コンサルタントコラム

「ぶっつけ本番では動きません」

2010年06月09日

シニアコンサルタント

久野 陽一郎

シニアコンサルタント 久野 陽一郎
みなさん、こんにちは。
世界最大級のイベント、FIFAワールドカップの開催が間近に迫っておりますが、
今行われている米国プロバスケットボール(NBA)のファイナル、
レイカーズ対セルティックス戦が気になってしょうがない久野です。
今年はレイカーズが4-2でシリーズを制すると予想しているのですが、
結果がとても楽しみです。

さて、今回のコラムはスポーツイベントにちなんで、
エクササイズについてお話ししたいと思います。

ここでいうエクササイズとは、体を動かして健康的な日々を過ごそう
ということではなくて、訓練や演習をおこなうことによりマネジメントシステムの
ルールや計画がちゃんと使えるかを検証する方のエクササイズです。

なぜこんな話をするかというと、最近お客様からBCP(事業継続計画)を作ったが
それが本当に機能するか確かめたいとの声を多くお聞きするからです。
何か問題が発生した際に、ぶっつけ本番で対応するのは確かに不安です。

そんな事態を回避するにはエクササイズが非常に有効です。
エクササイズとは、地震などの災害やシステムトラブルのような事故など、
問題が起きた場合のシナリオを想定し、BCPで定めた手順で
業務の復旧、継続ができるかを確認する作業です。
スポーツでも監督が考えるコンセプトやゲームプランが機能するか、
普段の反復練習や練習試合を通して確認していきます。
だからこそいざ本番になった時に自信を持って臨めるのです。
BCPでも同じです。

エクササイズをやってみて実際にうまくいくかを確認してみると、
実効性を確認するだけでなく、参加者から出てくる色々な指摘を得ることにより、
さらにマネジメントシステムの実効性を高めることも可能です。

ということで本コラムでは、マネジメントシステムの品質向上に有効な
検証の仕組みについて、BCPのエクササイズを通して考えたいと思います。

BCPのエクササイズを行うにあたってポイントとなるのは、
  • 範囲
  • 目的
  • シナリオ
  • 形式
です。一つずつみてみましょう。

■ 範囲

範囲とはエクササイズを実施する対象を指します。
組織全体にするのか、1事業拠点にするのか、関連部署だけにするのかなど、
その時々の状況に合わせて決定します。
エクササイズの経験が少ないうちは、小さな組織単位でおこない、
習熟度をあげていくとうまくいきます。

対象となる組織が決定したら、対象となるリソースも特定します。
具体的には「人」、「サイト(施設や設備)」「情報」「技術」「供給(サプライヤー)」です。
例えば「人」は社内だけにするのか、社外も含むのかといった所から、
「情報・技術」で言えばバックアップシステムへの切り替えも含むのかなどです。
そうした観点で対象範囲をまずは決定しましょう。

■ 目的

次に、エクササイズの目的を明確にします。
それによってシナリオや形式の選択が大きく変わってくるからです。

エクササイズには、「テスト」、「訓練(ドリル)」、「演習」の3段階の目的があります。
「テスト」は、策定したルールや文書が有効に機能するかの
合否を判定するためにおこなう、初期段階のエクササイズです。
策定したとおり、一連の手順が実行できるのかを検証します。
「訓練(ドリル)」は、テストで手順を検証したBCPの習熟度を向上させるために
反復練習として使用されるエクササイズ手法です。
最後に「演習」は、応用問題です。複雑なシナリオを想定することで、
手順が明記されていない事象に対しても参加者が対応できるかなどを検証することによりBCPの有効性の検証と改善点の洗い出しを行います。
また、この3つの目的を組み合わせることも可能です。

■ シナリオ

BCPのエクササイズは何かインシデントが発生し、それにより問題が起こることを
想定しておこないます。これを「シナリオ」と呼びます。
シナリオを検討する上で、重要となってくるのが原因事象と結果事象です。
原因事象(インシデント)として想定されるのは、地震や水害、
パンデミックなどが上げられます。
結果事象(問題)は、原因事象の発生によって会社へのアクセスができない、
社員の出勤率が大幅に低下する、などが考えられます。
昨年でしたら、パンデミックにより社員の出勤率が低下する
といったことが実際にありました。
身近に起こりそうなことからシナリオを考えていくと、
具体的にイメージできエクササイズがより実践的になっていくでしょう。

■ 形式

エクササイズの形式は、小規模なものから大規模なものまであります。
代表的なものを上げてみました。

・机上
机上で整合性をレビュー。実施活動をイメージしながら有効性を検証。
小規模で実施でき、実業への影響が少ない

・シミュレーション
実際の被害想定などを基にBCPを発動する状況を前提として、
必要情報の収集を行い、それに対応できるかを検証する。参加要員は少なくない

・実働
実際の設備などを用いて、復旧作業などを行い、手順を検証する。
実際の手順を経験できるが、規模や参加要員は上記3つに比べて大きくなる

形式を選択する際は、BCPの習熟度や予算・時間などの要因を検討します。
策定したばかりのBCPについては、まず事務局や主要メンバーによる机上確認を、習熟度が向上したら次のステップに進むのが現実的です。

範囲を決め、目的を明確にする。シナリオを策定し形式を決める。
これら4つのポイントをきっちり決めると、実践的なエクササイズを実施できます。
実践的に行ったエクササイズの結果、BCP策定時には想定しなかった指摘が
あがることが多々あります。
そういった指摘事項を改善をすることで、より実効性の高いBCPとなります。

検証をしていないと、実際にBCPを発動することになった場合、
機能するかどうかをぶっつけ本番で確認することになります。
不測の事態が起きたときに、事業を継続するために策定するBCP。
策定しただけでは、BCM(事業継続マネジメント)とは言えません。
有効性を検証する手段として、エクササイズは最も効果的です。

エクササイズを通して十分な検証をし、そこから改善を行う。
それが継続的に廻りだして、初めて事業継続のマネジメントシステム
(PDCAサイクル)を構築したと言えるのです。