コンサルタントコラム

復興支援から学ぶ組織作りのポイント

2012年04月25日

シニアコンサルタント

久野 陽一郎

シニアコンサルタント 久野 陽一郎
こんにちは、本コラムを担当する久野です。

先日、東日本大震災の復興支援に 大きな力を発揮したボランティア団体
「ふんばろう東日本支援プロジェクト」の リーダー西條剛央さん著作
『人を助けるすんごい仕組み』を読みました。

このプロジェクトは 3000ヶ所以上の避難所・仮説住宅等に 15万5000品目に及ぶ物資を支援し、 他にも自立支援プロジェクトを多数実施し、 現在も継続的に活動しています。

書籍では、プロジェクト活動の紹介を通して、 実効力のある組織運営の心得を教えています。
どうやってこれほどまでに 大きなボランティア組織を運営しているのか、 私が気になった以下の3点についてご紹介します。

1.多くの人を巻き込む
2.ヒトを大切にする
3.目的意識を共有する

1.多くの人を巻き込む(SNSの活用)

ボランティアによる支援活動は どれだけ多くの人に関わってもらえるかが カギと言っても過言ではありません。
このプロジェクトはSNSを有効活用することで、 たくさんの人を低コストで管理することに成功しています。

ツイッターで支援内容をどんどん呟き、 ユーストリームで著名人対談を動画配信し支援の輪を広げ、 さらにフェースブックのグループ機能を使って 支援者を参加させるという仕組みで多くの人を巻き込みます。

一方で、参加者をネット上で管理し、 メッセージ機能やウォール機能により コミュニケーションの負荷を下げ、 支援状況もネット上で把握できるようにすることで、 伝達や管理のコストを圧縮することに成功しています。

企業の場合はこの仕組みから何を学べるでしょうか?

私が趣味で運営しているバスケットチームでも SNSを活用しています。
子供たちへのクリニックや試合を動画で配信し、 今後の集客に繋がる仕組みを導入しています。

テレビなどの既存の仕組みには敵いませんが、 経営資源が限られている組織にとっては、 効率的にPRをおこなう一つの手法となります。
特に視覚に訴えることができる製品やサービスを 提供している企業にとってはなおプラスになるはずです。

2.ヒトを大切にする(短期戦から長期戦への切り替え)

復興には長い時間がかかります。 その間、活動を継続するための仕組みがありました。

復興支援の戦いは、被災直後の物資供給から 仕事や教育などの自立支援に切り替わります。 そこでまずは、機能ごとに役割と責任を移譲します。

さらに、終わりが見えない復興支援に対して、 ボランティアスタッフのモチベーションを維持するために、 被災者だけでなく、ボランティアスタッフの メンタルケアまで取り組むのです。

モチベーション持続のためには 「ほめられること」 「励まされること」が重要です。
そのため自分たちの活動を振り返る プロモーションビデオを作成し、 イベントで映像を流し、 またふんばっていくための原動力としたそうです。

イベントを通してモチベーションを上げる 方法については、弊社も活用しています。

例えば、東京都BCP策定支援事業では 各期終了時に成果発表会を実施し、
各担当者が受け持ったプロジェクト内容を発表します。

自分の成果を共有することで 達成感を感じてもらうとともに 事業部の一体感を高めることで、 よりスムーズなマネジメントも可能となりました。

3.目的意識を共有する(課題解決へのアプローチ)

最後に、私が気になった点は、
なぜこの活動が、これほどまでに 具体的かつ現実的な支援ができたのか、 どのように問題や課題を解決していったのかということです。

早稲田大学大学院(MBA)で専任講師をし、 心理学と哲学を研究する著者は 「構造構成主義」という考え方を用い、
目の前の課題を突破していきました。

「構造構成主義」とは 簡単に言うと異なる信念を持ち 対立する考えをまとめるため、 統一の原理を共有することにより統一見解を導く、 という考え方です。

著者は、「ふんばろう」の活動において、
「目的」と「状況」という原理をキーに 様々な思惑を統一していきます。

例えば、支援物資の取り扱いについて。
全国から支援所に送られる支援物資を 被災者に届ける手段がなかったため、
支援所には物資があふれ、 それ以上の受け入れを拒否するという事態がありました。

この時の「目的」は被災者への支援です。
「状況」を調べてみると、確かに被災者は車を失い、 支援所まで物資を取りにくることはできないが、 一方で宅配便はある程度稼働し始めていました。

活動ではこれを利用して各地に物資を届け、 そこからは現地の方々に仕分け・配布を依頼することにより、 より多くの物資を被災者に届けることに成功しました。

「目的」を達成するために、 「状況」から最適解を導き出す。
色々な思惑がある人々を束ねて活動を継続するために、 シンプルに進めることを実現します。

私もBCPのご支援をさせて頂くときに、 まずは、お客様の「目的」を明確にすることに努めます。
お客様がなぜコンサルタントを使いたいのか、 人が足りないからなのか、 ノウハウを補充したいのか、 社内を説得するための圧力としたいのか。
そして、お客様にどのような課題があるのか等 「状況」を明確にします。

BCPを策定しているがそれが機能するのか分からない、訓練はやったが、
どう改善すればいいのか見えない、等。
この2つの情報を元に、 お客様に合わせて最適解をご提案するようにしています。

このように多くの人を巻き込む ヒトを大切にする、 目的意識を共有するというアプローチは、 あらゆる組織やプロジェクト運営に活用できると思います。 是非、活用されてみてはいかがでしょうか。