コンサルタントコラム

1本の線が変えた現場の意識

2012年11月07日

コンサルタント

佐藤 雅信

みなさんこんにちは、佐藤雅信です。

私は家電メーカーでサプライチェーンの仕組みづくりや
製造力強化を20年あまり担当してきました。

私が製造の現場で経験した中で最も感動した出来事、
ささいなきっかけで従業員の意識が大きく変わった
お話をさせて頂きたいと思います。
みなさんの日々の業務の中で多少でもお役に立てば幸いです。

多くの方が御存じの5S(整理、整頓、清潔、清掃、躾)は、
私が入社した時代にはKY(危険予知)と併せて
毎週のように勉強会や小集団活動で教えられ、実践している活動でした。

そのため5Sは
私にとっての社会人の基礎であり、
その後携わることとなったIE(インダストリー・エンジニアリング)の
改善取組みにおいて、特に整理と整頓は製造力強化、
現場の効率化の重要な「切り口」となりました。

そもそも5Sとは、
品質の向上や作業場の安全を高めるために
始まった活動であり、職場にルールを定め、
効率的で安全な職場環境をつくるということにつながっています。

5つの中でもとりわけ

・整理とは「目的」に対して必要なモノと必要でない
 モノを明確にし、必要でないモノを捨てること

・整頓とは、必要なモノが直ぐに使える状態にすること

という2つの教えは、自分自身の中に深く刻まれ、
業務においても常に実践してきました。
(他の3つについては、あえて説明の必要はないと思います)

ある職場に赴任した時のことです。

私の任務はその職場に新しいシステムを導入・定着させ、
業務の効率化を図り収益性を高めることでした。

しかしその職場は、
売上げ・利益とも悪く毎日のようにミスや事故ばかり、
私の最初の仕事は始末書と事故報告書の作成でした。

なんとか業務を安定させ、従業員にルールを守らせたい。
作業効率を上げ、あらゆる品質を高めたい、
でも目の前は問題の山。

そこで最初に取組んだのは、
輻輳していた流れを一筆書き(動線を一本)にし、
作業する場所とモノを置く場所、
通路と非常時に逃げる場所を誰でもわかるように
するためのレイアウト変更でした。

まず白いペンキと刷毛を使い、
従業員全員で1日かけて床面に線を引きました。

そしてその線を基準に、出来上がった製品を
どうやって整理するか(出荷順、地域毎 等)、
どこをどの作業スペースにすると効率がよいか等、
自分達の手で場内を変えていきました。

その結果、
作業中のお互いの動きが見えるようになりました。

各作業のタクトタイムが整い、
リードタイムも短縮され、在庫削減の効果も生まれました。

何といっても現場での商品と従業員
それぞれの事故が激減したのはいうまでもありません。

また不思議なもので、
自分たちが引いた線を踏むものはいません。

見える化のために引いた1本の白線は、
次の日から職場のルールとなり、
朝礼は自分たちで引いた線の前に整列し、
場内では白線の内側を歩くようになりました。

さらにペンキがはがれると補修する者まで現れ、
1本の白線によって、
残りの3つのS(清潔、清掃、躾)が
自然発生的に行われるようになっていました。

こうして1本の白線をきっかけに
職場の改善と同時に、短期間にみんなの意識が
がらっと変わり一気に5Sが浸透しました。

そしてこの成果を受けて本来の目的であった
新しい情報システムや機械を導入し、
新しい仕組みにあうルールや業務の流れを
決めて実行していくことができました。

新しい仕組みは社内外からも高く評価され、
そのことが従業員の意識をさらに高めることとなりました。

この一連の作業に特別なことは何もありませんでしたが、
従業員全員がひとつの目的のもと、
自分達で作業を行い、
その結果が白線という見える形になりました。

その同じ意識を共有し、
自主的にそれを継続していこうとする様子を
目の当たりにし、とても感動したことを覚えています。

状況を改善したいがいい方法がなかなか見つからない時、
5Sのような広く普及している取組みを活用しつつ、
全員で手を動かしたり、目に見える成果を作る等、
ちょっとした工夫をすることで予想を
上回るような効果が表れるきっかけとなるかもしれません。