コンサルタントコラム

「小さなリスクにこそご注意を」

2010年08月18日

コンサルタント

昆 正和

東京都BCP策定支援事業プロジェクトに参加しております昆です。

企業のリスクマネジメントがテーマとなっている本コラムですが、リスクとどう向き合うかは私たち一人一人の意識の持ち方の問題でもあると思うので、今回はそうした側面の話から入りたいと思います。

私はよく山登りに出かけます。先日も仲間と恒例の富士登山に行ってきたのですが、今回はまさに「リスクに対する意識の持ち方」を考えさせられる小さな経験をしました。

富士山は、例年なら混雑を避けて7月上旬に登ることが多いのですが、今回は「最近は登山者も分散する傾向があってそんなに混まないよねえ」などと勝手な思い込みをして夏真っ盛りの8月上旬の土曜日に決行することに。

吉田口五合目から八合目までは順調でしたが、そこから先が悲劇の始まりでした。山小屋で数時間仮眠をとった後、外に出たら登山道が人であふれ返って一歩も進みません。おかげで頂上で見るはずのご来光を八合目付近で拝むことに。頂上へは予定より4時間遅れで到着し、下山時には真正面から照りつける太陽のギラギラ光線にげんなりしながら須走口へと向かいました。

これはまあ、取り立てて「リスク」と呼べるような出来事ではありませんが、ちょっとした油断あるいは長年守ってきた方針を気まぐれに変更したために、山の大渋滞という災いに遭遇した良い例だと思うのです。

会社が日々の活動の中でさまざまなリスクにさらされ、それが顕在化して影響が出るまでの経緯というのは、やはり何気ない小さな出来事や意識の持ち方(油断や気まぐれ、自己満足といったもの)がきっかけになっていることが多いのではないでしょうか。

例えばこんなケース。
顧客に大切な荷物を送る際、いつもは宅急便を使って翌日午前中に届けるのに、ある時「明日は週末だから急ぐ必要はないな」と判断し、日数のかかるメール便を使ったとします。しかし顧客の方ではいつも通り翌日午前中届くものと期待して待っている。ここに送り手と受け手の思い込みのギャップが生じ、下手をするとクレームにつながったり信用を落とすことにもなりかねない。

テレビで事業統合が話題になることもあります。A社とB社が事業統合して国内最大規模の会社になるとか。
このケースでは事業統合による市場占有率や競争力の増大といった手なメリットだけが強調されて、デメリットや負の影響は見過ごされがちになります。経営陣は統合メリットのことで胸がいっぱいで他を顧みる気がしないという状態ですね。この結果、いざ統合後の事業を開始してみたら、予想に反して業務が円滑に回らなかったり顧客に迷惑がかかってイメージダウンにつながったりして、相対的にメリットを損ねたり、予想外の損失が出たりすることも考えられるわけです。

したがって、日々の業務のなかでリスクを考え、可能な範囲で管理していこうとするなら、インパクトの大きいリスクを検討するのはもちろんのことですが、気まぐれな方針変更や木を見て森を見ず的な判断、ミスや手違いといった言葉で片付けてしまいそうな小さな出来事も、リスクを顕在化させる芽になり得ることを心の隅に置いておく。

そんなことが必要なのでは、と考えています。