コンサルタントコラム

学習できる組織とできない組織の違い

2010年12月22日

コンサルタント

森 孝夫

はじめまして。私、森孝夫と申します。 この度、ニュートン・コンサルティングに入社いたしました。

いままで幾つか会社を移り歩いてきて面白かったのは、「各組織(会社どころか課くらいの単位でも)は、隣接する組織とまったく違う文化(ものの見方ややり方)が出来上がっている」ということでした。しかも興味深いことに、自分たちの文化が周囲とまったく違うということに気がついていないケースが多いのです。

こういう「自然に出来上がっている文化」で上手く行くうちはいいのですが、いつも上手くいくとは限りません。周囲の環境や活動対象が変化すれば、意識的に「新しい文化」を「組織として学習」せざるを得ないのです。

先日読んだ軍事関係の書籍に「学習する組織」に関して興味深い考察がありましたのでご紹介します。この書籍では、マレーとベトナムに侵攻した英米の陸軍が現地の反政府勢力(彼らにとっての新しい文化)に対し展開した対内乱戦(counterinsurgency)を、どのようにおこない、対応していったのかを比較しています。

書籍: Learning To Eat Soup With A Knife: Counterinsurgency Lessons From Malaya And Vietnam

マレーでの英陸軍の活動というのは、余り有名ではないので少し説明が必要かと思います。英陸軍は機敏に戦略の転換を図り、結果として現地ゲリラの切り崩しに成功するのです。

当時衰えつつあった第二次大戦後の英国にとって、東南アジアの植民地を支配下に置く余裕はもうありません。独立は不可避となったマレーの新国家を西側陣営下に留めることが目標になり、そのために共産化を狙うゲリラのテロと戦う必要がありました。

英陸軍はかなりの窮地に陥った後に、戦略を転換し軍-警察-政治の連携による住民保護と敵ゲリラの切り崩しに成功します。この辺りで面白いのは、英国側が現場将兵や現地司令部そしてロンドンの間で緊密に連携をとっていくところです。陸軍だけでなく、組織の垣根をかなり自由に乗り越えて新たな戦略をつくっていきます。

ベトナムの方は有名なので、余り説明の必要はないかと思います。米陸軍は軍事力で無理押ししてボロボロになっていきました。

ただ、興味深いのは当時、米国側から「軍事力一辺倒では、この戦争には勝てない」という声が結構出ていたということでした。ベトナムで活動していた海兵隊やCIAのみならず、米陸軍の現場将兵からも指摘されていたそうです。その上、当時の大統領のJ.F.ケネディからも、軍事力頼みからの転換を指摘されていたというのは驚きです。

英米の間で明暗を分けたものは何か?

ネイグルの本では色々な理由が述べられていますが、私の感想としては「思い込みに呪縛されていたかどうか?」だと思います。

米陸軍の場合、第二次大戦での勝利の記憶と共に朝鮮戦争での苦闘の記憶から、「東側の大戦力を正規戦で打ち破る」ことが呪縛になっていたのです。過去の成功体験による驕りが未来への障害になるというのは、よく語られることです。しかし過去の失敗から「正しい教訓」が得られなかった場合、驕りと同様の呪縛をもたらす訳です。

ネイグルの本の中には、こういう記述があります。

「道具箱に金槌しかなければ、全ての問題は釘に見えてくる」

このような状況はふつうの会社組織でも、起こりかねないことです。思い込みだけで動き、現場の部下の意見にまったく取り合わないどころか、上司からの忠告すら無視して暴走する。「思い込みに呪縛されない」ということが重要です。

しかし「思い込み」から自由になることは(少なくとも永遠には)不可能でしょう。組織外の人間から見るならば、ある組織の「異常な思い込み」は比較的容易に判るかもしれません。しかし、その事を指摘し受け入れさせるには、「組織内の人間」にならなければならないケースがほとんどです。そして組織内の人間になり時間が経てば、「思い込み」にとらわれていくことが多いのです。

組織が人事異動などで人員の新陳代謝を図る理由の一つは、「思い込みからの解放」なのかもしれません。ということで、読者の方の部署に新人が配属されたときなど、是非「(自分にとって当たり前にしか見えない)この組織は、どのように見えるか」について聴いてみてください。意外な発見があるかもしれません。

ネイグルの本そのものに興味を持たれたなら、是非お読みください。期待をはずすことはないと思います。