コンサルタントコラム

備えあれば憂いなしと申しますが・・・危うし、避難経路に潜む罠

2011年08月03日

コンサルタント

英 由佳

みなさま、こんにちは。英 由佳です。

本年も東京都BCP策定支援事業に携わらせて頂いておりますが、3月11日の東日本大震災、そして各地の大水害に関する報道を見聞きする度、企業様等の「動くBCP」の策定を支援する意義の重要性を再確認し、襟を正す思いです。

去る6月3日は「測量の日」ということで、毎年恒例の国交省国土地理院による報告会および記念行事としての「くらしと測量・地図」展が新宿において開催されました。

報告会では、3月11日の東日本大震災による地殻変動、災害状況などについて取り上げられており、別途参加レポートをとりまとめる所存ですが、今回は「くらしと測量・地図」展に行き、感じたことをお伝えしたいと思います。

「くらしと測量・地図」展は、新宿駅西口広場において開催され、数メートル四方の東京都界隈のフルカラーデジタル標高地形図や東京の今昔をたどるさまざまな地図・測量成果が展示されました。他にも今回は特別展示として、東日本大震災の災害状況について、報告会にて発表された地図の一部が展示されており、かなりの賑わいをみせていました。

そのような中で、一際来場者の関心を引いたのが「東京の液状化予測図」のパネル展示でした。

これは、3つの研究成果を合本した地図で、東京都内を

「液状化が発生しやすい地域」
「液状化の発生が少ない地域」
「液状化がほとんど発生しない地域」

の3区分に色分けしたものです。

これによると、東京都のいわゆる都心エリア以東は、液状化リスクが高い地域と低い地域が入り混じっていることがみてとれます。実は、ネット上でも公開されており、当社のBCP策定支援事業においても参考資料のひとつとして使用しているものなのですが、かなり詳細な地点を見てとれる地図(2万5千分1地形図)を基にしているため、来場者の方々も、ご自宅の地点を探しだしては、ほっとしたり、青くなったりされているようでした。

ここで、ある来場者の方が、同行者に呟いた言葉にはっとさせられました。

「うちはまあ大丈夫として、緊急避難袋も用意してあるけど、
避難所に向かう途中が危ないんじゃないの?これ?」

 

企業様のBCP策定支援の際にも、災害時の一時避難場所や広域避難場所が必ずしも立地として避難に適していないケースがままあります。これは、多くの避難場所が、周辺地域の一定人数(住民のみ想定)の収容を目的として、既存の公園や緑地などが指定されていることによります。また、小中学校などが避難場所として整備されている場合でも、周辺住民や企業勤めの皆さまの避難経路の安全性が担保されているわけでは無いことを実感させられることも少なくありません。

来場者の方の言葉が気になり、私自身の自宅は大丈夫だろうか・・・と、遅まきながら、地元の地震被災マップと液状化マップをチェックしてみました。それによると、元々、山の地形のエリアなので、基本的には液状化リスクが高い地点はごく一握りで、私の自宅および避難先となる地元の小学校と避難経路は問題無いとの結果でした。

しかし・・・避難所のすぐ裏手の道路の一部が「液状化危険度がきわめて高い」と判定されていました。平時にも何度も通ったことのある道路ですし、最寄りの救急病院へ行く際にも必ず通っている道です。その地点を避けるならば、かなり迂回しなければなりません。また、被災時の所在によっては、その道路が避難経路に入る可能性もありました。

自宅で大地震に被災した場合で、家族や自分自身が負傷した場合でも、徒歩でも行ける距離に救急病院があることに安心しておりましたが、かくして、実際は迂回が必要な可能性が少なくないことを頭に入れて我が家のBCPは修正を余儀なくさせられることとなりました。。。

地震への備えとして、建物・屋内の耐震対策を講じることは減災の観点からも重要ですし、防災グッズがよく売れているというのも、「自分の身は自分で守る」、という防災意識の向上の表れだと思います。

でも、折角「自分の身は自分で守る」ことに意識的であるなら、皆さまも「東京の液状化予測図」や同センターで情報公開されている各図面、そして行政で公開されている各種ハザードマップなどからご自宅近辺の防災上の特徴を把握してみてはいかがでしょうか。

その結果とご自宅の耐震強度などを照らして、大震災等の発生時に、まずは自宅内に留まって様子をみるのが良いのか、とりあえず自宅から外に出て安全な場所を目指すのか、といった動きを考えてみることは、読者のみなさまの「動くBCP」の大きな一歩になるのではないかと考えます。

「東京の液状化予測図」(東京都土木技術支援・人材育成センター)

※他県でも液状化予測図が公開されている場合があります。