コンサルタントコラム

クラウドコンピューティングは、事業継続の救世主になり得るか?

2010年11月10日

コンサルタント

小山 隆

東京都BCP策定支援プロジェクトに参加しております小山と申します。

昨今、「クラウドコンピューティング」が一種のブームになっている感があり、事業継続にとっても救世主的な役割を果たすという考え方が広まりつつありますが、今回はこの考え方を検証してみたいと思います。

クラウドコンピューティングは、何らかのコンピューティング資源(ソフトウェア、ハードウェア、処理性能、記憶領域、ファイル、データなど)をネットワークを通じて利用する形態の総称として用いられ、ソフトウェアパッケージを利用するSaaS、アプリケーション実行用のプラットフォームを利用するPaaS、ハードウェアやインフラを利用するHaaS、IaaS等があります。

利用する企業は、これらの資源を自社で保有および管理しないため、自社が地震や火災等で被災しても、これらの資源を利用する際に使用する末端のノードやネットワークが復旧すれば利用可能になるので、自社で保有および管理していた場合と比較して、予防策や代替策が非常に簡単になり、結果として事業継続力の向上に多大な貢献をすることになります。ただし、これはあくまでも自社側のことで、クラウドコンピューティングサービスを提供しているプロバイダー側にどのような事業継続力があるかで、利用する企業の事業継続力も大きく左右されてきます。

それでは、この事業継続力とはどのようなものかをIaaSを例に少し具体的に見ていきたいと思います。

IaaSは、プロバイダーがハードウェアやOS等のインフラとそれを利用するための仮想化ツールを提供するもので、利用者は、仮想化ツールを用いて要件にあったインフラを構築し、利用者が作成したアプリケーションやデータをネットワーク経由で構築したインフラ上に送り込み稼動させます。利用者は、これらを利用する時に、プロバイダーの提供するインフラがどこに、どのような状態で設置されているかを知る必要は全くありませんが、事業継続上は大変気になるところです。利用者がインフラを保有していれば、その設置状況や管理状態は明確に把握することができますが、クラウドコンピューティングの場合は、この部分はプロバイダーに任せる形になりますので、利用者側の運用負荷は軽減される一方で、ネットワークの向こうで何が起こっているかはほとんど把握できない状態になります。

ここでは話を進める上で、プロバイダーが提供しているインフラは、他の企業が運営するデータセンターに場所を借りて設置してある状態を想定してみます。

このような状況において以下のような事象が発生した場合、クラウドコンピューティングサービスを提供しているプロバイダーはどのように対応してくれるのでしょうか?

1.利用しているインフラが故障もしくは破損した。
2.アプリケーションが突然停止したが、原因がインフラにあるのかアプリケーションにあるのかはっきりしない。
3.地震でデータセンターへの電力供給が停止した。

1.の場合は、プロバイダーがどのような代替の仕組みを用意しているかを明確にしておく必要があります。代替の仕組み次第では、復旧までに相当時間がかかる場合やアプリケーションやデータの損失等も発生する可能性があります。

2.の場合は、プロバイダーがどの程度原因究明にかかわってくれるか、担当技術者のレベルはどの程度か、担当技術者がデータセンターに常駐しているか等を明確にしておく必要があります。対応体制次第では、復旧までに相当時間がかかる場合があります。

3.の場合は、データセンターが持つ自家発電の容量がどのくらいで、それがどのくらい持続するかを明確にしておく必要があります。これらの情報はプロバイダーから入手することになりますが、プロバイダーが予めこれらの情報をデータセンターを運営している企業から入手して対策を考えているかどうかも、事業継続面では重要なチェックポイントになります。

ここであげた例は、IaaSを利用した場合の事業継続面での脆弱性を検討する上でのほんの一例にすぎませんが、これらの例でもお解かりのように、「クラウドコンピューティングは、事業継続にとって救世主になり得るか」という問いかけに対しては、クラウドコンピューティングサービスを提供するプロバイダーの事業継続に対する姿勢次第というところがありそうです。

なお、PaaSやSaaSにおいては、プロバイダー自体がIaaSやPaaSを利用している場合があるので、これらのプロバイダーが利用している、もしくは提供しているサービスの脆弱性をどの程度明確に把握してその対応策をとっているかがサービスを利用する上でのチェックポイントになりそうです。