コンサルタントコラム

14社のBCP策定を終えて

2011年09月14日

コンサルタント

小山 隆

こんにちは。小山です。

昨年の9月から、本プロジェクトに参加して、現在までに14社のBCP策定のお手伝いをさせていただきました。多くの企業様で気になられるのは「他社はどのような取り組みをしているのか」ということであると思います。

今回は私の経験を踏まえて、主な経営資源ごとに中小企業の事業継続対策の傾向を概観してみたいと思います。

・人  -----------------------------------------
なんといっても企業の付加価値の源泉は、そこに所属している人ですが、一般的にその人の付加価値が高くなればなるほど業務がその人に属人化する傾向があります。このため多くの企業が多能工化を推進していますが、これは事業継続にとってもプライオリティの高い対策となります。

これを補う手段としてマニュアル化も実施されていますが、作成やメンテナンスにそれなりの負荷がかかることや、業務によってはマニュアル化が困難なものもあり、実施できていないところが少なからずあります。

・拠点  -----------------------------------------
中小企業の場合、複数の拠点を設けているところはあまり多くありませんが、営業的な観点や事業継続的な観点から、自社で遠隔地に拠点を分散しているところもあります。これらの企業は分散している拠点がどのような機能を分担しているかにもよりますが、有事にも比較的容易に事業を立ち上げることが可能です。

これに対して、一ヵ所に機能を集中している企業は、遠隔地に協力会社を設ける等の対策をとることによってこれに対応する傾向にあります。

・装置  -----------------------------------------
製造を主たる事業とする企業は、付加価値を高めるために自社で高価な装置を保有し、これを最大限に活用する戦略をとっていますが、この傾向は特に部品製造企業に多く見受けられます。

このリスクを回避するためには拠点を分散することを検討すべきですが、装置が高価なこともあって、この対策は中小企業ではなかなか難しい選択になります。このため、前述したように遠隔地に協力会社を設ける等で対応する傾向にありますが、ノウハウの流出を心配して躊躇する企業もあります。

これに対して、製造・組立を主体とする企業は、設計を自社で実施し、製造や組み立てはかなりの部分を外注化、すなわち、ファブレス化する傾向にあります。

・IT  -----------------------------------------
ITは、あらゆる企業にとって、すでに必須の基盤となっている感があります。ただITが直接売り上げに結びついていない場合は、まだ多くの企業がこの要素の重要性に気付いていないように思われます。このため、データやサーバー等のバックアップ体制が十分でなかったり、システム担当要員がはっきりと決まっていなかったり、決まっていたとしても一人のみという企業が多く見受けられます。

このような場合、被災シナリオにおいて、データやサーバー等が当面使用できない、もしくはシステム担当要員が被災して当面作業できなくなる場面を設定してみて、初めてそのことに気付く企業が少なからずあります。

・通信  -----------------------------------------
通信は、初動対応や復旧対応において必要不可欠な要素になりますが、回線を占有する音声通信では利用がかなり制限される可能性があるため、当初は携帯メールやインターネットを使用して対応することを考えている企業が多いようです。

また、一部の企業では衛星電話を使用したり、遠隔地に拠点を持っているところでは、発災直後に情報発信・収集機能をそちらに切り替えることにしている企業もあります。

・電力  -----------------------------------------
大部分の企業では、電力が復旧するまでは、本格的な事業継続対応が開始できません。このため、目標復旧時間が比較的短い、すなわち電力が復旧するまで待てない企業は、当面の生産拠点を遠隔地にある支店もしくは協力企業に切り替える傾向にあります。

また一部の企業では、自家発電装置を用意して、必要最小限の経営資源を利用することを考えているところもあります。

・外注企業  -----------------------------------------
ほとんどの企業は、通常なんらかの形で外注企業を利用しています。企業によっては、リスクを分散させる目的で戦略的に外注企業を地理的にも分散させているところもありますが、多くの企業ではまだそこまでには至っていません。

ただ、外注企業の事業継続対応能力を把握する必要があると考えて、それを実行に移す企業は着実に増えてきていますし、逆に発注元から事業継続対応について、チェックを受けている企業も増えてきています。

今回、14社のBCP策定のお手伝いをさせていただいて印象に残ったことは、各社が自社の付加価値を高めるために、特徴ある経営戦略や営業戦略(例えば、上述した付加価値を高めるために高価な装置を導入したり、技術レベルを一定水準以上に保つために正社員のみで対応したり、顧客のニーズを随時取り入れるために、顧客の近くに拠点を設ける等)を描いて、これを精力的に実現していることです。

しかし、この戦略が、場合によっては災害等のリスクに対して脆弱性を高めてしまう結果にもなっています。このため、これを回避もしくは低減するためのBCPは、経営戦略や営業戦略を補完するうえでの、かなり強力なツールになりえるかと思います。BCPをフルに活用することにより、さらに企業の付加価値を高めていっていただければと思っております。