBCPの啓蒙の必要性を痛感しました。
組合員は中小企業が多数を占め、危機管理のルール作りが組織的にできていない会員もいます。そこでまず共同受注事業を行っている関東支部の中で、組合と東京都内に本社のある組合員2社(株式会社朝田商会、株式会社太陽油化)とでBCPを作ろうということになりました。実際に、関東支部組合員に対して組合主催で災害シミュレーションを実施したところ、何もできていないことが明らかになり、各社BCPの必要性を実感して今回の参加に至りました。
-策定されたBCPの内容を教えてください。
対象事業は、顧客からの要求と組合員にとっての必要性がともに高い再生重油の共同受注事業です。
重要業務は、共同受注顧客への再生重油納入を最優先で行うための受注処理・緊急時納入調整・納入です。この業務に必須の経営資源は、受注処理及び緊急時納入調整における交渉等を行う事務局長、納入計画の見直しと緊急時調整作業に必要な顧客情報・納入予定表・組合員連絡先一覧、そして再生重油を実際に納入する納入組合員です。
BCP策定にあたっては、事務局長の勤務困難、電力停止またはPC破損による電子データの利用不可、そして納入組合員の被災という想定のもとに対策を検討しました。事務局長の勤務困難に対しては、あらかじめ決めた代行順位にしたがって組合員が代理本部を立ち上げます。電子データの利用不可に対しては紙情報の利用で代替し、納入組合員の被災に対しては関東支部内または他支部の組合員が納入を代行します。
対象事業 | 再生重油の共同受注 |
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対象リスク | 東京湾北部地震 |
被災シナリオ | ・ 事務局長の勤務困難 ・ 顧客情報、納入予定、組合員連絡先の電子データの利用不可 ・ 納入組合員の被災 |
予防・低減策 | ・ 什器の固定・窓ガラスの破損防止対策 ・ PC内アプリ、データのノートPCへのバックアップ ・ 外部記憶装置へのデータバックアップ |
代替策 | ・ 組合員による代理本部の立ち上げ(組合事務局の代行) ・ 顧客情報等について紙情報の利用 ・ 関東支部内又は他支部の組合員による代替納入 |
-苦労されたポイントや、新たな気付きはありましたか?
通常業務と並行しての取組でしたので、時間を確保するのが大変でしたが、的確な支援をいただいたおかげで苦労はまったくありませんでした。ここ3、4年どう取り組むべきか悩んでいましたので、地震想定に沿ったBCPを策定でき、非常に助かりました。また、組合員(株式会社朝田商会、株式会社太陽油化)の策定も同時並行で行われ、合同で演習も実施するなど、調整もスムーズにできました。
想定外のことが発生したら、現状では対応できないことなど、気付いたことが多くありました。例えば、電車が止まる、交通機関が止まる、電力が止まるという事態が起こったらどうするか、ということは、普段から対応を考えて準備しておかないと、いざという時に何もできないと痛感しました。
共同受注についても、組合内の協力関係が元々良好なので、災害時においてもある程度対応できるのではないかというイメージを持っていましたが、被災状況を具体的に想定し、するべきことをはっきりさせてみると、BCPを作っておかないと円滑に動けないことが良くわかりました。また、BCPに共同で取り組んだことで、BCPに対する組合員の意識がさらに高まり、組合としての連帯感もさらに強まったと思います。
-BCPを策定した感想をお願いします。
東日本大震災を経験し、BCPという言葉が当たり前になりつつある環境の中で、組合としては本当に良いタイミングで取り組むことができてありがたく思っております。BCPの考え方や策定の流れを理解し、継続していく素地ができたと思いますので、組合員に対して自信を持ってBCPを推奨していけます。BCPを策定することで対策が不十分なところが明確になりますし、地震だけではなく他の災害やリスクにも対応できる危機対応の体制も作れますので、一種の安心感が持てると思っています。今後は当組合の事業継続に対する取組をお客様に積極的にアピールし、組合の存在価値をより高めていきたいと思っております。