コンサルタントコラム

元BCP/BCM事務局のぼやき~ブロッケンの虹~

2012年02月01日

コンサルタント

本田 誠

はじめまして、本田誠と申します。
昨年の9月に電気部品メーカーを定年退職しまして、この仕事をはじめました。BCP策定支援コンサルタントは駆け出しですので、ご愛顧お願い申し上げます。

さて、私は、かつて非行少年でした。

あ、間違えました。非行少年ではありません。
飛行少年でした。

昔々のその昔、学生の頃のことですが、グライダー(模型ではありません)で空を飛んでいました。

私の乗ったグライダーは、凧揚げのように、鋼製のワイヤーをウィンチ(自動車のエンジンで回転させる大きな糸巻器のようなもの)で巻き上げて引っ張ることで、高度300m~400mの高さまで高度を得て、ワイヤーを外すと自由に滑空できます。飛行機で曳航する場合は600m程度の高度で曳航索を外します。

エンジンがありませんから、毎秒1mくらい高度を失いますので、飛行時間は通常5~10分程度で地上に舞い戻ってきます。あっという間です。ただし、気象条件によっては、上昇気流(下降気流も)が発生しますので、うまく上昇気流に乗れると、数千メートルの高度を獲得できることがあります。

そのときのお話を少々。

上空から地上が見渡せますが、高度によって地上の見え方が違います。数百メートルの高度から下をみますと、道路には自動車が動いているのが見えます。人は点にしか見えませんが、人間の営みが感じられる景色です。

千メートルになると、積雲の雲底が迫ってきて、横は雲、下は地図を見ているようです。それこそ鳥か仙人になった気分です。

二、三千メートルくらいで積雲のうえに出ます。グライダーは雲中飛行は禁止されていますので、風上側の雲の前面にある上昇気流で上昇します。このとき、面白い、不思議な状況がありました。一度しか経験していませんが、太陽の反対側の雲の前面に、自分の乗っているグライダーの影が虹のリングの中に映し出されていた光景をいまでも覚えています。登山者が同じ光景を経験することがあるようです。ブロッケン現象というらしいです。

なぜ、こんな話をするのか。ブロッケン現象は余談として、高度によって地上の見え方が違う点に託けて、ここからは、商売の話をします。

BCPが作れない、作ってはみたが役に立つのか自信がない。とお悩みのBCP・BCM事務局の方は多いと思います。私が、そうであったからです。どう考えればいいのかを述べてみたいと思います。ご参考になればと思います。

私の前職は、電気部品メーカーの総務部門で、防火・防災管理を経て、BCP策定・BCM推進事務局を担当しました。製造会社としては、比較的早く2005年からBCP策定に取り掛かりましたが、リーマンショックなどの影響でなかなか作業が進みませんでした。

それだけではありません。まず困ったのは、「BCPってなんだ?」ということです。地震・雷・火事・・・・が起こったときは、災害対策本部を立ち上げて、安否確認・被災状況確認・緊急対策・復旧対策を検討・実施することで、会社を継続することではないのか。「たしかに、復旧のための具体的な行動計画は手薄であったな。」と反省はしますが、従来の防火・防災とどう違うのか分かりませんでした。

ここで、飛行少年の話と絡むのですが、今思うのは、スコープが違うということです。防災担当としては、どこかで地震が起こっても、自社の拠点と離れていれば、関係ないことでした。拠点のある地域で起こった場合であったとしても、拠点の被害・拠点従業員の安否が最大の関心事でありました。ところが、営業は、お客さんは無事か?購買部門の担当者は、材料調達先・外注先は無事か?と被災状況確認を始めるわけで、自社にとっての事業影響は、調達先・自社・納入先まで考慮しなくてはなりません。状況確認すべき範囲が広いのです。

BIAでは、その事業が停止したら会社への影響はどうなのか?and/or、その業務が停止したら事業への影響はどうなのか?を検討するわけですが、防災的な観点でも、地震で被災したら会社にどういう影響があるのか?火事が起こったらどういう影響があるのかは考えて、対策してきました。が、自社へのインパクトは当然として、お客様、取引先、世間への影響はあまり考慮することは無かったし、事業・業務を列挙して影響度を比較、優先度付けすることはなかったと思います。

また、製造業では、事業継続戦略=復旧戦略であることが多いですが、場合によっては、代替生産や代替購買も有り得るかを検討すべきだと思います。サプライチェーンを考えると、もはや全世界的な視野and/or発想を必要とすることは、タイの洪水で痛感された方は多いと思います。

鳥の目からの眺め、飛行機の窓からの眺め、宇宙ステーションの窓からの眺めたときに、わが社の事業がどう見えるのかを想像してみてください。視野and/or発想を広く持つと見えてくることが多いと思います。