エグゼクティブコンサルタント
なぜか出張している久野です。今回はアメリカからお送りします。
今回のコラムは、この出張中に起きたちょっとした事件から、
インシデント管理と問題管理について考えたいと思います。
先日成田を出発し、中継地に到着すると次の飛行機まで乗り継ぎ時間が
45分しかありませんでした。中継地では、入国審査、税関、
荷物のピックアップ、そして電車に乗ってターミナルを移動、
最後に手荷物チェックのゲートを通るというプロセスがあります。
さすがに「乗り遅れた」と思いましたが、幸運にも次のフライトが45分遅れで
出発するということで、間一髪、間に合うことができました。
これは幸先良いスタートだと思い、安心したのか飛行機に乗り込んで
すぐに眠ってしまいました。
しかし、目的地へ到着し、荷物をボーっと待っていると、
いつになっても私のスーツケースが回ってきません。
15分ほど待っていると、荷物係の方が、「これで終わり」と叫びました。
航空会社のカウンターに行き、状況を確認すると、中継時間がなかったので
荷物は次のフライトで到着するとのこと。荷物を受け取る手順を伺うと、
今夜中にホテル(のカウンター)に届けてくれるとのことでした。
手続き自体は簡潔で、用紙に必要事項を記入し3分程度で終わりました。
その晩、荷物がホテルに到着したのは、割と遅い時間でしたがスムーズに
受け取ることができ、次の日に支障を来たすこともありませんでした。
さてここからは、荷物が来ないという今回の件を参考に、ITガバナンスにおいて
重要な概念であるインシデント管理と問題管理について考えたいと思います。
まず、インシデント管理と問題管理の違いについて定義しましょう。
インシデント管理とは、顧客の不満を迅速に解決するためのプロセスです。
これを、荷物が届かなかったという体験談を例にすると、
- 荷物が到着地に来ない(インシデント発見)
- 荷物が来ないことをスタッフに報告し、手続き(インシデント報告と記録)
- 荷物の到着後、顧客の宿泊先へ配送(インシデント対応)
- 配送確認をし、当インシデント案件をクローズ(クロージング)
このようにインシデントを発見してから解決するまでの一連の流れを
インシデント管理と呼びます。
このプロセスに対して問題管理とは、何を示すのでしょうか。
問題管理とは、インシデントの根本原因を明確にし、解決に導くプロセスです。
また上記の件を例に取ると、
- インシデントの記録を収集し分類(記録の収集・分類)
- 分類したインシデントの記録から根本原因の調査し、
飛行機の乗り継ぎ時間が短いことを確認(調査・診断) - 解決手段として、飛行機の予約時に荷物をチェックインする顧客に対しては、
乗り継ぎ時間を最低1時間半以上に設定するようシステムを変更(是正処置) - システム変更後、当問題案件をクローズ(クロージング)
記録しているインシデントを収集・分類し、調査した結果、
根本から解決するという流れが問題管理となります。
インシデント管理と問題管理にはこのような違いがあります。
実際にこの二つの管理体系を構築するときにポイントとなるのが、
インシデントの発見時にどんな記録を残すべきかということです。
インシデントを記録する際に、その後の問題管理で調査・分析できるような
項目を盛り込まないと一つ一つのインシデントに対する根本からの
問題解決が難しくなります。
また情報をきちんと記録させるには、現場への教育を徹底し、
運用されていることを確認する監査の仕組みが必要になります。
私にとって、荷物が到着地に来なかったのは、今回が初めてではなく、
5年ほど前にも1度経験しています。その時には、荷物が次の日到着し、
空港へ取りに行ったことを覚えております。あれから、航空会社の対応が
知らぬ間に改善されており、荷物を滞在先へ届けてくれるようになりました。
記録されたインシデントから、インシデント対応を改善する。
また根本原因を調査し、サービスの質を向上させる。
インシデントの発生はそれだけを見るとネガティブな要素ですが、
きちんと整理し、分析することで、顧客の満足度を大きく上げることが
可能となります。
インシデントの管理が煩雑で悩んでいる方や、根本からの解決を望んでいる方、
いつでもお手伝い致しますので、どうぞお気軽にご相談ください。