コンサルタントコラム

ガラパゴス化は悪か

2010年10月27日

執行役員 兼 プリンシパルコンサルタント

内海 良

執行役員 兼 プリンシパルコンサルタント 内海 良
こんにちは。ニュートン・コンサルティングの内海です。

最近海外出張をする機会が多く、改めて海外と日本の違いを実感しています。

言語や文化、通貨はもちろんのこと、距離や重量、気温の単位(それぞれマイルやストーン、摂氏ではなく華氏)など、訪問する国によって大きく異なります。おのずと現地で利用できる製品やサービスも日本のそれとはだいぶ違います。

日本の製品が高機能であるのにグローバルマーケットで需要がなく売れない現象をガラパゴス化と呼んで久しいですが、やはり海外では日本独自の携帯は店頭ではみかけることがありません。また携帯と似たような例で挙げられるのがカーナビです。出張先ではよくレンタカーを利用するのですが、海外のカーナビは日本のような多機能とは違い、至ってシンプル。それこそ道案内する機能しかありません。欧州・米国どちらでも見かけるものはこのシンプルなものばかりで、これもガラパゴス化の一つと呼べるものでしょう。

世間一般で語られるガラパゴス化という言葉には軽い嘲笑や揶揄が含まれているようなネガティブな印象があります。ただ実情は果たしてそうでしょうか。

ということで今回はガラパゴス化について少し掘り下げてみたいと思います。

そもそもガラパゴスとは、エクアドル本土より西約900kmにある絶海の孤島の名称です。そこは独自に進化した動植物たちが数多く生息している地で、ダーウィンが進化論を書くきっかけになったことでも有名です。その理論は「強いものでも賢いものでもなく、環境に適応できるものが生き残る」というものでした。この理論が当てはまるのならば、高機能携帯電話を生み出す日本の環境が特異だということになります。

日本の環境を改めて考えてみると、うなずける部分が多々あります。日本の社会機能自体が世界で稀にみる高機能だからです。大抵の必要な物が揃い、宅急便が出せて、注文した本が受け取れて、クリーニングも出せる、そんなコンビニが24時間いたるところにオープンしている国は他にありません。電車や地下鉄も分刻みで正確に来るような日本の社会自体が、世界からみれば突出してガラパゴス化していると言えるのかもしれません。そこから生まれた製品やサービスであれば、世界の需要からかけ離れていても不思議ではありません。

とはいえトヨタの車が世界中で走り、世界中の子供たちがNintendoで遊んでいることを日本の高い技術の上に築かれた結果だとするなら、ガラパゴス化と呼ばれた製品がいずれ世界を席巻する日もあるのではないか、という考え方もできると思います。そう考えれば最初はガラパゴス化と呼ばれようが悪いものではないと思うのです。製品自体は優れているのですから、課題はマーケティングも含め国際競争力をつけることに尽きるのではないでしょうか。

国際競争力をつけるという意味では、先日ユニクロや楽天が社内の公用語を英語にするという方針を打ち出したのもその一つでしょう。大きくメディアで取り上げられましたので、楽天 三木谷社長の英語での決算報告をニュースで目にした方も多いのはないでしょうか。これも目先のデメリットには目をつぶり大局をみつめたまさに脱ガラパゴスへの第一歩だと思います。最初は社内外からの批判もあるでしょう。ですがダーウィンも進化論の発表の際には、当時の宗教観を否定することになるため厳しい批判を浴びたと訊きます。今後ユニクロや楽天がグローバルマーケットという環境のなかでどのように「進化」していくのか、興味深く見守りたいと思っています。

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