コンサルタントコラム

BCPには経営者の「愛」と「誠意」がある

2012年10月10日

コンサルタント

吉原 敏仁

コンサルタントの吉原と申します。
ニュートン・コンサルティングにて
BCP策定支援の業務に携わり、早5ヶ月になりました。

今夏、平成22年度、23年度に
東京都BCP策定支援事業に参加された
企業・団体の皆さんに対して、
BCP策定後の活動状況を自己評価頂く
アンケート形式の調査を行いました。

その実務責任者として作業に当たり、
80弱の企業・団体の方のご回答を
拝見させて頂きました。

2肢選択式の質問に加えて、
自由回答式の設問を3、4項目設けさせて頂きました。
そこには日夜、BCP運営に励んでおられる
中小企業の経営者や運営事務局ご担当者の皆さんの
生の声がたくさん詰まっていました。

色々な工夫や試行錯誤の一端が
垣間見られるご回答がある一方で、
自社内への浸透や定着にかなりご苦労されておられる
企業のお声もありました。

その中でもなかなか社内に
定着・浸透しない理由として
「業績が伸び悩む中で(売上・利益に直接貢献しない)
BCPの運用のために多くの時間や人材をさくことには
社内で抵抗がある」というご意見がありました。

確かにもっともなご意見で、
我々コンサルタントの立場から見ても、
長引く停滞感が漂う経済環境の下、
BCPの普及を進める上でのボトルネックとなる
ポイントを突いたご意見です。
しかし...です。

BCPの意味や位置付けは各企業の裁量によって
幅を持たせることが出来ると思います。

そもそもBCPとは想定したリスクに対して
あらかじめ対応策を検討しておき
いざという時には
事業の復旧、継続を果たすための計画です。

そしてそれを梃子に、
自社の社会的信頼性を高め、
ひいては平時の競争力強化を目指すための
仕組みとも言えます。

これは競争を勝ち抜く
経営戦略のための一つの道具、
『守り』の戦術と見ることもできます。

しかし一方で、
BCPには事業の継続と同時に
従業員の生命を守り、従業員の生活を
成り立たせる場としての職場を、
様々なリスクから守るための
全社をあげた取組みであるという側面もあります。

実際にBCP策定作業の中で、
工場内などにおける重量物の一時保管方法や、
危険物の取扱い方法の見直しや改善などを行い、
従業員がより安全な環境で
働けるようになるという成果が見られます。

先に引用しました回答例の通り、
その成果は
「業績に直接的に寄与しない」かも知れません。

ですが利潤を求めることが宿命の
企業経営の中で、直接的な実利追求から
少し距離を置いて、従業員の生命や
生活を守ることを考える取り組みというのは、
他にはなかなか見当たりません。

言い換えれば、
このような問題意識でBCPの策定から
社内への浸透、充実に取り組んでおられる
経営者というのは、まさしく従業員を大切にする
経営者であると思います。

その意図が正しく従業員に伝わり、
理解されるならば、少なくとも
『利益に繋がらないのに』という反発が
従業員から沸き起こってくることは
なくなるのではないか、と私は思います。

BCP策定支援の仕事に携わって半年、
私の一つの確信、それは
『BCPとは従業員に対する経営者の
「愛」と「誠意」のあらわれ』
であるということです。

これまで、企業内で
経営者と従業員との間のコミュニケーションが
十分ではなかった場合には、
仮に経営者の方が熱意をもってBCP策定や
その浸透・定着に奮闘されていても、
短時間ではその真意は
なかなか伝わらないかもしれません。

ただ、いつもとは異なる性質のメッセージを、
数十人、数百人の従業員の方々にあまねく伝え、
理解してもらうには、
やはり時間と粘り強い努力が必要でしょう。

従業員に対する社内教育や
演習・訓練などの活動を通じた
BCPの社内への普及活動も、
BCMの重要な要素の1つと、
考えていただければと思います。

BCPの社内への普及、浸透が
なかなかはかどらない、進まないと
お嘆きの経営者の皆様、
どうか焦らず、じっくりと皆さんの
「愛」と「誠意」をBCPに込めて、
従業員の方々と粘り強く
対話していただきたいと思います。

引き続きBCP策定のご支援をさせて頂く中で、
そこには経営者の方々の
「愛」と「誠意」があるのだということを
従業員の方々にお伝えしていきたいと思っております。